表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/17

6話:ハローワーク

 お菓子とは不思議な味だと、ミアは思う。

 ミアにとって甘い物とは、『取れたての野菜はみずみずしくて甘い』とか『ご飯は良く噛むとだんだん甘くなってくる』といったもの。

 それらは、すっきりとした甘さだ。

 比べてみてお菓子の甘さは、濃厚で後を引く。

 それが悪いわけではない。素直においしいと思う。

 だんだん顔がゆるんでくる、幸せの味だとミアは思った。


 ――――初めての甘いお菓子を、ミアはゆっくり・じっくり味わって食べた。

 そして、その光景を、部屋中の男たちが、涙ぐんで見守る。

 酒場には、いつもの喧騒(けんそう)と違った、微妙な空気が流れた。





「おばあさん。先ほどは、ありがとうございました」

 ミアが至福(しふく)の時間を味わっていると、さきほど助けたおぼっちゃんが、声を掛けてきた。

 おぼっちゃんは『僕の事はカリスと呼んでください』と名乗ると、ミアの許可を取り、向かい席に座る。

 カリスの髪は、男性にしては長めの濃い金髪。瞳は海のように青い。

 年齢は、呪いをかけられる前のミアと同じ、18歳ぐらいだろうか。

 話す言葉は礼儀正しい。背筋が伸びていて、気品(きひん)がある。素晴らしい美男子だ。

 着ている服も、色は地味だが良質の布地。仕立ても良く、さりげないところに細かいアクセントが(ほどこ)されている。 

 あきらかに、育ちの良いぼんぼん。ここ下町の酒場では浮いている。


「別にたいしたことではないよ」

「いいえ。めったにできることではありません。あの男のイカサマに、僕は全く気付きませんでした。

 そしてイカサマを暴いた後の行動も、素晴らしかった。

 おかげでお金が戻ってきたのだし、僕にも何か、お礼をさせて下さい」

「お金はイカサマで取られたもの、もともとおぬしの物じゃ。

 わしが好きで勝手にやったこと。礼など必要ないわ」

「いえ、お金のこともありますが、なにより、もっと大事なことを教わりました。『賭け事は負けても笑えるように』

 ・・・・僕はむきになって、自分を見失っていた。お恥ずかしいです」


 カリスはうつむき、ほほを染めている。その姿は、女のミアが思わず守ってあげたいと思うくらい、かわいい。

 いいのだろうか、男がこんなに可憐で。呪われる前の自分と比べて、女としてミアは負けている。


「しかし礼をすると、言われてものぅ・・・・」


 今ミアの目の前には、大量の食物(たべもの)がある。

 ・頼んだ夕食(メグの好意で、すべて大盛りに変更されていた)

 ・おごってもらった甘い物(店のメニューのデザート全種類)

 ・1品料理の数々(なぜか男たちが『ばあさんこれ食え!うまいぞ』と言って置いていく)

 せっかくの好意をムダにしたくないのだが、胃袋はすでに限界だ。


「別に、食べ物以外でも良いです。何か僕にできる事はありませんか?」


 熱心に勧めてくるカリスに、ミアは考える。

 カリスは間違いなく金持ちだ。・・・・これなら頼んでも大丈夫だろうか。


「それではひとつ、頼みたいことがあるんじゃが」

「ええ! 何でも言って下さい」

「仕事を、紹介してくれんか?」

「仕事、ですか?」


 お礼の内容が意外だったのだろう。カリスは不信気(ふしんげ)な顔をする。


「わしはこの街に、身寄りも知り合いもおらん。お金はいくらかあるが、そう長くは生活できん。できるだけ早く、仕事を見つけたい」

「ああ、そうでしたね・・・・ それでどのような仕事を、お探しですか?」

「老人なので体力はないが、掃除・洗濯・子守りは得意じゃ。料理もお菓子は作れぬが、ひととおりできるぞ。」


 シャイランの孤児院で、家事はやっていた。荒んだ国なので孤児も多い。

 大量にある家事の合間(あいま)に、弟妹(ていまい)の相手もしていたので、育児もできる。


「できれば、家もないから住み込みが良い。賃金は安くても良いから、どこかないかのぅ?」

「あります!」


 条件を述べるミアに対して、カリスの返事は速かった。即答だ。


「実は今、友人が家政婦を探しています。あなたならピッタリです!」




主人公はすばらしく男前な性格です。

なので女らしさでは、男にも負けます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