風の主ウィザー −そして消え逝く神−(9/9)縦書き表示RDF


――愛していたからこそ膨らむ憎しみ
  すれ違おうとする二人の心

  そして彼が守りぬいたモノは――

風の主ウィザー −そして消え逝く神−
作:宴流なだみ



第四夜 涙の微笑み part1


「グレシャ? 一体どういう……」

 寒気が走った。背中がゾクゾクとふるえ、危険だと伝えている。
 こんな感情をグレシャに対し思ったのは初めてだ。

 ――来 る な

 グレシャがグレシャでなく、黒い影のように見えた。
 グレシャのはずなのに、いつもと違う、黒い光りを放っている。

「グレシャ、お前どうした? ……あの女に何を吹き込まれた?」

 グレシャは悲しげに目を瞑ると首を振った。
 そして一歩前に出る。
 頭上で、大地がゆれるような雷鳴が響いた。

「だって、だってそうじゃなきゃおかしい! お前が、俺を、殺す、なんて……」

 そこで俺は、頭の中が真っ白になり、あの声がはっきりと浮かんできた。
 ――グレシャは、死んだわ……貴方の知っているグレシャは居ない
   いま居るのは、貴方の知らないグレシャ。……新しい彼女が誕生したのよ!――

 足が動かなかった。
 逃げなきゃいけない、死にたくない。
 なのに、足がすくんで動けない。
 俺はここで死ぬのか? 馬鹿みたいに突っ立って? ――グレシャに?

「俺は、死に、たく、ない」
 
 訴えるような声で、暗いグレシャに。
 するとグレシャは、俺に指を向けるとつぶやいた。

「私も……」

 その一瞬だけ、いつもの明るいグレシャの面影が出る。
 ただ、その目は笑っているのか、泣いているのか分からない。
 分かるのは、グレシャは俺を殺したいとは思っていないということ……。
 
「じゃあ、どうし...?」

 突然右側に痺れが通った。
 静電気程度のものでなく、もっと鋭く痛々しい痺れ。
 俺は、唸ると同時に右腕を抱えた。
 どうしてこんなに急に? さっきの頭痛の残りか?

「お兄ちゃん、どうしたの?」

 ウァータルが心配そうに駆け寄ると、俺の右腕を摩る。
 ウァータルの手は、冷たく汗ばみ、震えていた。
 俺は、未だにびりびり痺れる右手でウァータルの手を握る。
 そして微笑んだ。

 ――大丈夫だ。お前は、俺が守るからな。

 声には出さず、目だけでそう語った。
 そして、さっとグレシャに目を移す。

「なんで、お前は、俺を殺すんだ?」

 グレシャが悲しげな表情を見せた。
 何も言いたくない。何も言わせないで、と言っているようだった。
 しかし、俺はまだ迫る。

「グレシャ……!」

 数秒間空気が張り詰めた。
 空では雷が激しく唸っている。
 グレシャは、重い辛そうなため息をすると、首を振った。

「違う。私は貴方を殺さなきゃ…生きれないの……」














ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(3) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP


小説家になろう