まだ平和だった頃 〜美人依頼主〜
〈トントン、トントン〉毛利探偵事務所のドアをノックする音が聞こえる。
「はい、どうぞ」
小五郎がぶっきらぼうに返事した。
「失礼します。予約をしました‥‥‥」
「オッッホ――!ちょっとお待ち下さ〜い♪」
(全く。予約があるならちゃんと用意しとけよ‥。まぁ、こんな美人がくるとは思ってなかったんだろうな‥‥)
そう思いながらコナンは美人依頼主を見た。目が合った。何となく嫌な感じがした。
「すみません。お茶でも飲んで待っていて下さい。」
「あら、ありがとね。‥‥‥お嬢さん。」
美人依頼主はそっとほほ笑み、蘭を見た。暖かい目だった。コナンを見る目とは、何かが違うような気がした。
「いやぁ、すみません。お待たせして。」
バッチリ決めた小五郎が、ドアから出て来た。
「さぁ、お前らはあっちの部屋で待ってろ」
「えっ!?なんでぇ〜僕も入れてよ〜」
「子供が首突っ込むな! すみません、お騒がせして。二人は部屋を変えますから、どうぞごゆっくり‥‥‥」
「えー僕も〜‥‥」
「もう行こう、コナン君」
(チェッ)コナンは渋々蘭の後に続いた。
「分かりますよ、あなたみたいな美しい方なら〜」
「それはさぞ心配で、でも、もう大丈夫!この毛利小五郎が決死の覚悟であなたをお守りします。」
(なんだ、ただのストーカーか。)
部屋を変えた意味はあるのか?小五郎の声は筒抜けだった。
「全く、お父さんってば綺麗な人にはずいぶん優しいのね‥‥。これだからお母さんが逃げちゃうのよ。」
(確かに綺麗な人だったよなぁ。でも、なんていうか、ストーカーくらい一人で片付けちゃうようなしっかりした感じがするんだけどな‥‥。なんでおっちゃんなんか頼って‥‥‥‥‥)
「はい、では続きはまた今度で。それまで十分お気をつけ下さい。」
(あれっ、もう終わりか。予約して来た割には早いな。おっちゃんが頼れねぇヘボ探偵だって気付いちまったのかな)
「おい、もういいぞ!」「ねぇねぇ、どうして部屋変えたの?おじさんの声すっごく良く聞こえてきたよ!!」
「うるせー!お前みたいなガキがいたら喋りにくくなっちまうだろうがー!!いつもちょこまか勝手にしやがって。おかげで今日も早く切り上げて帰っちゃっただろ!」
「ちょっと、今日コナン君は何にもしてないわよ。」
(そうだ、そうだ!今日俺はなにもしちゃいないぜ)
「ところであの美人依頼主さん、どんな依頼だったの?なんか困ってたみたいね。」
(あれ?俺の話題は?)「大丈夫♪この名探偵毛利小五郎があの美しいお方のお守り引き受けたからには、もう心配はいらん!」
(いつも事件解決してやってるのはこの俺なんだぜ。どこまで平和なんだよ、この迷探偵………)
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