101話 『神気契約』っぽい
気がつけば11月じゃないですかやだー!
本当に申し訳ございません!
言い訳を述べますと、リアルが忙しかったんです!本当ですって!あ、やめっ、石投げないで……
「あの……イザナミ様」
「なんじゃ?」
「キョウサイさんは……何をしようとしているんですか?」
イザナミとの食事中、ヴェレスは途端にそんなことを聞き出した。
最初は「神様とご一緒にお食事など……!」と言っていたが、所詮十五歳。時が経てば慣れるものである。
この感じになるまで長い時間がかかったと思いながら、イザナミは小さく笑った。
食事は相変わらず洋風。
器用にナイフまで使っている。
「あやつの考えていることなど、妾にもわからんよ」
「わからないのに、協力をしているのですか?」
「わからないのは考えていることであって、目的は理解しているつもりじゃ。それに妾は協力と同時に阻止も望んでおる」
イザナミは一旦食事を止めて、ヴェレスの瞳を捉える。
「あやつが感覚的に『ラグナロク』を起こそうとしているのは前話したじゃろ?」
「ええ、キョウサイさんの遺伝子に関係あると」
イザナミはその行動を止めて欲しいとヴェレス達に頼んでいたのだが……。
「では、何故、妾がその『ラグナロク』を阻止してほしいのか……覚えておるか?」
「えっと、キョウサイさんには何かが足りないから……でしたっけ?」
「そうじゃ。そして、強斎が『人間』であるから……じゃな」
そこでヴェレスは疑問に思う。
「えっと、イザナミ様」
「む?」
「キョウサイさんはどの神様よりも強いんですよね?」
「そうじゃな」
「じゃあ、なんで……?」
イザナミはその質問に苦笑いで返した。
「『知っているから』……と言っても信じてもらえないじゃろうな……」
「??」
何を言っているのかヴェレスには理解できなかった。
だが、これ以上踏み込んでしまったら大変なことになる……そんな気がしていた。
「ヴェレスよ……お主は、どうしても聞きたいか?」
「……」
大変なことになる……それは理解している。
だが……。
「聞きたい。と言ったら教えてくれますか?」
言ってしまった。
無意識に、考えなしに、言ってしまった。
だが、その言葉を撤回する気なんてさらさらなかった。
イザナミはそんなヴェレスに小さく笑いかける。
「ああ、妾は気分がいいからな。じゃが、条件を付けさせてもらう」
「条件……ですか?」
神の下す条件という言葉に、少しだけ力んでしまう。
「簡単な条件じゃよ。『他言、もしくはここでの話を意図させるなにかをしない』じゃな」
「えっと……それだけ……ですか?」
「それだけじゃ。だが、それだけのことに『神気契約』をさせてもらう」
「『神気契約』……?」
イザナミは頷くと同時に、手のひらの上に一枚の洋紙を具現させる。
「『神気契約』はこの世界における契約の中でも最上位に値する契約じゃ。本来なら神同士の契約に使われるが……。人間に使ったのは恐らく初めてじゃろう」
「……え? 最上位……?」
「うぬ。喋ろうとしたらHPを1000万削られた後に契約者の前に強制転移するようになっておるが……」
「私の場合、即死ですね……」
「そうじゃな」
その条件を伝えた上で、イザナミは洋紙をヴェレスに手渡した。
「その紙に自らの血を垂らすだけで契約は成立じゃが――――」
イザナミが言い切る前に、ヴェレスは置いてあったナイフで自分の手の甲を切りつけた。
「っ……。これで、いいんですよね?」
綺麗な手から滴る血が洋紙に付着したのを確認したヴェレスは、イザナミの反応を伺った。
「……人の話は最後まで聞けと教えられなかったのか?」
「生憎ですが、イザナミ様は人ではなく神様なので」
深い溜息を吐きながら、イザナミは約束通り秘密を語りだす。
――――――そして、ヴェレスは後悔した。
………
……
…
「ドレットのお嬢ちゃん……三日も姿を現さないが……どうしたんだ?」
「多分、ババアの……ところ……」
ベルクは自分の頭の上にいるツクヨミに少しだけ疑問を持つ。
