閑話1 鈴と強斎 後編っぽい
さぁ、後半です。
めっちゃ眠いです
――どれぐらい泣いたのか。
そう考えるのも鬱陶しくなるほど鈴は弱っていた。
あの後、救急車で強斎は運び出された。
鈴も一緒に付いて行ったが、強斎を見ていると心が痛くなり、命に別状は無いと知らされると。鈴は逃げるように病院から出た。
(私のせいなのに……私のせいなのに……!看病の一つもできないなんて!)
何度も戻ろうとするが、結局鈴は戻ることができなかった。
………
……
…
次の日、起きたのは昼頃だった。
学校が始まっていたら完全に遅刻である。
鈴は昨日、殆ど寝付けなかった。
何故、あの時、病院から逃げるように出て行ってしまったのか。
鈴は一晩考えて、答えにたどり着いた。
――――恐怖。
それが、鈴の出した答えだった。
医療費を請求される位ならまだいい。
鈴が最も恐れたこと、それは――。
(強斎に……嫌われたくない……)
それだけだった。
それだけだったのだが……。
(会いに行きたいのに……行けない……)
そう、強斎に嫌われるかもという不安だけが、鈴を止めていた。
そして、鈴は気がついた。
(私……ここまで強斎に依存していたんだ……)
こうして、ドンドンと時間は過ぎていった。
………
……
…
鈴が意を決したのは事故から5日後だった。
「よし」
こうして、鈴は病院に向かった。
病院の廊下で、鈴は思わぬ人物とすれ違った。
「あ、鈴!」
「澪……?」
そこには、ポニーテールを下ろした澪がいた。
「鈴、どうしたの?」
「あ、いや……ちょっとびっくりして……」
「?」
「そんなことより、澪こそどうしてここに?」
すると、澪は「はぁ……」と息を出して、愚痴るように鈴に言った。
「私ね、日曜日に用事あったじゃない?」
「うん、そんなこと言ってたね」
「その日にね、待ち合わせした友達が運ばれたって言うのよ!もう、ビックリしちゃって……」
「う……ん?」
鈴は少し不思議に思ったが、澪が続きを話し出したので、思考を止める。
「それでね、急いで病院に来たんだけど……」
「来たんだけど?」
「階段で転んだだけだって言ったのよ!」
「えー……それで運ばれたの?」
「そうらしいのよね……、で、その友達が病室から逃げ出したから、今探してるのよ」
「病室から逃げ出したの!?」
「そうなのよ……。もう、おとなしくしてほしいわ……」
ため息をついて、だるそうな仕草をするが、どことなく嬉しいきもちを隠せていない澪。
「どうしたの?そんなに嬉しそうにして?」
「あ、わかっちゃった?」
「えへへ」と照れ始める澪。
鈴はその仕草に少し引いてしまった。
「あ、うん。それで、どうしたの?」
「うん、実はねこういう書き置きがあったの!」
バンっ!と澪は1枚の紙切れを鈴に見せた。
『プリン食べたい』
鈴は目眩がした。
「ちょ、ちょっと!澪!」
「ん?」
「あんた、まさか友達を探すついでに、プリン買ってくるんじゃないでしょうね?」
「よくわかったね~うん、友達は滅多に頼み事しないから、プリン買ってきて驚かせようと思って!」
赤面する澪に、鈴は気が付かなかった
呆れていたのである。
「あー……、まぁ、頑張って」
「うん!頑張る!」
こうして、鈴は澪と別れた。
……
…
鈴は強斎の病室の前で立ち止まっていた。
(もう……決めたんだ……!嫌われていても、謝るって!……少し怖いけど)
そして、鈴は深呼吸をして、強斎の部屋にノックをしようとした。
その時、背後から声がかかってやめてしまったが。
「あれ、鈴じゃねぇか。どうしたんだ?」
勿論、こんな状況で不意をつかれたら、戸惑うのが当たり前だろう。
「あ、あ、きょ、強斎?」
「誰に見えるんだ?」
「そ、そうだよねー」
「?」
「……」
鈴は無言になってしまった。
そして、鈴は落ち着きを取り戻した。
「あのさ」
「どうした?」
「怒ってない?」
「怒る?」
「じゃ、じゃあ!……私のこと……嫌いになっていない?」
「ちょっと待て、意味がわからん」
「だ、だって!私のせいで歩道橋から落ちたんだよ!?」
「お前のせい?何を言っているんだ?」
「え?」
「俺はあの時、ただ無性にタックルをしたくなっただけだ」
「……」
「……」
(強斎がおかしくなった!!どうしよう!やっぱり頭を打って……!)
