治癒魔法の使い方
カニバリズム、残酷な描写があります。
苦手な方はバック推奨です。
夜月 瑠璃様のヤンデレ企画内カーニバル企画参加作品です。
シルヴァンは、高名な治癒術師だった。
身体の欠損すら治すことが出来るその腕前は勿論のこと、その誠実で温厚な人柄も評判だった。
物腰は柔らかく、いつも穏やかな笑みを浮かべいるその姿。
温厚な彼が怒るのは、患者やその関係者が身体を粗末にした時で、それ以外に彼が怒ることは殆どなかった。
その為、彼が怒るようなことがあれば、相手がそれだけのことをしたのだろう、そう思われる程だった。
彼には、幼馴染の妻がいたが、病弱な為殆ど外に出ることはなかった。
彼が治癒魔法の腕を磨いたのは、彼女の為だということは多くの物が知っており、シルヴァンのように誠実で自分を大切にしてくれる人が欲しい、と年頃の女性達に言われていた。
そう、治癒魔法の上達には実践が欠かせない。
シルヴァンの腕は、ひたすらに妻に治癒魔法を使い続けたが故のものだった。
* * * * * * * * * * * * * * * * *
「ラファエレ」
私は最愛の妻に声をかけた。
ベッドに腰かけていた彼女は、無言のままこちらを見た。
そんな彼女の喉元に、私は手を当てた。
柔らかい光が彼女の喉の周囲を漂い、消える。
「お帰りなさい、シルヴァン」
少し掠れた声が、私の名を紡ぐ。
それだけで、この身を歓喜が走り抜ける。
私はラファエレに、口付けた。触れるだけの、軽い口付け。
本気で口付けをしたら、それだけで止まれる自信は無い。
彼女が名を呼ぶのは、私だけでいい。
彼女の声を聞くのも、私だけでいい。
だから、私がいない間、彼女が声を発せないようにした。
治癒魔法は、実に便利だ。
病と健常の差はほんの僅か。一歩間違えれば、治癒魔法で逆に悪化させてしまったり、別の症状を引き起こしてしまうこともあるのだ。
それを熟知していれば、特定の症状にすることなど造作も無い。
ラファエレとは幼い頃からずっと一緒だった。
そして、ずっと私は彼女に治癒魔法を使っていた。
些細な怪我は勿論、病や身体の欠損に至るまで、様々な魔法を。
私は彼女の隣に腰掛けると、その手をとった。
私の手に比べると、小さく柔らかい、その手。指先には、桜貝のような小さくて綺麗な爪がある。
私は爪に、そっと口付けた。
彼女の身体が、びくりと震えた。
くつり、と私は笑った。
口付けた人差し指の爪に、右手を伸ばし、その爪を剥いだ。
ラファエレの顔が、歪んだ。
押し殺した彼女の吐息が、私を煽る。
血が滲む指先を、口に含む。
いつもの、味だ。
ラファエレの健康状態は、良好のようだ。
血の味と、指先の感触を堪能してから私は指から口を離した。
とん、と彼女の指先を指で叩くと同時に、指先は綺麗に元通りになった。勿論、爪もきちんとついている。
私は立ち上がり、戸棚から瓶を取り出した。
この瓶には、ラファエレの爪が保存してある。瓶に状態維持の魔法がかけられているので、中の爪は綺麗なままだ。
勿論、他の瓶にも魔法はかかっている。
だから、彼女の小さくて可愛らしい骨の欠片も、澄んだ藍玉の瞳も、綺麗に並んでいる。
欠損すら治せる治癒魔法を会得してよかった、と本当に思う。
会得できなければ、このように宝物を増やすことはできなかった。
それに…………
私は瓶をしまうと、ラファエレの隣に戻った。
そして、彼女の上着を脱がすと、腕の内側の柔らかな部分に口唇を寄せる。
私が何をするつもりなのか分かったのか、ラファエレが身を竦ませた。
私は少し笑い、そのまま噛み付いた。
皮の弾力、そしてあふれる血。
彼女の柔らかな肉は、いつもながら噛み切りにくい。生である以上、仕方がないのだが。
私は彼女の肉を味わい、滴る血に舌を這わせた。
ああ、本当に治癒魔法は素晴らしい。
私がいくら彼女を味わおうとも、彼女が損なわれることはないのだから。
勿論、ラファエレに苦痛を与えたい訳ではない。
だから、彼女の痛覚を弄ってある。
私に与えられる刺激は、全て快感と認識するように。
腕を切り落として食べたときも、彼女は泣きながら悦んでいた。
子供の頃から、彼女にずっと治癒魔法をかけていた。
だから、彼女は私の与える刺激の虜だ。
今度はもう少し強い刺激を与えようか。
腹を切り裂いて、直接彼女の暖かい体内に手を埋めよう。
そして熱い臓物の感触を味わおう。
流石にまだ心臓を弄ることはできないが、それ以外ならなんとか出来る。
「愛しているよ、ラファエレ」
私の言葉に、彼女はうっとりと微笑んだ。
■シルヴァン
治癒魔法のチート。
間違った方向に才能を発揮しているダメな人。
ラファエレを監禁しているにも関わらず、病弱な奥さん大事な真面目て誠実な人と思われている。
おそらく飼っている猫の尻尾は9本くらい。
■ラファエレ
幼馴染がヤンデレでターゲットロックオンされちゃった人。
治癒魔法は精神にも作用しちゃったりするので、壊されて治されを繰り返されて、すっかり洗脳されている。
なので、今は自分は幸せだと思っている。