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59話 小国を作っちゃったっぽい

感想で言われましたが、『っぽい』を変える気はありません。

どれだけ変な言葉になろうとも!

「こんなもんか」


 強斎が魔術を発動してから数時間後……。


 底なしの大穴は小国になっていた。


「おい、貴様。あれはなんだ」


 勿論、キャルビスからのツッコミが入ってくる。

 ついでに、キャルビスはこの数時間席を外していたのでどうやってできたのかは知らない。


「あれって……見ればわかるだろ? 人がいない街だよ」

「そうだな。じゃあ質問を変えよう……」


 キャルビスは額を抑えて小さなため息をつく。


「どうやって街……いや。小国を作った?」


「土魔術でちょちょいと」


「建物は?」


「土魔術でちょちょいと」


「周りにある壁は?」


「土魔術でちょちょ――」

「ちょちょいで済むとでも!?」


 キャルビスは強斎の作った小国を指差す。


 直径数十キロメートルの大穴は見事な円形の小国になっていた。

 建物も簡易のものばかりだが、しっかりと『建物』と言えるほど。

 中央には城が建っており、そこだけは凝っている。

 そして、この小国を囲むように高さ10メートル程の綺麗に整えられた岩・・・・・・・・・の壁が囲んでいたのだ。


「あれって岩だよな!? 土じゃねぇよな!?」


 キャルビスは強斎の肩を揺すって力強く問う。

 強斎はされるがままだ。


「……岩だな」


 ようやく白状したところで揺するのをやめる。


「これだけの壁を全てただの土で作ったのなら神級魔術で済むだろう……。だが、岩なら話が別だ。何をやった」


 キャルビスの目は真剣だった。


「適当に地中から出てきた岩を切り取って……」

「切り取ってこの小国を囲む高さ10メートル程の壁を作ったとでも? この短時間で?」


「……ああそうだ」


 実際、強斎は嘘はついていない。


 ただ、土魔術だけではなく想像魔術まで使っているのだから、話を濁しているだけである。


 強斎は地中にある適当な岩石を引っ張り出して壁にしただけなのだ。

 だが、それでは壁が綺麗ではなかったので、想像魔術で余分な凹凸を切り落とす。建物もこれと同じだ。


(10メートルも引き抜いておいて、地盤沈下しないってのも不思議だがな)


