もやす
灰皿の上で燃える写真を見つめながら、私は不意にでる溜息をむりやり喉の奧に引っ込めた。
原型をほとんど留めていないそれは、黒い塊になって、じっと私に訴えかけている様で。
完全に火が消えて、うんともすんとも言わなくなったその上に、ジッポで火を点けた写真を置いた。
燃えるそれは煙を吐き出しながら、冬の鉛色の空に舞い上がっていった。
私の隣に移る人が焼けていく。
「はぁ」
私はそれを目に、今度は飲み込めなかった。
写真を全部燃やし終えたので、他に燃やすものを探しに部屋の中に入った。
がらんとなった部屋を見渡す。
目を瞑っても、耳を覆っても、様々とよみがえる映像と矯正が、狂おしいほどに笑いかけてくる。
この部屋は彼の匂いでいっぱいだ。
お揃いのマグカップに手をかけて、その手をはたと止める。
彼と出会ったのは去年の秋。電車に置き忘れたケータイをその彼が届けてくれたことが切っ掛けだった。それからしばしばお互い会うようになり、気がつけば同棲していた。
結婚しよう、って言ってたのに、あなたはどうして私を捨てたの?
思い出して、流れた涙を急いで拭った。
好きだった。世界中で彼が一番大切だった。なのに。
彼は他の女を選んだのだ。
何故?どうして?私を嫌いになったの?
一月飽きずに自問を繰り返して、漸く立ち直れたのだ。
だから、私は彼との思いでの品を焼くんだ。
マグカップを手に取って、燃やす品袋に放り込む。
歯ブラシ。布団。衣服。アドレス。
彼の全てを全部燃やしていったら、そのうち私はこの部屋を赤に染めないといけなくて、その光景はあまりにも滑稽で、思わず笑みがこぼれた。
私は部屋の鍵を掴んで、管理人の元へとドアを開け放した。
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