96話 探すっぽい
前話のステータスの一部表記を変更しました
カウントストップ→エラー
今回もテンション高い…
「る、ルナさん……? なんでここに?」
「どうもユウシさん。お久しぶりですね。私は用事が終わったので、主様の下へ戻ってきただけですよ」
平然と澪を絞めながら、笑顔で答えるルナ。
その時、強斎がフラフラと立ち上がった。
「何だお前ら、ルナと知り合いなのか?」
「知り合いもなにも……命の恩人だよ」
勇志はそう答えたが、とある疑問も抱えていた。
今さっき、ルナは『主様の下へ戻ってきた』と言った。
つまり、ここにはその『主様』がいるわけで……。
「ねぇ、強斎……もしかしてルナさんの主様って……強斎のこと?」
「ん? そうだけど? あ、ルナ。もういいぞ」
「はいっ」
鈴の質問に軽く答え、澪を解放させる。
ルナは素早く強斎のそばに行き、軽い礼をした。
一瞬だけ強斎と目を合わせ、強斎が頷くのを確認すると、頬を緩めて口を開いた。
「キョウサイ・タカナシ様の奴隷。名前はルナと申します。よろしくお願いしますね」
『……』
唖然とした。
先程まで頭を締め付けられていた澪までも唖然としていた。
そして、誰かがふと呟いてしまった……。
「ロリコン……?」
「おい誰ださっきの!?」
強斎がそう叫ぶと、鈴が身を抱えて一歩下がる。
「え、だって……ルナさんとヤったんでしょ? その体格差で」
「そうだよ! そうだけど……! ていうかさっきのお前かぁぁぁ!!」
強斎は深いため息を吐いた後、少しだけ恥ずかしがっていたルナの頭を撫でる。
もう一度軽く息を吐くと、真剣さを装う表情になっていた。
その表情に全員が気がつき、さっきまでの雰囲気は綺麗に消えていった。
「ルナが帰ってきたってことは、そろそろ時間がないわけだな?」
「そうですね……。私も、もう少し皆さんとお話がしたかったです」
小声でそんなやり取りをすると、強斎は全員に聞こえるように声を出す。
「すまない。そろそろ時間がやばくなってきたから、必要なことだけ話そうと思う」
「時間がない? どういうこと?」
ようやく通常に戻った澪が、眉を寄せて全員の疑問を口にした。
「それも説明する。まず、俺の目的だが……『ラグナロク』を始めること。同時に、魔界と人間界の戦争を起こすことにある」
「『ラグナロク』?」
澪の質問に無言で頷く。
「神々の最終戦争……『ラグナロク』。俺の契約者……まぁ、眷属の仕返しってのもあるが、ちょっと神どもに聞きたいこともあるんでな」
「聞きたいこと?」
「ああ。……お前らは考えたことがあるか? この世界がどうやってできたのかを。ステータスもそうだが、種族や魔物。話している内容だって。全て地球に『存在』していただろ?」
その言葉を聞いて、全員が目を見開く。
エルフや亜人の種類だって、全て地球の文庫やら動物やらに載っているものばかりだった。
ステータスの項目も、ゲームによくある項目だ。
「そして、追い打ちをかけるように日本語で書かれた本。ここまで言えばわかるな?」
「……地球をもとにした世界」
勇志がポツリとその言葉を口にした。
「もしくはその逆。この世界をもとにして地球が作られたか。だ」
「で、でも。わざわざ戦争を起こさなくても……」
「色んな神に個々で聞きに行くってか? 一柱の神に会うだけでも面倒なんだ。それだったら戦争で一気に会うほうが楽だな」
勇志の質問に答え、さらに話を続ける。
「次に魔界と人間界との戦争だ。これは単純に人間界側の『黒』を見つけだす」
「『黒』?」
「お前らを転移させようとした黒幕だよ」
「「「「っ!」」」」
勇志、大地、澪、鈴が同時に息を詰まらせる。
「あの時は俺だけ転移したから良かったけど、元はお前らを狙ってやったものだ。この戦争をすることによって、もう一度お前らの命を狙ってくるだろうな」
「……それで、その黒幕を見つけたら……強斎はどうするんだ?」
「潰す」
なんの躊躇いもなくそう言い放った。
質問した大地も驚いている。
「あの転移、どこに転移するのかわからないんだってな。一歩間違えていたら即死だってありえたわけだ。それを俺の親友たちに使おうとした。潰すには十分な理由だろ?」
「強斎さ、自分が即死するかもしれなかって考えなかったの?」
「……」
「考えてなかったんだね……まぁ、そういうところが好きなんだけど」
澪の『好き』という言葉にはどんな意味が含まれているのか、澪自身にしかわかっていない。
少なくとも、強斎は『友達として』という風に捉えている。
「まぁ、その話は置いておこう。今のお前らなら、人間界に命を狙われても大丈夫だと判断したし、このまま成長すれば『ラグナロク』だって切り抜けられると思うからな」
「それで僕と戦ったと」
「え!? 戦ったの!?」
強斎は鼻で笑うだけで、肯定はしなかった。
「最後に、時間がない理由だったな。これは単純に――――」
澪のことは放置して、強斎はルナを肩に座らせた。
ルナ自身もびっくりしていたが、にへらっと笑うと、そっと強斎の頭にしがみつく。
「今回の騒ぎを更に拡大させて、各王国を挑発した」
「皆さん、上手に立ち回ってくださいね? 魔界側に主様がいるって伝えておいてください!」
「……どういうこと?」
鈴の質問に少しだけ困るが、騒ぎ声が微かに聞こえたので、思考を切り替える。
「……すまないが、そろそろ時間だ。この先、魔界との戦争が待っていると思うが必ず生き延びろよ」
「……強斎は。強斎は、この戦いが終ったらどうするの?」
澪の質問に、少しだけ考えて、苦笑いをしながら答えた。
「そうだな。精霊界や龍界にも行ってないから、そこら辺をゆっくり旅しようと思う。それに――――」
強斎は肩に座らせているルナを一瞥して――――。
「こいつらとの結婚も考えているな」
「っ!?」
顔から湯気が出るんじゃないかってほど赤面しているルナとは対照的に、澪は真っ青になっていた。
「他にも二人の奴隷と一人の契約者がいるんだが、そいつら全員と結婚をしようと思っている。幸い、この世界は一夫多妻が認められているからな」
強斎は踵を返し、全員に背を向ける。
「まぁ、それも全てが終わったら……だな。久しぶりにお前らと話せて……楽しかったぜ。じゃあ――――」
「待って!!」
強斎が走り出そうとした瞬間に、澪が呼び止めた。
そして――――。
「私も……私も!」
「……澪も?」
「――――――私も、強斎と結婚させてください!!」
遂にきましたよ!
告白ですよ!
時間がない中告白する澪……
着々と物語は進んでいきます