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三兄弟の事件簿~この恋はミステリー~ 作者:愛田美月
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第四十章 新たな発見

 私市は穴の中に横たわる倉橋の首筋に手を当てて、脈がないことを確かめた。
 頭部が一部陥没している。それほど強い力で殴られたのだろう。
 倉橋の身体の下にもスコップがあった。このスコップを使って、彼は穴を掘っていたのだろうか。
 だが、何のために?
 私市が考えていると、右後方から不意に声が聞こえてきた。
「このスコップが、凶器でしょうね」
「向こうで待っていろと言わなかったかな?」
 私市は軽く振り返って尋ねた。
「ええ、言われていましたね」
 そうあっさり答えたのは、眼鏡をかけた少年。少しも悪いとは思っていなさそうな涼しい表情で、墓標のように地面にさしてあるスコップを見つめていた。
「血と髪の毛が付着しているし、少しへこんでいます」
 懐中電灯でスコップを照らしながら、光が淡々と告げる。
「ああ」
 頷いて、私市は再度、倉橋に向き直った。
 両手を合わせて目を伏せる。
 しばらくそうしてから、立ち上がった。
「一度屋敷へ戻ろう」
 そう言いながら、光の肩に手をかけ促した。



 大きな音を立てて、伊吹がソファーに座りこんだ。
 私市が遊戯室に全員を集めて、倉橋の死を告げたのだ。
「夢路だけは、殺したって死なないと思ってた……」
 顔を両手で覆った伊吹が、そんな風に言葉を漏らした。そして、やおら顔をあげると、隣を見る。
「ねぇ、秀香。俺たちはどっちだろうね」
「何?」
 意味を掴み損ねたのか、伊吹の横に座っていた秀香が眉を顰める。
「殺され方だよ。撲殺? それとも溺死? 僕はどっちも嫌だよ!」
 伊吹が頭を抱えて叫ぶ。
「どうして、その二つ何ですか?」
「え?」
「どうして、撲殺と溺死の二択なんですか」
 小さな丸テーブルの横にある椅子に、腰かけた光が尋ねた。
 伊吹は口をパクパクとさせたまま、答えられないでいる。
「たまたまよ。ねえ」
 秀香が、フォローするように言い、伊吹に同意を求めた。
「そ、そうだよ。二人がその死に方したから、次も同じなんじゃないかと思って」
 とても言い訳めいて聞こえる台詞だった。彼はきっと役者に向いていない。
「藤沢くんは見つからなかったんですか」
 この問いを発したのは、私市だ。
 答えたのは入口近くで佇む瀬戸だった。
「ええ。念のため、地下室も調べましたがいませんでした。でも……」
「え! ここ、地下室あるんですか?」
 驚きの声を上げたのは空だ。瀬戸が何か言いかけていたのをつい遮ってしまった。
 それにしても、地下へ降りる階段なんて、屋敷のどこにあるのだろう。
「ええ、ございます。地下には使用人用の部屋と、食糧庫がございます」
 今度は、茂山が答えた。
「まあ、私知りませんでしたわ」
 千鶴が声を上げた。お嬢様である千鶴には知る必要はないと、だれも彼女に告げていなかったのだろうか。
「地下室にはどうやって行くのですか?」
 興味を引かれたのか、千鶴が質問する。
「キッチンに階段がございます」
「まあ、それも知らなかったわ」
 口を押えて驚く千鶴に、茂山が頷いて見せた。
「お嬢様が知る必要のないことでございます」
「それはそうと、瀬戸さん。先ほど、何か言いかけていませんでしたか?」
 そう尋ねたのは光だ。瀬戸は、一瞬呆けたような顔つきになったあと、我に返ったように瞬きをした。
「あ、そうだ。その、地下の食糧庫ですが、昨日の昼に見た時と、何だか様子が違っていたような感じがして」
「様子が違う?」
「どんな風にですか?」
 私市と光が、交互に尋ねる。
「えっと、すみません。さっきは倉橋さんと藤沢君を探すことに夢中で、違和感を覚えただけで、なぜなのかまでは……」
 瀬戸は、申し訳なさそうに頭を掻く。
 光は立ち上がって、瀬戸に言った。
「では、瀬戸さん。食糧庫に案内していただけますか」
「あ、俺も行きたい」
 好奇心に駆られて、空が言えば、隣で海が俺もと軽く手を上げる。
 瀬戸は、茂山に目を向けた。茂山が頷いてみせると、彼は私市にも目を向ける。
 私市は、軽く肩をすくめると、空達に顔を向けた。
「何かあったら、ちゃんと逃げておいで。危ないと思ったら深追いしないこと。藤沢くんを見つけても、追いかけずに知らせに来るように」
 空達は真面目に頷いた。
 私市の言葉を、食糧庫へ少年たちを案内していいという了承と取って、瀬戸は空達を案内するべく部屋のドアを開た。



