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三兄弟の事件簿~この恋はミステリー~ 作者:愛田美月
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第二十八章 別れた参加者たち

 考えすぎて、何が何だか分からなくなり、挙句の果てには自作の緑のシックスティーフォーという歌まで口ずさんでいた。
 なのに何も浮かばない。
 ここで考え続けていても仕方がない。
 千鶴先輩のミッションも砂浜で行うものだったので、これ幸いと一緒についていくことにした。
 歩いているうちに何か思いつくかもしれないし、砂浜には光もいる。どうしても分からなければ、ヒントをもらおう。などとも考えていた。まず、光が分からないということはないだろう。

 結構急な坂道を下ると、小さな砂浜があった。船着き場のあった場所とは別だ。満潮の時などは、海に沈んでしまうのではないかと思う程の小さな砂浜だ。
 千鶴と海の後に砂浜に降り立った空は、光の背を見つけて声をかけた。
「おーい。光、何やってんの?」
 彼は、しゃがみこんだまま空の声に振り返る。まぶしかったのか、眼鏡の奥の瞳を細めた。
「見れば分かるだろ」
 明らかに不機嫌な声だ。
 空は海たちとともに光に近づいた。
 近づくにつれて、光の背に隠れて見えなかった物が視界に入る。
「山?」
 砂山を作っているようだった。光でも砂遊びなんてするのか。と意外な思いで目を見開くと、光はさらに不機嫌な声を出した。
「言っておくけど、ミッションだからな。それから、これは城になる予定だ」
「あー。そう」
 光が砂遊びってなんか、似合わない。思わず笑いそうになって、返事が短くなってしまった。
「何だ? 笑いたかったら笑えよ」
 と、光が自棄になったように言うので、遠慮なく笑ってやってもよかったが、ヒントをもらいたいのにさらに不機嫌にさせても困ると自制した。
 見ていると笑いそうになるので、顔を背けると光はふんっと鼻をならした。
「なあ、私市さんは? 一緒やったんちゃうん」
 海が辺りをきょろきょろと見回す。
 光が口を開いて、何か言いかけたがその声は言葉にならなかった。
「うひゃあ」
 いきなり海が声をあげたからだ。なぜ海が変な声を上げたのか。一部始終を見ていた空は苦笑を隠せない。
「あっ、私市さん。びっくりした」
 海は声を上げてすぐ後ろを振り返り、背後に立っていた私市に文句を言う。
 私市を捜してきょろきょろしていた海に、私市は背後からゆっくり近づいてきた。そして、唇に立てた人差し指を当て、皆を黙らせてから、海の背中をその人差し指で、撫で上げたのである。
「虫が背中走ったんかと思って、サブいぼたったわ」
 海は両腕を抱いて、私市に抗議した。
 私市は笑って、それをかわしている。
 この中で、もしかしてこの人が一番子どもなのかも。と思わずにはいられない空であった。



 一方、他の参加者はまだ庭に設置された席に残っていた。
 秀香は、険しい表情で手元の紙を睨んでいる。
 このミッションを見た瞬間、嫌な予感がした。もしかして、何か知っているのかと疑うしかないような内容だったからだ。
「おい、秀香」
 横合いから、男の低い声が聞こえた。
 秀香は顔を上げ、傍らに立つ男を睨んだ。
「ちょっと、こんなところで名前を呼ばないで」
 秀香の抗議は、相手にされなかった。
「そんなことより、このミッションなんだよ」
 男が差し出した紙を見て、秀香の顔が青ざめた。
「何なのこれ」
 男の紙にはこう書かれていた。

『ミッション
 山に入って大きな穴を掘り、中に人形を埋めろ』

 嫌な光景が秀香の脳裏によみがえった。
 震える身体を両腕で抱きしめて、秀香は男を見上げた。
「お前の親父、知ってるんじゃないだろうな。二十年前のこと」
 それは、秀香も感じていたことだった。秀香は持っていた紙を握りつぶした。この男にミッションの内容を見られたくないととっさに思ってしまった。
 男の疑惑が確信に近づくことを恐れたから。
 秀香はせわしなく目を動かしながら、ゆっくりと口を開いた。
「そんな訳……、そんな訳、無いじゃないの。ありえないわ。とりあえず、ミッションを遂行しましょう。やらないと変に思われるわ」
 男は舌打ちした。
「なんで、こんな面倒なこと言い出しやがったんだお前の親父は。お前がここ相続するっていうから、安心してたんだぞ。俺ら」
 秀香は目を伏せた。
「あの人が、気まぐれをおこすことなんて、いつものことよ」
 秀香の様子を見て、もう一度舌打ちすると、男は受付へ向かって歩き出した。
 秀香はしばらくその背を見つめたあと、握りつぶしてしまった紙をそっと開いた。

『ミッション
書斎にある金庫から、金を盗め。』

 秀香は、もう一度その紙を握りつぶした。それをスカートのポケットへ押し込むと館へ向かってゆっくりと歩き出した。
 ミッションを遂行するためではない。
 このミッションを書いたであろう父に、会いに行くために。
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