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100話 ツクヨミとイザナミっぽい

お久しぶりです!

書籍化して最初の更新となります、お待たせしました!

「……なんで、攻撃しないの?」

「する必要がないからかしら?」

「余裕……なのね……」


 ツクヨミは光槍を危なげなく構え、息を切らせていた。


(あの子が『光槍』しか使ってこないのは謎だけど、やっぱり戦いの経験がなさすぎるわね。アレを長時間フルで維持させるなんて…………まさか)


 ゼロは小さく息を吐き、ツクヨミから目を離す。


「……あの人間とエルフ。目から力がなくなってるわね……よし」

「戦いの途中に、敵から目を離すのは……ダメ」


 そんな声を聞いて、ゼロが目線を戻すと既に目の前には光槍が迫っていた。

 ツクヨミは当たることを確信し、そのままありったけの魔力を光槍に注ぎ込む。


 だが……。


「無駄よ」

「!?」



 ゼロはそう言うと光槍を紙一重で避け、ツクヨミの眉間を指で突いた。

 それだけで決着はついた。

 いや、そもそも戦う前から決着はついたようなものだったのだ。


「どう? 主人の光槍レプリカは? 重いでしょう?」

「なん……で? さっきのは……? 魔術……?」

「魔術であって魔術ではない。そんなところかしらね?」


 ゼロはそんなことを言っているが、ツクヨミの耳には大して入ってこない。

 手に持っている光槍があまりにも重く感じるようになり、取り落とさないように集中するので手一杯だったからだ。


「やっぱり身体強化を使っていたのね」

「くっ……かはっ」


 そんな咳と共に『光槍』は姿を消した。

 同時に、ツクヨミも膝を地に付ける。


「他の魔術を使わないと思ったら、殆どの魔力を『光槍』と『身体強化』に振り分けていたのね。で、最後の最後で『光槍』に魔力を振っちゃったから『身体強化』が切れた途端にSTR不足っと……そんな感じでしょう?」

「『身体強化』を……どうやって……?」

「簡単よ。私の『虚無』の属性で魔力の流れを完全に止めたわ。これで魔力で何かをすることはできなくなった」

「なら……私だって……!」


 ツクヨミの必死のあがきをゼロは鼻で笑う。


「無駄よ。ヨミちゃんはその技をまだ一回しか見ていない。技を使う為には二、三回見なきゃダメなんだよね? それに――――私、身体強化すら使ってないから」


 その一言は、ツクヨミに敗北を噛み締めさせるには十分な一言だった。

 ツクヨミは幾らか回復したのか、ゆっくりと立ち上がる。

 その姿は若干震えていたが、その震えが負の感情でないことに気が付くのにはそう時間はかからなかった。


「凄い……凄いよ……! パパも強かったけど、ママ・・もすっごく強い……! ねぇ、人間界にはママたちみたいな強い人がいっぱいいるの!?」

「あー……いや、流石にいないわよ? ママたちがちょっと特殊なだけかな?」


 戦闘は完全に終わったのだろう。

 ゼロはツクヨミの親になる気満々だった。


「でも、でも! ママたちはこれから強い人たちといっぱい戦うんだよね?」

「うん……まぁ」


 ツクヨミにバレないようにイザナミを確認する。

 イザナミは呆れたような、疲れたような笑顔をゼロに向けた。


「本当に……いいの?」

「しょうがないじゃろう? そやつはもうその気になっておる。はぁ……上位神が神界以外で暮らすなぞ、早々あるもんじゃないんだがの」


 イザナミはその目線だけでゼロが何を言いたいのか把握し、それに対しての許可を出した。


「それに、お主はまだ下界には帰らんのだろう? 極めて薄いと思うが、その間に思いとどまるかもしれん」

「それはないからババアは安心して」

「ここでもババア扱いとはな。悲しいもんじゃ」


 イザナミはそんなこと言っているが、どこか嬉しそうな表情をしていた。


「そやつを……ヨミを頼むぞ? そやつは余りにも強大すぎる力を持っていたが故に、殆どの時間を妾たちが監禁しておった。ヨミを圧倒できるお主らなら、制御も容易であろう」

