made to order
RADWIMPSの「オーダーメイド」という曲を元にして作った作品です。
僕は気づいたら真っ白な部屋の中にいた。真っ白な机に、真っ白な壁、そして僕は真っ白な椅子に座っている。それ以外には何もない。僕の服装も全く汚れのない無地の白い長袖のシャツだ。
「気づいた?」
いつの間にか、目の前の椅子には子供にも大人にも見える女の人が座っていた。服装は白のワンピースを着ているだけだ。
「ここはどこですか?」
「前世と来世の狭間、かな」
「僕はどうしてここに?」
「自殺した君を私がここに連れてきたんだ。前世の記憶は多分消されてるよ」
そう言われて何か思い出そうとするけれど、記憶が霧に包まれたように思い出せない。僕はどうして自殺をしたんだろう。
「君は新人類になる人間として選ばれたんだよ」
「新人類って、進化するってことですか」
「そう思ってもらってかまわないよ」
「どうして僕が選ばれたんですか?」
「人は何億個もの精子の中の一つから選ばれて産まれるんだよ。そしてそのことには理由も原因もないの。君が選ばれたことも同様だよ」
彼女はそう言って席を立った。
「でも、いきなり連れてこられて進化ができると言われても嬉しくないでしょ。だから君に選ばせてあげる、進化するかどうかを」
彼女はぶらぶら歩きながら喋る。改めて周辺を見てもドアも窓もない。
「じゃあ、まず未来を見れるようになりたくない?」
「未来」僕は呟いて少し迷った後、「いえ、見れなくていいです」と答えた。
彼女は少し驚いた様子で、「どうして?」と尋ねてきた。
「未来が分かってしまったら、『想い出』が出来なくなってしまうと思うんです」
「分かった。じゃあ未来は見えなくていいんだね」
「はい」
「そう。だったら忘れたい記憶を忘れてしまうようにするのは?」
「しなくて、いいです。全ての記憶が僕を形作ってくれるから」
彼女は僕の言葉を聞くと少し悲しそうな顔になった。
「なら、口と心臓を二つに増やすのはどう?」
「口は・・・・・・一つだけでいいです。言葉をちゃんと伝えるのに口は二つは要りませんから」
彼は少し不機嫌そうに眉間にしわを寄せて、「だったら一番大事な心臓は両胸につけてあげるからさ。いいでしょ?」と言った。
「恐れ入りますが、心臓も二つは要りません」とまたまた僕は断った。「わがままばっかり言ってすみません」
「いいんだよ、選ぶ権利は君にあるんだから。それより何で心臓は二つ要らないの?」
「僕に大切な人ができて、その子を抱きしめるときに初めて二つの鼓動がちゃんと胸の両側で鳴るのがわかるように、です」
「君が一人でなんて生きていかないように?」少し嬉しそうに彼女は言った。
そう言う彼女の姿を見ながら、胸が騒がしいような懐かしいような、そんな気持ちになった。
「はい。一人じゃどこか欠けてるけれど、二人でなら生きていけるように」
「そっか」彼女は儚げにそう言った後、うろうろと歩きながら、「そう言えば最後にもう一つだけ。『涙』を流さないようにするのは? あっても面倒なだけでしょ?」と訊いてきた。
「いえ、流せるようにしてください」と僕はお願いした。「僕は涙を流さないような強い人間になるよりも、人のために泣いてあげられるような優しい人間になりたいです」
「そう。じゃあちなみに涙の味だけども、君の好きな味を選んでよ。酸っぱくしたり、塩っぱくしたり、辛くしたり、甘くしたりできるよ。どれがいい?」
「じゃあ―――」
「終わったよ。もう私にやることはないから、これでお別れだね」
彼女はそう言って笑った。僕はそれを見て胸が急に苦しくなった。
「あれ? どうして泣いてるの?」
「え?」
僕は自分が涙を流していることに気がついた。何で? どうして? 僕は両手で顔を覆って下を向いた。
「ちゃんと望み通り叶えられてる証拠だね。君が泣けるように選んだんでしょ。だから涙に暮れるんだよ。ほら、その顔をちゃんと見せてよ。さあ、誇らしげに見せてよ」
僕は彼女の顔を真っ直ぐ見た。涙で視界が滲んでいたけれど服の袖で拭って彼女の顔がちゃんと見れるようにした。
「ほんとにありがとうございました。色々とお手数をかけました。あと、最後に一つだけいいですか?」
「何?」
「どっかでお会いしたことありますか?」
僕がそう言うと彼女は泣きそうにも笑っているようにも見える顔になり、「記憶を消されても、心が覚えててくれたのかな」と言った。
「君は僕の―――」
「そう、君の恋人だった。君より少し前に亡くなっちゃったね」
自分の勝手なイメージなので気分を害された方などがいたらすいません。
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