「そう言えば、なんでお前はイザナミ様の事を『ババア』なんて言うんだ? 実の母なんだろ?」
そう口にした瞬間、ベルクは頭を蹴られてしまった。
「私は、あんなにも弱い神を母と思いたくないだけ。昔は私より全然強かったのに」
「お前……普通に喋れるんだな?」
「私はいつも普通。逆にどこがおかしかったのか聞きたいぐらい」
イザナミの話をするツクヨミは、いつもよりちょっとだけ大人びいていた。
「お前が強くなったんじゃなくて、イザナミ様が弱くなったってことか?」
「……ねぇ、一応私も神なんだけど……。ババアには様付けで私は『お前』呼ばわり?」
「いいから俺の質問に答えろ」
「はぁ……。多分、どっちもあると思う。でも、ジジイのことはあまり知らない。ババアの兄なのか夫なのか……あんまり興味ないけど」
ツクヨミはそうボヤきながら、ベルクに回し蹴りを入れた。
「っ!!」
それを咄嗟に腕でガードするベルク。
しかし、その腕は変な音と共に折れてしまった。
「へぇ、さっきのを骨折程度で済ますようにはなったんだ」
「いっつ……。こんなんだからお前に様付けなんてしたくねぇんだよ」
ベルクは突然骨を折られたにも関わらず、慣れた感じでツクヨミとの会話を続ける。
「お前はなんでそこまで強いんだ?」
「そんなの知らないよ」
この二言だけでベルクの身に大きな変化があった。
折れたはずの腕が、綺麗に治っているのだ。
ベルクはそれが当たり前だと言わんばかりか、驚く素振りも見せない。
「ババアとジジイは私が強くなりすぎるのを恐れて私を閉じ込めた……って言ってたけど。本当は違うと思う。多分、私に隠して何かをしていたか……それとも、私に見せたくない何かが――――」
「ヨミ。それ以上考えてはならん」
そこで、ちょうどその話をしていた人物が顔を出す。
「ババア……」
「久しぶりじゃの。こっちでは三日振りぐらいか?」
パット見ゼロとそっくりな見た目だが、よく見ると微妙に違う容姿。そして独特な喋り方。
――――イザナミだ。
そして、もう一人――――。
「ベルクさんも、お久しぶりです」
「お、ドレットのお嬢ちゃん。久しいな」
ドレット王国の次女。ヴェレス・ドレット。
見た目こそ変わっていないが、雰囲気がどこか大人っぽくなっている。
「あ、ベルクさん。私を見て『大人っぽくなってる』とか思いましたか?」
「お、よくわかったな」
「実は、私は大人になることができるのです」
「……ん? どういうことだ?」
「つまりはですね……」
ヴェレスはその場で一回転する。
それだけ……ただそれだけだったのだが……。
「こういうことなんです!」
「お、おお……」
ヴェレスの容姿が変わっていたのだ。
身長が少しだけ伸びていて、顔立ちも可愛いから綺麗に。
腰周りは引き締まっていているが、お尻や太ももはムチムチになている。
そのくせ、手足はスラリと伸びきっている。
胸も先ほどの姿より幾らか大きくなっているが、その大きさよりも形に目が言ってしまうほど美しかった。
そんな繊細で華奢な美容を際立てるような美しい金髪。
しかし――――。
「ドレットのお嬢ちゃん……大人っぽくなったのは認めるからよ……」
「はい?」
「下着だけっていうのは……やめないか? 流石に目のやり場に困る」
「え……………………?」
その後、ベルクが無慈悲に叩かれたのは言うまでもない。
「ううぅ。ユウシさん、ごめんなさい……」
「俺には謝らないの!?」
元の姿に戻ったヴェレスは膝を抱えて落ち込んでいた。
ベルクもそれなりに落ち込んでいた。
さて、ヴェレスに伝えられた秘密ってなんでしょうね?
実はこのネタは書き始めた時からあるネタで、書きながら「ようやくここまで……」ってぼやいていた気がします。
そして突然の美人化!このネタは最近思いついたものです!
次々回ぐらいには主人公視点に戻りたい……というか更新速度をどうにかしたいですね。
書籍重版、本当にありがとうございます!
これからも頑張っていきますね!
感想やtwitterで本編や書籍の方での誤字脱字を指摘してくださった方々、本当にありがとうございます!