「任せなさい」


 ゼロはそう微笑んで、ツクヨミの頭を撫でる。


「さて……と。本来の目的に取り掛かりますか」


 そして、今まで放心状態だったヴェレスとベルクに声をかけた。


………

……


「ヨミちゃん、やっておしまい!」

「わかった……!」

「ちょ、ゼロさん! 無理! 死ぬ!!」

「大丈夫よベルク。死ぬ寸前に私が全回復させてあげるから!」


 ベルクは特訓中だ。

 それも、ただの特訓ではない。ひたすら攻撃をくらって、防御力を底上げするという無茶苦茶な特訓である。

 今は火球の雨を降らせて、ベルクを必死に走り回せている。


「即死したら回復もできないからねー。帝級魔術ぐらいだったら死なない体にしないと」

「なっ!? 帝級魔術なんて耐えれる訳ねーだろ! そもそも、そんな魔術使えるやつなんて数える程しかいねーぞ!」

「あー……あんた、数百年程度しか生きてないものね。帝級程度なんて、精霊王程度でもバンバン使うわよ?」

「比べる基準が違うからな!?」

「はいはい、私語は慎みなさい。死ぬわよ? 死んだら回復もできないんだからね」

「くそぉぉぉぉぉぉ!!」


 ベルクはひたすらに走る。

 そして、ひたすらに思う。


 勇者たちは魔神を倒すと言っていたが、それは果たして可能なのか?

 確かに、勇者たちの成長は異常だ。

 上位魔族だったら個人でも遅れを取らないだろう。

 だが、目の前の女はなんだ?

 自らを魔神と名乗り、上位神であるツクヨミを圧倒した。

 この女が本物の魔神だとするなら、戦おうと思った時点で間違いだ。

 無理だ。不可能だ。

 絶対に、数千年生きられるとしても、この女には勝てない。


 ベルクは心に決める。

 勇志たちにあったら、まず魔神討伐を諦めさせると。


(そう言えば、ドレットのお嬢ちゃんは何をしているんだ?)


 この男、命の危機が迫っているというのに案外余裕だった。

 そして……。


「ぐふぅ!?」

「あーあ、被弾しちゃった。はい『ヒール』」


 ベルク程度なら、回復魔術の最下級『ヒール』で全回復できる。

 ゼロは回復特化型の魔術師なのだ。

 ベルクがそれに気が付くのは……まだまだ先になりそうだ。


………

……


「まさか、妾が人間の娘を鍛えることになるとはな」

「す、すみません……イザナミ様」

「強斎の……何より、ゼロの頼みだしの。特別じゃぞ?」


 イザナミはそう苦笑すると、指をパチンと鳴らす。


「さて、お主の力……見せてもらおうか?」

「え……?」

「……お主、時空魔術師なんじゃろ? 気がつかなかったのか?」

「す、すみません……私にはイザナミ様が指を鳴らしたようにしか……」


 イザナミは大きな溜息を吐き、自らの眉間を押さえる。


「これは……中々時間がかかりそうじゃな」

「えっと……」

「ああ、説明するから問題ないぞ。先ほど、妾は妾たちがいた空間と別の空間……まぁ、隔離空間を作ったわけじゃ」

「つまり、今ここには私とイザナミ様しかいないと……?」

「そうじゃ。お主にはこの隔離空間から自力で出てもらう。老化の心配はいらんぞ? 向こうの世界での一日はここでの一年じゃからな。あれじゃ、精神となんとかの部屋みたいなもんじゃ」

「つまり、ここで一年過ごしても、実際には一日分しか歳を取らないと?」

「簡単に言うとな」


 ヴェレスは冷や汗をかいていた。


 一体、何年かけて特訓をすることになるのだろう……と。

 そんなヴェレスにイザナミは追い打ちをかけるように言った。


「お主とベルクは確かに強い。人間界と魔界の中ではな。じゃが、これから先、龍人界や精霊界に足を運ぶつもりなんじゃろ? 神界とまではいかないが、その二つの世界も十分に強い者がおる。お主が何年かけて力を付けようが、その二つの世界に届くか怪しいレベルの奴らがな」

「……」


「それでも、やるのか? この隔離空間を作っておいてなんだが、今なら引き返せるぞ?」

「……私は、非力です。王国内で最強レベルと謳はれてきましたが、勇志さんたちと比べれば赤子もいいとこです」

「地球組と比べるのもどうかと思うが……いいじゃろう。人間よ、妾――――黄泉津大神よもつおおかみ伊邪那美命いざなみのみことが直々に指南してやろう」



 今までを卓越した圧倒的な存在感に、ヴェレスは頷くことしかできなかった。

今回はあまり使ったことのない言葉を使ったので、もしかしたら間違ってるかもしれません……


無事、自分も書籍を店舗にて確認できました。

ここまで支えてくださった読者の皆様、本当にありがとうございます!

これからも頑張ります!

感想欄はしっかりと読ませてもらっております、本当にありがとうございます!

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