中原 正悟はかっこいい
小中高とずっと私と同じクラスにいる、中原 正悟はかっこいい。
癖のない黒髪に、アーモンド型の瞳。細過ぎず太過ぎずのベストな体系に、明るく活発なジャニ系の彼は、クラスの人気者なだけでなく、母親層からも人気が高い。
そう、正悟はかっこいい。
そんな正悟と私はいわゆる腐れ縁という奴で、そのせいか正悟君は私だけいつも邪険にする。
「あの、正悟先輩、これ受け取って下さい!!」
と、朝早くに、恥ずかしそうにしつつクッキーを差し出す後輩に、正悟は嬉しそうに笑う。
「サンキュ! めっちゃ旨そう!!」
そう言って八重歯を光らせる彼に、クッキーの差し入れをした少女は卒倒しそうな位頬が赤い。大丈夫だろうか。と思いつつ、私も昨日母親と一緒に作ったマドレーヌを彼に差し出す。
「正悟~。これあげる」
すると、彼はさっきとは打って変わって私を睨みつけた。
「はぁ? いっつもいっつも俺ばっかりに差し入れ持ってくんな!!」
「……ごめん」
その言葉には苦笑いしか生まれない。
事実私は1ヶ月に2、3回は彼にこうやってお菓子をあげている。しかも、男子には正悟にしかあげていない。
「う~ん、じゃあ、いらない?」
「要らねぇよ!
……要らねぇけど、俺の机の上にでも置いてけば。しょうがないから、食べてやる」
と、正悟はそっぽを向きながら呟いた。
毎回毎回お菓子を持ってきて悪いとは思ってはいるが、彼も大概優しいので最後には受け取ってくれる。
「うん、じゃあ置いとくね。あ、前に持ってきたトリュフどうだった? 感想聞かせてくれると嬉しいんだけど」
「別に上手くなかったし!!」
「そっかぁ。じゃあこれからはトリュフ作らないようにするね」
「……ま、まぁ、作っちまったって言うんだったら、喰ってやらん事も、ないけど。別にお前の為とかじゃねぇからな!」
「はいはい」
怒った顔でこちらを見つめる彼に相槌を打ちつつ、私は彼の机にマドレーヌを置いて彼から離れた。
すると、友達の理彩ちゃんが私に近寄る。
「舞花も頑張るねぇ~。疲れない? 正悟へのお菓子づくり」
「好きだから」
「……そこまで来ると泣けてくるわ」
「なんで?」
言われている意味がよく分からない。首を傾げていると、理彩ちゃんが苦虫を噛み潰したような顔をしてから私に手の平を見せてきた。
「で? 私には?」
「勿論あるよ。はいマドレーヌ」
ラッピングしたそれを手渡すと、理彩ちゃんはその場で開けてマドレーヌに口を付けた。
「ん~、相変わらず美味しいねぇ~」
「そうかな? まぁ、お母さんが張り切って作ったからね。『正悟君が食べるものなんだから~』って」
「期待されてるね。あんな事言われてるってのに……。まぁただのツンデレなんだけどさ」
「でも、最終的には受け取ってくれるじゃん。正悟って、優しいよね。それにかっこいいし」
「あ~はいはい。ノロケは他でやってよ」
「ノロケなんかじゃ……「舞花!!」」
理彩ちゃんの言葉を訂正しようとしたら、正悟が話に割って入ってきた。
ちょっとびっくりしつつ、『どうしたの?』と聞くと、彼は顔を赤くしつつちょっと怒ったような声で、
「顔、貸せ」
と言ってきた。一体どうしたんだろうと首を傾げる前に、彼に右手を掴まれ、そのまま教室を出てしまう。
彼に連れられて付いたのは、使われていない空き教室だった。
「どうしたの正悟。もうすぐ授業始まるよ?」
「……ぁ、あの、さ」
熱があるんじゃないかと心配になる位顔を赤くさせた正悟は口ごもる。一体どうしたんだろうか。
「正悟?」
「ぉ、お前さ、いっつも俺にだけ菓子作ってくんじゃん」
「うん」
「お前、俺の事、たまにか、かっこいい、とか、優しいとか……」
「うん。だって正悟ってなんだかんだ言いつつお菓子食べてくれるし。優しいし、かっこいいと思うよ?」
一体何の話なんだろうと首を傾げると、意を決したのか正悟がまた口を開く。
「ぉ、お前、俺の事好きなんだろ!! しょ、しょうがねぇから、お前と、付き合ってやるよ!!」
「え……。好きじゃないよ?」
二人の間に、間が出来た。
「…………は?」
正悟君が小さく聞き返した。
「私、正悟君の事かっこいいと思うけど、好きじゃないよ?」
「……だって、いつも、菓子とか……」
「ああ、あれは正悟君のファンのお母さんが渡してって」
あれ、私一度でも正悟君の事好きなんて言ったっけなぁ? と考えている内に、正悟の瞳から光が失われた。
これぞ鈍感系女子?
毎回男子には自分だけお菓子を作ってくれるから、彼女は自分の事が好きなんだって勘違いしちゃった正悟君。
作者は思わせぶりな行動を取る舞花ちゃんがとても残酷だと思いました。
まぁ、舞花ちゃんのお母さんが正悟君にあげてといいつつ正悟君が勘違いしてお婿さんに来てくれればなと画策した結果なんだけどね!
短くてすみません。お読み頂きありがとうございます!