まだ平和だった頃 〜捜査開始 2 〜
〜時は流れ
今日は日曜日〜
(ついに この日が来たか。今日 行ってあの人が黒の組織と関係しているのか確かめないとな)
コナンは昨日、例のストーカー捜査を依頼しに来た美人がコナンを捜査に連れて来るよう小五郎に言ったことを灰原に伝えた。
「えっ、貴方を連れて行くように言ったの? やっぱり危ないわ。きっとそれ、貴方をおびき出すための罠よ」
「ああ そうかもな。お前の勘が当たったのかもな」
「危険よ‥‥‥‥ 始末されるかもしれないわ‥‥‥ 危ないわ、工藤君。行かない方が安全よ‥‥‥‥ でも、きっと貴方は行くんでしょうね」
最後の一言がコナンには意外だった。
「な〜んだ もっと必死に止められるのかと思ったぜ」
(灰原にしてはあっさりしすぎているな)
「どうせ、止めても無駄でしょう。知ってるわよ、それくらい。それよりも、分からないのは・・・どうして組織が今 貴方を呼んだのか」
「ああ それは俺も考えた。この前 組織はおっちゃんを諦めたはずだ。なんで今になって俺を‥‥‥」
「何か‥‥‥ あるのかもね‥‥‥‥ 」
何か、それが一体 何なのか二人には分からなかった。
「俺に、関係あるのかな? その何かは‥‥」
「裏切り者には分からないわね」
沈黙が続く‥‥‥
「まあ、大丈夫だ。俺が明日 行って確かめてやるから」
(灰原もきっと知りたいんだ。だから、あんなにあっさり俺の組織との接触を認めたんだな)
「ええ お願いね」
灰原の返事が、コナンの考えが当っていることを証明した。
灰原と約束した以上、コナンはその 《何か》 を確認してこなければいけない。
しかし、今いるこの場所は普通の住宅街。怪しげな 《何か》 など無いように思われた。
(組織と関係してるっていうのは、ただの思い過ごしだったのか?)
「すみません、毛利さん。お待たせしました」
例の美人依頼人がコナン達のいる待ち合わせの公園 ───子供が遊ぶというよりは、散歩やデートにむいている、静かで、緑がきれいな大きめの公園─── にやって来た。小五郎はちょっとにやけた。蘭の様子は変わらないが、内心ではこの美人を警戒しているに違いない。
「あ〜。その、いや〜 全然 待ってないですよ。あっ、えっと、この二人は、娘の蘭と居候のコナンです。この間は迷惑をおかけして申し訳ない」
「あら、この坊やも来てくれたのね。嬉しいわ。迷惑なんてとんでもないです、毛利さん。こんなに心強い味方がいれば、ストーカー退治もあっという間ですね」
「アッハハ〜。そりゃこの毛利小五郎がいれば、事件解決なんてあっという間! 貴女を苦しめるストーカーなんて、もういないも当然! 安心して下さい」
うふふっ、と依頼人が上品に笑う。蘭も微笑んだ。コナンはリアクションに困りながら、なんとなく笑っていた。
「まあ、坊やも笑ってくれて嬉しいわ」
───小学一年生のコナンが、まるで照れ隠しでもするようにニコッと笑顔になる─── とても微笑ましい光景だ。
しかし、その笑顔とは裏腹に、コナンの頭の中では思考回路が目覚ましく働いていた。
(な〜にが『この毛利小五郎がいれば、事件解決なんてあっという間!』だよ。誰もお前を褒めちゃいないのに‥‥。
でも気になるな、あの人‥‥。心強い味方? 外見小学一年生のこの俺が? 誰がこんなガキを頼りにするかよ。あんなこと言うのは、本当に子供好きな人か‥‥、あるいは、俺の正体を‥‥‥‥ 知っているのか? もしも、この依頼人が組織に関係しているなら‥‥‥、それなら、俺が工藤新一であることを知っててもおかしくない。
やっぱりな。きっと組織に関係してるんだ、この人は。一体コイツの目的は何なんだ?
あれ? この人・コイツ‥‥‥‥そういえば依頼人の名前って何だったっけ? おっちゃんは知ってるかな?)
「コナン君、行くよ」
「あっ、はーい」
気付くと蘭と小五郎、そして依頼主は少し先を歩いていた。
(やばい、あんまり真剣に考えすぎると周りが見えなくなる‥‥‥。それに子供っぽくない。どうしよう。どうすればいいんだ?)
「本当、好奇心旺盛で目がキラキラ輝いてるのがかわいいですよね、子供って」
蘭はこの依頼人と仲良くなり、話しに花を咲かせている。子供好きという点で気が合うらしい。
(好奇心旺盛で目がキラキラ── 蘭はいつも俺にそう言うよな‥‥‥ 俺は子供なんだ、じっと考え込む姿は似合わない。そうだ、いつものようにしてればいいんだ。分からない事は全部質問して‥‥‥‥ とにかく子供っぽくしてればいいんだ。あの人が組織に関係してるかなんて、まだ分からない。緊張しないで、いつものように‥‥‥‥ いつものように‥‥)
「ねぇ、おじさん。あの女の人 名前何て言うの?」
「ああ? 名前か? そんなの知ってどうするんだよ?」
「別に‥。何もしないよ」
「まあ、教えてやってもいいか。白野 シラノ 艾 ヨモギさんだ」
「そっか、ありがとう」
(白野艾‥‥)
四人は道を真っ直ぐに進み続ける。ストーカーなんて無縁そうなきれいな家がいっぱい並んでいる道だった。
小さな駅が見えて来た。コンビニやレストランなんかも目に入り、駅周辺らしい景色になってきた。
「毛利さん、私の家はここをずっと行った先なんですが、いつもあの辺りに同じ人が立っていて、私が通り過ぎると後から着いてくるんです。今日もきっと‥‥‥」
|