 強斎はこういうのについては得意ではないので、あまり考えなかった。


「ふざけたことを言ってくれる……この規模の岩を操るなど、既に基本属性の域を――――」

「なぁ、キャルビス」

「な、なんだ?」


 不意に名前を呼ばれたキャルビスは少しだけ息詰まってしまう。


「オリジナル魔術って知ってるよな?」

「? 知ってるもなにも、お前に無効化インヴァリデイションされた魔術もオリジナル魔術だが……っ!」


 ようやくここでキャルビスは強斎の言いたいことを理解する。


「ああ、そうだ。これは俺のオリジナル魔術なんだ」

「馬鹿なっ! オリジナル魔術で神級超えクラスを使えるとでも言うのか!?」

「少し気になる点もあるが、その通りだ」


 強斎がそう断言すると、キャルビスは小国を眺める。


「今ならお前が魔神様と言われても信用できる気がするな」


 そう吐き捨てるように言う。


「安心しろ。俺は魔神なんかじゃない」


「『人間だ』……と?」

「ああ」


「いい加減そういう冗談はやめてくれないか?」


 キャルビスは小さく鼻を鳴らして言葉を続ける。


「こんなでたらめなオリジナル魔術を使う生物がいるってだけで驚きなのによ……」


「まさか、生物であることすら疑っているのか?」


「流石にそれはないが……あ、いや。うーん……」

「ごめんそれ以上考えないで」


………

……


「ゼロ。ちょっといい?」

「ん……? ミーシャ?」


 ゼロは半分寝ていた意識を覚醒させ、椅子に座りながら体を伸ばす。


「余りにも暇過ぎて寝そうだったわ」

「でしょうね」

「で? どうしたの?」

「属性について教えてくれませんか?」


 そんな事を言うミーシャに、ゼロは首を傾げて不思議そうに問う。


「属性って……虚無属性以外なら、私が教えるまでもないぐらい知ってるでしょ?」

「私が知りたいのは『ユニーク属性』です」


 ミーシャのその一言でゼロは大体理解してしまった。


 ゼロはその事を心配していたが、ミーシャはそんな素振りを見せなかった。

 だが、やはり気にしていたのだ。


 自分だけが『ユニーク属性』を所持していないことに。


「やっぱりか……」

「何がやっぱりなの?」


「そうね、あなた資格がどうこう言っていたもんね」

「……」


 ゼロはミーシャの無言を肯定と判断した。


「キョウサイ様も気づいているのでしょうか……?」

「気づいているでしょうね。主人のステータス譲渡から見ても、それは殆ど明らかよ」


 ミーシャは自分の破格のステータスを確認する。


「確かに……。ステータス関与系の『ユニーク属性』を持っているレイアと比べても殆ど大差がないですね……」

「でも、やっぱり気になるんでしょ?」


「……はい。贅沢だとは思っているのだけど……」

「本当に贅沢よ……。『ユニーク属性』は大半が生まれ持った才能。後は努力で手に入れるか奇跡的に手に入れるかよ」


 ミーシャは肩を落として落ち込んでいた。拒否されたと勘違いしたのだろう。


 ゼロは立ち上がり、そんなミーシャの肩に手を置く。


「誰もダメなんて言ってないでしょ」

「え? では……」


 ゼロが頷くと、ミーシャはパァっと明るくなった。


(相当キていたのね……主人のちょっとした気遣いに気付かない程に……)


 ゼロはミーシャに少しだけ待つように言って、自分は部屋にある簡易転移門を使って図書館に転移する。


(奴隷として買われたのに奴隷として扱われず、何もしていないのに普通以上の裕福な生活をしている。戦闘においても主人の力を使っているようなものだし、家事だって主人の方がスキルは高い。魔界に来てから仕事を与えると言っていたけど、これも主人がやっていて自分は本を読むか勉強をするだけ。普通だったら奴隷にとって大当たりの人なんだろうけど、一部の奴隷は違うでしょうね……。裕福過ぎて自分の存在を否定されている様な感覚になる。『何故自分を買ったのか?』『自分じゃなくても良かったんじゃないか?』『居ても居なくても変わらないんじゃないか?』そんな不安が出てくる奴隷……。それがミーシャだったのね)


 ゼロは目的の本をいくつか手に持ち、小さく頷いて部屋に戻る。


(それに加えて、私たちをいつか解放するという主人の優しすぎる気遣い……。あれじゃあ、愛想尽かれて捨てられると思ってもしょうがないわね。私もそう思っちゃったし……。主人は暫く下にい続けてもらうって言ったけど、やっぱり直ぐにその不安が消える訳じゃない。そして、ミーシャは自分だけが『ユニーク属性』を持っていない事で劣等感を感じるようになり、好きな人に自分が捨てられてしまうのではないかと一層強く感じ始めている。捨てられることなんて絶対にないとわかっていても……)


 部屋に戻ったゼロは、持ってきた本を椅子の上に置いてもう一度確認する。


(更には主人の『気になる女性』の存在。これは私たちが勝手に作り出した存在だけど、恐らくミーシャもこの存在が十中八九いると思っているでしょうね。よくこれだけのことが起きて、気が狂わなかったものだわ……)