「あー!!冗談だ!冗談!だから、そんな可哀想なものを見るような目で、泣きそうにならないでくれ!」
「……本当?」
「ああ、本当だ。どこもおかしくなってない。それに、怒っても嫌ってもいない。てか、どうしてそう思った?」
「だって、私のせいで……」
「俺なら、あの程度構わない」
「で、でも……」
「はぁー……まぁ、いいや。だったら一つ、お願いがある」
「わ、私に出来ることなら!」
「じゃあ、ついて来い」
………
……
…
鈴が連れてこられたのは、とある病室だった。
「おい、大地。俺だ、入るぞ」
「強斎か」
「ああ、どうぞ」
そう言って、強斎はとある病室に入っていった。
鈴はそれについて行く。
「お、おじゃまします……」
(男の人だ……)
鈴は無意識のうちに、強斎の服を掴んだ。
大地と呼ばれた男は少し驚いた顔で、強斎に話しかける。
「強斎の彼女か?」
その時、鈴は強斎の言葉に少し期待したが……。
「いや、ただの友達だ」
少し、心が痛んだだけだった。
「そうか、で、何で連れてきたんだ?」
「お前の新しい話し相手になるんだ、当然だろ」
「「え?」」
「ってことで、鈴。後は任せた」
「ちょ、ちょっと!どういうこと!?」
「借りを返したいんだろ?だったら、頼むわ。後、あいつは信用していいから」
「え?」
「それじゃあ、大地。……またな」
「強斎……。俺も説明が欲しいのだが」
「俺はお前に借りを作った。だけど、返すことができそうにないから、こいつにバトンタッチだ」
「え?え?」
「んじゃ、またな」
そう言って、強斎は出て行ってしまった。
「……」
「……」
「えっと……君、名前は?」
「え?あ……羽田鈴……です」
「そうか、俺の名前は鷹見大地。強斎とはちょっとした仲だ」
「え、えっと……強斎は……どんな人ですか?」
「敬語はやめないか?ムズ痒い」
「あ、うん。だったら……強斎はどんな人なの?好みの女のタイプは?好きな食べ物は――」
「あー……一気に喋ったらわかんないんだが……」
「あ、ごめん……」
「そうだな、強斎は――」
これが、大地と鈴の出会いであった。
鈴は強斎の事を知ろうと大地に近づくのだが、次第に大地に興味を持つようになる。
第一印象が強斎と一緒であった。
そして、次の日――。
強斎は、病院にいなかった。
「鈴は、強斎がいなくなった理由を知ってるか?」
「知らない……」
「そっか」
「知ってるの?」
「ああ、だけど、教えていいのだろうか?」
「教えて」
グイっと大地に詰め寄る。
「わ、わかった。教えるから、少し離れてくれ」
「あ、ごめん……」
「はぁ……実はあいつ――」
その言葉を聞いた途端、鈴は力が入らなくなってしまった。
実はあいつ――――手術するんだよ。
鈴の目の焦点は合わなくなっていた。
強斎が手術する理由など、1つしか思いつかなかったから。
その理由が、自分にあるから。
鈴は何かに押しつぶされそうだった。
(あの時……強斎が異常が無いって言ったのは……嘘だった……の?)
