8話:面接2
どうやら自分は、家政婦でなく、子守りに来たらしい。
頭の痛い話だが、仕事が子守りなら、やることは決まっている。
礼儀のなっていない子供には、しつけが必要だ。
「おい、坊や」
「誰が坊やだ! 俺はもう、13歳だぞ!」
「初対面の女性に『ババア』などと呼びかける子供は、坊やで十分じゃ」
「っっっ! おまえなんか雇わん! とっとと帰れ!」
「ほう? 自分の礼儀知らずも省みず、人物の能力もみないで、クビにするのか。器の小さい男じゃ。おぬし、本当に魔法王国と名高いザンティアの、魔法士団長なのか?」
「あたりまえだろう! 俺の実力は国一番だ!」
「おぬしの力量の問題ではない。人間性を言うておる。トップの人間が権力を笠に着て、道理の通らぬことをする。手本とならねばならぬ上司がこれでは、下の者はついてこぬぞ?」
少年は反論したいのだが、ミアの正論に対して、何も言えない。
顔を真っ赤に染め、歯ぎしりをして怒っているが、その顔は全く怖くない。むしろ可愛い。
ついつい、もっといじめたくなってしまう。
ミアは思わず、笑みがこぼれそうになった。何とか我慢して、しかめつらをする。
「自分が悪いと認めたなら、何か言うことがあるじゃろう?」
「・・・・・・・・悪かった」
「良くできました」
ミアはにっこり笑って、うつむく少年の頭をなでた。少しはねている銀髪は、堅そうに見えたがサラサラで、さわっていて気持ちが良い。キャンキャン吠える、子犬をなでている気分だ。
「っっっ!!! 頭をなでるな! おれはでっかくなるんだ! 背だってすぐに伸びるっ!」
「そんな事は、分かっておる。」
「適当なことを言うなーーーーーー!!!」
肯定したのに、少年はまた怒り出す。
ミアは、大きくため息をついた。どうしたものか、このお子様は。
「坊や、ちょっと手を出せ」
「坊や言うな!」
「いいから出せ。話が進まぬだろう。少しは年寄りの話を聞かんか。・・・・カリス、おぬしも手のひらを出してくれ」
ミアは、怒り続ける少年の手を無理やりひっぱり、カリスの手の平と合わせた。
「あれ? 僕のほうが小さいね」
「人間は、手足から成長するんじゃ。だから今は小さくとも、おぬしはいずれ、カリスよりもでかくなる」
ミアの発言を聞いて、騒ぎまくっていた少年は、ピタリと止まった。
「・・・ほんとか?」
「ほんとじゃ」
「ほんとの、ほんとか?」
「ほんとの、ほんとじゃ」
「ほんとの、ほんとで、マジか?」
「ほんとの、ほんとで、マジじゃ。・・・・しつこいぞ」
「よっしゃーーーーーーーー!!!!」
いきなり少年は、カリスと合わせたままの手を握り、そのままバンザイをした。その顔は満面の笑みだ。
つられて右手を上げたカリスも、「良かったですねぇ」とニコニコ笑う。
「わっはっは。ざまあみやがれ、クソじじいども! 毎回会う度に、俺の頭をなでまわしやがって! すぐにでかくなって、おまえらの頭、なでなでしてやるからなっ!」
なぜか外に向かって、堂々と宣言する少年に、その成長が何時になるか分からないことは、黙っておいた。
子供は元気です。
そして思いどおりには、動いてくれません。
おかげで、今だに名前が出せない・・・