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中学生編なのよ!
私は曲がった事が大嫌いなのよ!
 私は箕輪まどか。中学生の霊能者。しいて言えば、美少女である。

 ……。

 いじわる! もう何も言わない!



 この前、お騒がせ女の綾小路さやかが、私の絶対彼氏の江原耕司君と同じ中学に転校するという事件が起こった。

 私はそれほどでもなかったのだが、親友の近藤明菜が酷く動揺し、生活に支障が出てしまった。

 そこで私がひと肌脱ぎ、さやかと話をつけに行く事にした。

 すると、その機会を窺っていたかのように、私の元彼の牧野徹君が現れ、一緒に行きたいと言われた。

 え? 何でおじさん、興奮しているのよ?

 変な人ね、全く。

 話を続けるわね。

 で、牧野君と共にさやかのところに行った私だったが、何故かメインは牧野君で、彼はさやかに告白し、さやかを連れて帰ってしまった。

 要するに、「お持ち帰り」? 

 え、意味が違うんですか、まゆ子さん?

 

 そんな訳で、今日は久しぶりに明菜達とダブルデート。

 だと思っていたら、肉屋の力丸卓司君が江原ッチの妹の靖子ちゃんと共に現れ、トリプルデートになった。

 私は別に構わないのだが、リッキーの事が苦手な明菜は、ちょっとご機嫌斜め。

 でも、明菜の彼氏の美輪幸治君は靖子ちゃんと仲がいいので、明菜も表立って嫌な顔はできないのだ。

 私達は、この前行けなかったT市の「妖精の国」に行く事になった。

「あそこのお化け屋敷、日本で四番目に怖いらしいよ」

 江原ッチが嬉しそうに言う。

 四番目って、何だか微妙だ。誰が決めたのだろう?

「靖子ちゃん、お化け屋敷は勘弁してよお。俺、今度は漏らしそうだよお」

 リッキーが中に入る前からそんな事を言っている。

「わかったわよ、リッキー。じゃあ、まどかお姉さんと入るから」

「それも寂しいよお、靖子ちゃん」

 リッキーは泣きそうだ。ここぞとばかりに明菜が突っ込む。

「意気地なしね、力丸君は」

 明菜の言葉にカチンと来たのか、リッキーが奮起した。

「そこまで言われたら、引き下がれない。よし、靖子ちゃん、お化け屋敷に入ろう!」

「わーい、リッキー大好き!」

「でへへ……」

 リッキーは鼻の下が地面に着きそうなくらいデレデレしていた。

 江原ッチが私を見る。

「まどかりんはどうする?」

「もちろん、入るわ。私を一人にしないでね、江原ッチ」

 私は飛びっきりの笑顔とウィンクで言った。

「任せといて、まどかりん」

 江原ッチは爽やかな笑顔で、ポンと胸を叩いた。

「じゃあ、俺達はいつものように観覧車に行くよ」

 美輪君は本当はデレデレの明菜の手を取り、歩いて行く。

 明菜が怖がりなのは知ってるけど、美輪君はどうなのかしら?

 まあ、いいか。

 