「さて、ミーシャ。ちょっとレイアを起こしてちょうだい」

「? わかりました」


 ミーシャがレイアを起こしたところで、強斎が部屋に戻ってきた。


「ただいまー」

「おかえり主人。早速だけど頼み事いいかしら?」

「ん? どうした?」

「ちょっと竜王を二匹貸して」


 突然、とんでもないものを強斎に要求した。


「別にいいけど、ここじゃ入りきらんぞ?」


 そのとんでもないものをあっさり了承する強斎も強斎である。


「あの窓から飛び移るから、そこら辺に召喚して」

「ん、了解」


 強斎はここから300メートル程の上空に竜王を二匹滞空させた。


「じゃあ、ちょっと草原に行ってくるわね」

「おう」


 強斎の許可も取れたところで、ゼロは窓を開ける。


「ミーシャ、レイア。私に捕まって」

「「??」」


 レイアはともかく、ミーシャも何をするのかわかっていないようだ。


「ああー……やっぱり私が捕まえるわ」


 そう言って、ゼロはミーシャとレイアを捕まえて両脇に抱えた。


「「!?」」

「ルナはそこに置いてある本を主人に読んでもらってね」

「あ、はい」

「じゃ、行って来ます」


 ゼロは窓から飛び降りるように出て、そのまま上昇していった。


「……何があったんだ?」

「私にもよくわかりません」


 そう言って、ルナはゼロの持ってきた本を一冊取る。


「主様、これなんだと思いますか?」


 ルナに渡された本を強斎は軽く読む。精霊界語でルナでも読めるはずだったが、まだ少し難しかったらしい。


「なっ!?」


 最初は軽く読むつもりだったが、強斎はそう小さく声を出してからは真剣に読んでいた。


「主様?」


 ルナがそう声をかけるが、強斎からの反応はない。


 もう一度声をかけようとしたところで、強斎から少し気味悪い薄笑いが聞こえてきた。


「主様……?」

「いや、すまなかったな……ふふっ」


 強斎は本を閉じて、残りの本も確認する。


「やっぱりだ……」

「むー……。主様、じらさないで教えてください」


 ルナは強斎に抱きつく。

 身長差で強斎の腹部に顔をうずめる形になっているが……。


「そうだな、これはルナにも関係あることだしちゃんと教えてやらないとな」


 強斎は自分の腹部に顔をうずめているルナの頭を優しく撫でる。

 ルナは気持ちよさそうに小さく笑い、更に強く強斎に抱きついた。


 ルナも二人きりになると積極性が増すタイプなのだ。


「で、どんな本だったのですか? さっき見た感じですと、魔術系だった気がしますが……」

「確かに魔術系だ。しかも、たった一つの魔術のな」


 強斎は置かれている数冊に目を通す。

 この数冊全てが同じ魔術に関しての本なのだ。


「だが、どれも失敗に終わっている。理論はあっているが、何故か成功しない……何故だと思う?」

「その魔術を使える適正者がいなかった……ですか?」


「その通りだ。基本属性は全て試されている。そして、基本属性以外で俺とルナの共通属性と言えば……」

「召喚魔術ですか……」

「正解だ」


「ですが、主様は何故その魔術が召喚魔術用の魔術とわかったのです?」

「俺も召喚魔術でとある魔術を試していたが、成功と言える成功はしなかった。そして……」

「この本に載っている魔術が主様が試していた魔術……ですか?」


 強斎はしっかりと頷き、ルナの頭をポンポンと軽く叩いた。


 それを合図にルナは強斎から離れる。


「あいつらが帰ってくるまでにこの魔術を完成させるぞ」

「ずっと焦らされっぱなしでしたけど、結構どんな魔術なんです?」

「あ、それは済まなかったな……」


 強斎はもう一度ルナを撫でて許しをもらった。


「今から取得する魔術……それは――――――」


 強斎はアイテムボックスから剣を取り出した。



「――――――武器の遠隔操作だ」

さて、ゼロは一体何をする気なんでしょうか?

強斎の言う武器の遠隔操作とは一体……


そして、強斎がこうしている間にも……


次回もお楽しみに!


土の概念をアバウトにしました

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです。 [気になる点] 更新を再開して欲しいです。 [一言] 武器の遠隔操作とかができるようになったら、千本の剣をあやって、サウザンドソードとかやって欲しいです。
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