Ready Go!
―Ready Go!―
静かな静かな森の奥深く、湖の畔。
セピア色の景色が広がる世界。
2人の少年が肩を寄せ合って何か言葉を紡いでいた。
澄んだ空気が彼らを包み込む。
片方の少年がくすっと小さく笑うと、急に唄い出す。
そのボイスはセピア色の世界に一気に拡がり、極彩色に変えていく。
ワンフレーズ唄い終わると、もう片方の少年がキーボードの上を滑るような手つきで叩き、音を奏でる。
静かだった湖畔に、美しいメロディが流れ出し、小さな観客たちが集まり始める。
小鳥やリス、ウサギたち…それは木の上から、草むらから、ひょっこり顔を覗かせて音楽に聴き入っていた。
キーボードの音に乗せ歌を唄い出した少年は愛おしそうにキーボードの少年の髪をさらり、と撫でる。
そのキャラメル色の髪はサラサラと手のひらから零れ落ちていく。
心地よさそうにそれを受け、少年は瞳を閉じてキーボードを叩き続けた。
零れ落ちた髪をそっと梳いて、歌を止めはしない少年は手を引いてその胸に当てて更に唄い上げる。
色づいた景色が、更に鮮やかに光り輝き始めたようにすら感じるその伸びる声で、空の色すらも雲を吹き飛ばして濃い青色へと変えていくようだった。
そして静かな間奏が始まり、唄うことを休んだ少年はゆっくりと立ち上がる。
木陰から覗く空の色はやはり濃い青色で、少年は木に立てかけてあったギターをそっと持ち上げてストラップをかけると、空を仰いだ。
そのままキーボードとタイミングを合わせてギターを鳴かせ始めた。
2つの音が重なり、2人の気持ちもシンクロしていく。
空を仰いだまま少年は大きく息を吸い込んでから、2つの音に更に声という音を乗せる。
木漏れ日がスポットライトの如く2人を照らし出し、小さな観客たちは音楽に酔いしれながらも自分たちだけが聴いている音楽が勿体なく感じていた。
もっと広めたい。
もっと多くの人に聴いてほしい。
その想いが、木々を消していく―――――。
いつしか湖が観客席と化して、彼らの立つステージを見上げるように沢山の人々で埋め尽くされた。
気付けば少年の叩くキーボードはグランドピアノへと、そしてギターはボーカルの少年の愛用するものへと変わり、2人は視線を合わせると微笑みあって音楽を奏で続ける。
ここで終わらせはしない。
終わらすことはできない。
今からが始まりだ。
さぁ、準備はいいかい?
―――――Ready Go!
END 20151014
再びWINGSのPVっぽいイメージで書いてみました。
これはまだ彼らが少年時代のつもりです。
でもなぁ…なんか納得いってないんですけれども…w
これでも大丈夫なんでしょうか。
咸月はWINGSを、彼らの唄をまだ掴み切れていない気がします。
なので不安なのでしょうね。
でもこの感じのシリーズでいくつか書きたいので頑張って修行します!
修行しながらの作品upばっかりですみません。
有難うございました~。