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貧の盗みに恋の歌 作者:リラックス@ピロー
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橋本籐一郎の場合

 僕は彼らがすれ違う、一連のやり取りを知っていた。文通相手が城築さんだと勘違いする山田のことも、山田と松下さんが思い合っていると勘違いした城築さんのことも、山田に振られたと思って泣いている松下さんのことも、全て。それでも彼らに指摘することがなかったのは、松下さんの思いが山田に届かなければ良いと思っていたからだ。

 明るく人の中心にいる山田と、どちらかと言うとインドアで人付き合いもそこまで得意じゃない僕が友人関係と言うのも不思議だが、初めて話した時からなんとなく馬が合った。だから自然と二人でいることも多く、彼に向けられる視線に気が付いたのだ。熱をはらんだ視線は頻繁に向けられていた。これだけ熱い視線に気づかない山田は相当鈍感ではないかと思う。そしてその視線を向けているのが、松下さんだと知った。彼女は大人しく目立つ存在ではないが、清潔感のあるきれいな人だった。
 いつからか、僕は健気に山田を思う彼女の姿に惹かれていた。そして彼女の視線を自分が向けられたいと感じるようになった。

 山田が古典を読んでいるのは知っていたが、彼女が手紙を挟んでいるのを見たのは本当に偶然だった。僕は図書館でアルバイトをしているので、松下さんの姿を見かけたのは本棚に本を返している時だ。必死な様子の彼女が僕の存在に気付く事はなかった。彼女がその場を離れた後、足早に本棚へ近づいた僕は、迷わず紙が挟まっているページを開く。そのルーズリーフに綴られている文字は、彼女の興奮した様子とは異なり整った、お手本のような形で鎮座している。
 この手紙を送られる友人に嫉妬を抱いたが、この手紙をどうにかしようとは思わなかった。自分が彼女を好きになったきっかけは、彼女が友人のことを好きだったからという思いもあった。何より彼女の思いを踏みにじるようなことをしたくなかった。自分はあくまで傍観者でいよう。この時、そう決めた。

 だから彼女の思いの詰まった本を城築さんが借りた時も、僕が止めることはなかった。山田が手紙の返事をしたことも、やりとりが続けられていることを知っていても、それを邪魔することはなかった。そして何より、城築さんが手紙を破っている所も見ていたが、彼女の暴挙を止めようとは思わなかった。松下さんがちぎられた手紙の存在に気付いた時、傷つくことが分かっていても。


 ただその代り、彼女が傷ついた時、涙が拭けるようハンカチを用意しておこうと思った。


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