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第三王子のお守り騎士団 作者:しろっくま
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2話

 この国、グリフォード王国には五人の王子と三人の王女がいる。
 第一王子は王太子として国王の補佐をしながら内政を学んでいる。
 第二王子は自身の社交性を活かし、外交のトップとして手腕を発揮している。
 第四、第五王子と三人の王女たちは国外の王女、王子や国内の有力貴族に外交や内政の切り札として、嫁ぎ先が既に決まっている。

 今回、私が関わることになった第三王子。この人は、兄二人にもしも不幸が訪れた場合の控えとして、表立った事は一切せずに生き残る、というのが与えられた仕事なのだ。
 名目上は騎士団の統括という位置づけになっているが、実質表立った仕事をしているのは、また別の人物になる。

 先ほどお母様から渡された書類に目を通しながら、騎士団について復習しておこう。

 この国には六つの騎士団が存在する。
 第一騎士団。ここはニコラスの前の職場だ。別名近衛騎士団とも呼ばれ、王族の警護が主な仕事。もう一つは国内にいる贈収賄や犯罪に手を染める貴族たちの取り締まり。
 エリート中のエリートが集まる団で、全ての貴族の憧れの場所だ。

 第二騎士団から第五騎士団までは、地方騎士団とも呼ばれ、第二は北方騎士団、第三は東方騎士団、第四は南方騎士団、第五は西方騎士団として、そのエリアを警備及び管理している。

 そして第六騎士団。
 主な仕事は王都の庶民同士のトラブル回避。
 最初は平民の中でも統率力のある者が結成した自警団だったのだが、そこに貴族を何人か入れて騎士団にしてしまった。

 通称『第三王子のお守り騎士団』

 第三王子を団長として据え、貴族の中でも厄介払いで放り込まれる場所として有名だ。何もしなくてもいいが、世間体のために仕事をしているように見せかける必要がある者を集めて管理する場所が欲しかったワケで……
 要は仕事ができない貴族の溜まり場ってとこなのだ。

「第六ねぇ。ニコラスってばどんなヘマやらかしたんだか。近衛から地方へ飛ばされるんならまだしも、よりによって第六なんて閑職に甘んじるなんて」

 書類をクルクル纏めておデコをトントンと叩きながら考えを巡らす。

「普通、プライドの高い男なら名誉除隊を申請するはず。それをしないで仕事を続けるってことは、ヤツの性根は腐っていないわね、いいことだわ。まあ、自分が悪くないと思うなら絶対辞めないんだろうけど。問題はその仕事を放ってまでフィオナちゃんを追わなければいけない理由よね。お母様が知ってるかしら?」

 その時、玄関の扉が勢いよく開け放たれた。

「ニーーコラーーーースっ!」

 慌てて玄関へ行くと、お父様が蒼ざめた顔で息も荒く飛び込んできた。
 顔中大汗をかいて、ハンカチなどグシャグシャになっている。

 うっへぇ、気持ち悪っ。何だろお父様ってば男性更年期か?
 顔をしかめながら近づくと、私の両肩をガシッと掴み、ブンブン揺すりながら、

「ニコラス、お前何てことしてくれたんだっ。あのトンデモ王女の不興を買うとはっ……目立たず騒がずのテイラードと呼ばれ世間からお前たちをひた隠しにしてきた私の苦労がっ!」
「おと……う、舌噛む……ニ、コルだってば」

 ガクガクと揺す振られて脳がシェイク気味になりながらも訂正だけはしっかりする。
 ハッとその手を離すと、ガクンと首を下に向けるお父様。しかし、また目をギラギラさせながら辺りを見回し、

「ならニコラスは? あのバカどこに隠れたっ!」

 お母様が階段を降りながら少しばかり眉をひそめる。

「なぁに? 騒々しい。しばらく出張でいないと思ったら。あなたも寂しい頭頂部が余計に寂しいことになるから、落ち着きないな。まぁ、それでもダーリンは素敵だけど」

 口元を隠しながら頬を染めてるあたり、どうやら本気で思ってるようだ。言われたお父様も一気に毒気を抜かれたようで、赤くなりながらお母様に歩み寄る。

「ミレーユ、マイハニー、バカ息子はどこに消えた? アイツ、イザドラ第二王女のプロポーズを袖にしたらしい。しかも暴言まで突きつけたと聞いた」
「あら、あの子ってばやるじゃない。ニコラスにはフィオナちゃんがいるんですもの、当然よ。それよりも、せっかく帰ってきたんですもの……」