 そして私は江原ッチに定期的に抱きつきながら、お化け屋敷を堪能した。

 リッキーは前回と同様に、ベンチで伸びていた。

「もう、リッキー、しっかりしてよ。情けないわね」

 靖子ちゃんも呆れ気味だ。

「こ、この前より怖かったよお」

 リッキーはうわ言のように言った。

 確かに、前回入った「空の国公園」のお化け屋敷より、ビックリさせるお化けがたくさんいたので、迫力はあったかも。

「本当に怖いお化け屋敷は、誰もいないお化け屋敷だと思うな」

 江原ッチは楽しそうに言った。私もそう思う。

「そう言えば、アッキーナ達、遅いわね」

 私は観覧車の方を見た。

 すると、何故か観覧車は止まっていた。

「江原ッチ!」

「うん!」

 私と江原ッチは、観覧車の方に漂う霊の波動を感じて、走った。

「ああ、お兄ちゃん!」

 靖子ちゃんが慌てる。

「お前はそこにいろ、靖子! すぐ戻るから」

 江原ッチは靖子ちゃんにそう言った。



 観覧車の下まで行くと、明菜と美輪君が乗っているゴンドラは、一番高いところで止まっていた。

「美輪、大丈夫か?」

 江原ッチがすぐに携帯で連絡した。

「大丈夫だ。しっかし、これはお得だなあ。こんな高いところで、アッキーナと二人きりでさ」

 美輪君は余裕らしい。

「明菜は大丈夫なの、美輪君?」

 私は会話に割り込んだ。

「大丈夫。何があっても、アッキーナは俺が守るよ、まどかちゃん」

「お願いね」

 多分明菜は歯の根も合わないほど震えているのだろう。

 そんな波動が伝わって来る。

 私は江原ッチと目配せして、周囲を探った。

 そこへ遊園地の作業員さん達がやって来て、機械を調べ始めた。

「どこも異常はないのに、どうして止まってしまったんだ?」

 皆首を傾げている。

「いたよ、まどかりん。美輪達のゴンドラの隣」

 江原ッチが指差した。

 そこには、二十代の女性の霊が立っていた。

 って言うより、浮いているのね。

「何をしたいのかしら?」

 私にはその女性の霊の考えがわからない。

 気を集中させ、その人の事を探る。

 その人は、この観覧車から転落して死んだ人だ。

 その際、警察は事故で捜査を終えたが、真相は違う。

 女性と一緒に観覧車に乗った男が、女性を突き落としたのだ。

 その男は、他に付き合っている女性がいて、その女性が妊娠したため、彼女と別れようとしていた。

 しかし、別れ話に応じない彼女を邪魔に思い、やり直しのデートと偽ってここに来た。

 そして観覧車に乗り、彼女を突き落としたのだ。

 何と、その時の鑑識課の中に、私のエロ兄貴もいた。

 でも、霊関係の事件ではないため、私は呼ばれなかったのだ。

 どうしてそんな簡単に事故で処理されてしまったの?

「まどかりん……」

 江原ッチが驚いて私を見た。私も驚いた。

 男の父親が県警の上層部の人間だったのだ。

 それで、捜査は申し訳程度で終わり、事故で処理された。

「バカ兄貴!」

 下っ端の兄貴に毒づいても仕方ないのだが、私は腹が立った。

 その時、女性の霊が私達のそばに降りて来た。

「……」

 私はあまりに決まりが悪くて、彼女をまともに見る事ができなかった。

『箕輪まどかさんね?』

 女性の霊が言った。私は何とか彼女を見て、

「はい。ごめんなさい。警察の関係者として、お詫びします」

『いいのよ。それより、事件の方、真犯人を……』

 彼女は悲しそうに言いかけ、口を噤んだ。

「もちろんです。絶対に許しません。任せて下さい」

 江原ッチが言った。カッコいい、江原ッチ。

 でも、ちょっとだけ気になるのは、女性の霊が凄く美人な事。

『ありがとう』

 女性の霊はスーッと消えてしまった。

 同時に観覧車が動き出した。

「良かった」

 私と江原ッチは顔を見合わせ、微笑み合った。

 

 しばらくして明菜達も下に降りて来た。

 明菜は相変わらず強がっていたが、膝が完全に笑っており、美輪君に支えられて、遊園地内の医務室に連れて行かれた。

 私は兄貴に連絡し、事情を説明した。そして、あの女性が消える間際に残してくれたメッセージも。

「鑑識の人が見落とした証拠があるわ。ゴンドラの屋根の上にね」

 彼女は突き落とされた時、咄嗟に男の服のボタンを掴み、それを隣のゴンドラの屋根の上に落としたのだ。

 風雨に晒されながらも、それがそこに残っていたのは、まさしくあの女性の霊の執念だろう。

 さすがに誤魔化し切れないと思ったのか、それとも事件の真相は霊能者が彼女自身から聞き出したと鑑識課長が脅かしてくれたからなのか、犯人の男はあっさりと自白したそうだ。

 当然の事だが、そいつの父親は県警を懲戒免職になり、関係者がたくさん処分された。

 どうよ。私はいい事をしたと、満足感でいっぱいだった。

 しかし、一つ困った事があった。

「お前のせいで、俺も怒られたぞ、かまど!」

 エロ兄貴にまで処分が下されたのだ。

 そのせいで私は、今回の活躍のご褒美がもらえなかった。

 

 何となく納得がいかないまどかだった。
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