 キッチンへ向かうかと思いきや、瀬戸は、なぜか千鶴の言う後ろ側の部屋の扉の前に空達を連れてきた。
 瀬戸がドアノブに手をかけると、難なくドアは開いた。
 だが、そこには部屋がない。部屋がないというか、人ひとり分くらいの間を開けて、何かに塞がれている?
「え? 壁?」
「いや、これも扉じゃないか?」
 空の驚き声に、光が冷静に応じる。
「ああ、これ、エレベーターや!」
「海君正解。ここはエレベーターが隠されているんだ。驚いただろう」
 瀬戸の言う通り、それはエレベーターの扉だった。壁に隠れて見えなかったが、中に入ると、きちんとボタンがある。
 下へ向かうボタンを押すと、すぐにエレベーターの扉は開いた。
 四人入るといっぱいになるほどの、小さな箱だ。
「そういうことか……」
 階下へと向かうエレベーターの中、光の呟きが耳に届き、空は光を見やる。
「何の話?」
「昨日、水を持ってきてもらったろう。その時、茂山さんの後ろに大きなワゴンが見えたから、おかしいなと思ったんだ」
「ワゴンって、あれか? あの、ホテルマンが食事を運んでくる時に持ってくる、カートみたいなやつ」
 海の言葉に、光は頷く。
「ていうか、それの何がおかしいと思ったんだ?」
 空の発言に、光は眉を顰めた。
 ああ、また嫌味が来るぞと身構えたら、案の定だ。
「やっぱり空は馬鹿なのか? エレベーターがないんだぞ。あんなワゴンどうやって運んで来たのかと思うだろう」
「ああ、そういう。でも、もともと二階でしか使ってなかったのかもしれないじゃん」
「料理とか運ぶんめんどくさそうやけどな。いちいち、一階から階段上ってワゴンまで持ってって、また戻って次の料理取りに行ってとかしとったら冷めそうやし。それやったら、ワゴン使わず一個一個持ってった方がええかも」
 海の言葉に、まあ確かにと空が頷いたとき、階下に着いた。
 扉が開くと、そこは薄暗い廊下であった。
 前方は壁、少し視線を左に向けるとドアが見えた。そして、右側にも二つのドアが見て取れる。
「右側が使用人用の部屋のドア。そして、左側にあるのが食糧庫へ続くドアだよ」
 言いながら、瀬戸は左側のドアへ向かうとドアノブに手をかけた。
 少し軋んだ音を立てて、ドアがゆっくりと開く。空達は瀬戸の後ろに続いて、食糧庫に入った。瀬戸が電気を付けると室内の様子がよく分かった。
 中は広く、少しひんやりとしていた。
 床は石畳風のコンクリートのようだ。
 真ん中辺りに、小さな赤いマットも敷いてある。だが、綺麗に敷かれてはおらず、少し波打っていた。
 壁には作り付けの棚があり、そこに缶詰や、米袋、日用品、調味料なども置いてある。
 四人で部屋を見回していると、瀬戸が不意に声を上げた。
「あっ、分かった」
「違和感の正体ですか?」
 空が尋ねると、瀬戸は頷いた。
「ああ、これ、この段ボールだよ」
 右の棚、下から二番目に置かれた段ボールを瀬戸は引っ張り下ろした。その下の棚にも二つ段ボール箱がある。
 蓋を開けると、中には袋が入っていた。口を縛るタイプの袋を開けると、中にはジャガイモが入っていた。そして、他二つの段ボールの中身も人参や、玉ねぎなどの野菜だ。
「昨日の朝には、こんな所に野菜置いていなかったはずなんだよな」
 そう言って首を捻る瀬戸に、光が問いかける。
「では、ここには何が?」
「えっと、確か……あっ」
「何ですか?」
 今度は空が尋ねた。
「ワインだ。ワインのボトルが置いてあった」
「そのワインって……」
「食堂に撒かれたワイン?」
 空と海が顔を見合わせて声を上げる。
「瀬戸さん、この野菜はどこにあったものなんですか」
 光の問いに、瀬戸は立ち上がって、部屋の中央、マットの敷かれた場所へやってきた。
「このマットの下にある、床下収納庫にあったはずだ」
 瀬戸がマットを持ち上げると、確かに戸がある。収納庫の扉だろう。だが、少し、浮いている。よく見ると、木片を噛んでいるため、きっちりと締まっていなかったようだ。
「なんで、開いてるんだ」
 そう言いながら、瀬戸は少し浮いた扉に手をかけ開く。
 そして、悲鳴を上げた。
 空達も、中を覗いて、絶句する。
「海、空と一緒に私市さん呼んできてくれ、それと……」
 光が二つ指示を終えると、二人は部屋を出て行く。彼らの足音を聞きながら、もう一度床下収納庫の中に目を向けた。そして、ゆっくりと、その中に手を伸ばした。
ここまでご覧いただき、ありがとうございます。

またまた、大変お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。
少しでもお楽しみいただけていたら、幸いです。

今月は、長期休暇が取れたため、一人旅へ行ってまいりました。
どこかの温泉へ~というわけではなく、東京へ。

一人で二泊三日してきました。いや~歩いた歩いた(笑)
東京ってやっぱり人多いですよね~。そんでみんな歩くのが遅い(笑)
いや、関西人がせっかちなだけなのかな? エスカレーターの歩かない人と歩く人の左右が逆だったりするのもやっぱり新鮮でした♪

前回、空と海が「シャベルや」「いや、スコップだろ」みたいな会話をしていますが、あれも、関東と関西で真逆なんだと聞いたことがあります。私は、大きい方をシャベル。小さい方をスコップと呼びますが関東は大きい方がスコップで、小さい方がシャベルなんですよね? あれ、間違ってたらどうしよう。ま、てことで、三兄弟がいるのは関東なので、関東表記にさせていただいております。関西の方は違和感があるかと思いますが、とりあえず今回はこういう理由でこの表記にさせていただいておりますので、ご容赦の程をお願いいたします。

ま、そんな感じでですね、三兄弟もだいぶん後半へ入ってまいりました。
回収忘れてる伏線とかあったらどうしようと思いつつ、後半戦も頑張ってまいりますので、あと少し、お付き合いいただければ幸いです。次回更新がいつになるか分からず申し訳ないのですが……。

それではまた、お会いできることを願って。
愛田美月でした。
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