 お母様の声色がなんだか艶っぽくなってきた。上目遣いでチラッとみるとか……さすが、社交の荒波をくぐってきたご婦人は誑し込みの練度が違う。

「お? おおお? い、いや、そうか……」
「お父様、その話し、詳しく教えてくださいな」

 私は長くなりそうな夫婦の会話に無理やり割って入って、方向修正させた。
 お父様の話しはこうだった。

 ニコラスが近衛のお仕事で王族の警護を割り振られた時に、たまたまイザドラ第二王女の目に留まり、以来専属で王女の警護をするようにと上司から言われたらしい。彼女が裏から手を回して自分の専属にしたという噂だ。

 仕事だからと頑なに拒否するニコラスに対し、火遊びしたい王女様。

 なかなかなびかないニコラスに痺れを切らして、押し倒して既成事実を作ろうとするわ、国王にニコラスと結婚できないなら死んでやると言ってみるわ……
 ブチ切れたニコラスが王女に向かって『私にはあなたより数倍素敵な婚約者がいますのでお断りします』と言い放ったそうだ。

 なーんてこった……そこまでハッキリ言葉にしなくても言い方ってモンがあるじゃないか。なるほど、面子を潰された王女は怒るわな。おかげで近衛から第六かぁ、地方より屈辱的だもんね。

 ところで、あと一つ理解に苦しむのがフィオナちゃんだよね。
 そこらへんはどうなんだろ?

 こめかみに人差し指を添えて、うーんと軽く唸ってると、ツツツとサーラが寄ってきて、普段はかけないメガネをスチャっとつけ私に説明をしてくれた。

 サーラの話しでは、ニコラスに迫りまくる王女をみた近衛の誰かが、婚約者がいるのに浮気してる、と噂を流してくれたらしい。
 傷心のフィオナちゃんは実家に帰ってしまい、ニコラスが誤解を解きに追いかけていってる、というのが現在の状況なわけだ。

 誰だよ、そんな余計な噂を流したヤツは。見つけたらただじゃおかないわ、私があらゆる手段で闇に葬り去ってやろう。
 このテイラードを、というより私を敵に回したツケを払ってもらうからね。

 私だってフィオナちゃんは大好きなんだ。クソワガママな王女にギャアギャア言われる毎日より、癒し系のほほんお嬢との穏やかな親戚づきあいがいいに決まってる。

「お父様、私ニコラスの代わりに……っていなくなってるんだけど……」
「旦那様なら奥様にグイグイ引っ張られてお風呂場へ直行なさいましたよ。この話しの続きはまた明日でしょうねぇ」

 あっそう、娘や息子の大事よりも重要なことになるワケね。
 お母様もまだまだ若いこと。
 それでは、あとは気持ちが若い者に任せて、我々は退散するとしましょうか、ワハハハ……
 若干虚しくなるが、お相手のいない私にゃこの雰囲気は毒だわ。さっさと部屋へ戻るかな。

 しっかし、ニコラスにはフィオナちゃんっていう可愛い婚約者までいるのに、私には何で見合い話しの一つも来ないんだろ。貴族主催のパーティーだって数えるほどしか出してもらえてないし。そこまで作法が粗いとか酷い顔ではないと思うんだけどなぁ。
 現にニコラスと同じ顔なワケじゃん? そんじょそこらのお貴族様よか綺麗な部類に入るワケよ、このニコルちゃんってば。

 私の方が二つ上なんだから、早くしないと行き遅れちゃうじゃないのよ……
 あー、出会いが欲しい。

 そうだ! 今回の騎士団で見つけちゃえば……って、第六は使えない奴らだけだっけ。

 あー、どっかにいい男、落ちてないかなぁ。
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