考えれば、考えるほど、鈴は何かに潰される。
(強斎の性格だったら、そんな重要な事も平気で嘘つきそうだしね)
目に涙が溜まる。
強斎に合わせる顔が無い。
そう思い、一筋の涙を流した時。
ぽんっ。
「え?」
頭の上に、大地の手が置かれた。
「心配するな」
その一言だけ言って、微笑んだ。
「鈴が何したかわからないが、あいつはケロッと戻ってくるさ。そういう奴だろ?」
「でも……」
「大丈夫だ、と言うか心配するだけ無駄だぞ?」
「え?」
「じきにわかる。だから、強斎が戻ってくるまでの間――」
大地はしっかりと鈴の目を見てこう言った。
「俺が、お前を守る」
「……大地」
この出来事がきっかけで、鈴は大地と普通に話すようになる。
それからしばらくして、鈴と大地はとある事件に巻き込まれる。
それがきっかけで、鈴は大地に恋をした。
強斎と同じぐらいの想いで。
………
……
…
夏休みが終わり、鈴は学校に行く準備をする。
(結局、決められなかった……)
「はぁ……」とため息をつきながら、自分の髪を結び始める。
(結局、強斎のいる病院もわからなかったし、心の整理も出来なかった)
学校へ行く支度をしてから、鈴は家を出る。
(私、強斎も大地も同じぐらい好き……。でも、二人は私のことどう思ってるんだろう?)
途中で澪と出会ったので、一緒に登校する。
――そして。
前方には強斎がいた。
(強斎……。私はどんな顔して話しかければ……)
その時、鈴は大地の言葉を思い出す。
(うん、そうだよね。考えるより、まず声をかけなきゃ!)
そして、鈴は声を出す。
「きょ――」
「強斎!!」
しかし、隣にいた澪が走り出した。
「え?」
鈴はよくわかっていなかった。
そして、そのまま時間は流れ……。
「強斎……!強斎!!」
澪が強斎の背中に抱きつく。
「え?ちょ!?な、なんだ!?」
「強斎……!心配したんだよ……!急に違う病院に行っちゃったりするんだから!」
「あ?澪か?とりあえず、離れろ。見られてるからな」
「え?」
そう言って、周りを確認し、サッと離れる澪。
鈴は既にその近くにいて、澪の顔を見て思ってしまった。
澪の顔は恥ずかしがっていたが、どこか満足し、幸せそうな顔をしていた。
周りを気にしてるものの、チラチラと強斎を見てはにやけている。
その時、鈴に衝撃が走った。
(そう……か……そうなのね……)
澪は強斎に恋をしている。
自分と同じ……いや、それ以上に。
そして、初めて澪と話した時の言葉。
(強斎が……澪の守ってくれる人なんだね)
すると、鈴の心は少し痛んだがどこかスッキリした。
(これじゃあ、大地を選ぶしかなくなったじゃない……)
そんなことを思いながら、鈴は駆け出す。
「とうっ!」
「ぬわぁ!?」
鈴は強斎にドロップキックをかました。
「な、なにするんだ!?」
「それはこっちのセリフよ!どれだけ心配かけさせたの!?」
「ちょ、ちょっと。鈴……」
「澪は少し黙ってて!強斎!」
「ど、どうした?てか、お前本当に鈴か?」
「澪に謝りなさい!後、私は正真正銘、羽田鈴よ」
「そうか……?てか、どこに謝る要素が――」
「いいから!心配かけたんでしょうが!」
(私のせいなんだけどね!)
「心配って……」
すると、澪は少し涙目になった。
「ほんと……心配したんだから……!」
「ちょ、何故に泣き出す!?」
一段落したところで、鈴は一言入れて、教室に向かう。
その時、鈴の通った道に数滴染みが出来ていたことには、誰も気が付かなかった。
ちょっと無理矢理終わらせ過ぎちゃいましたかね?
ついでに言うと、強斎が手術した理由は鈴と全く関係ありません。
今回は書く時間は結構ありました。
ですが、ついついゲームをやってしまって…
東方紅魔郷EXを上半分隠してプレイするっていう…
次からは本編に戻ります。お待たせしました。
自分はこれを書いている途中に思い出したんですよ…
自分が小説を書き始めた理由を!
まぁ、思い出したからといって、変わんないんですけどね