春の遠足
「あっるっこぉ〜、あっるっこぉ〜♪」
――ほんっとにどうしよぅ。
楽しげな歌が、バスのエンジン音に負けず響いている。
酔わないよう、あまりはしゃぎすぎないでねー……と言えるほど、私は元気で無い。
車酔いにやられた、第一被害者。時たまウップと呻く私に、運転手さんも横目で困り果てている。
すみません。心の中で謝る。言葉には、今は出せない。
それにしても、なぜあっるっこぉなのだろうか。歩いてないじゃん。バスに乗ってるじゃん。まさかとは思うが、バス内を歩き回っているのだろうか。まさか、それはないだろうさすがに。
さすがに……どたどたと足音がいっぱい聞こえるけど、さすがにそれは、ねぇ。
振り返ってみようか。
しかし、躊躇う。車酔いになってしまった今、揺れひとつひとつに私は敏感である。全霊を傾けなければ押さえ込めぬほどの吐き気が、波のごとく寄せてはかえし、寄せてはかえす。その最中で意識を別に向けるということは、死に値する。
だが私は先生。指導しなければならないこともある。背中の後ろで行われていることがもし叱るべき対象であれば、どうにかしなければならない。
少なくとも、このままどうもしないのは駄目だろう。やるかやられるか――いや、やるかやらないか。
ヤ・ラ・ナ・イ・カ☆
うほっ、良い男!
……ニィ〜コニコどぉうがッ。
がたん
「ぐふぅ!」
「だ、大丈夫です?」
運転手さんに心配され、ヘッこのくらい平気だぜべいべーと片手を上げる。おげぇー、マジ吐きそう。
「ま、マスター。あとどれくらいで着くんだい……?」
「マスターというのが誰かわかりませんが、もし私と仮定していいのでしたら――十分フラットは、そこそこに」
無理かもしれない。すみません、お母様。私の人生、ここで終わりです。
というような顔をしていたら、ちょっとさすがにそれは危機感持ちすぎだろまあわかるけどさっという風に運転手さんに見られた。
確かに、不安がりすぎるのもよくない。集中して対処すればどうにかなる、そう思っていたほうがいろいろと良い。
「あっるっこぉ〜、あっるっこぉ〜♪」
――ほんっとにどうしよぅ。
楽しげな歌が、バスのエンジン音に負けず響いている。
酔わないよう、あまりはしゃぎすぎないでねー……と言えるほど、私は元気でn |