第7話 秘密、質問
「えっと・・・」
人の家の冷蔵庫を探るのは少々気が引けたが、別に悪いことはしていないのだ。さっさと見つけてさっさと帰ろう・・・哀はそう考えていた。
確か博士は・・・昨日から学会に行っていて、家にはいないんだっけ。
でも10時ごろには帰ってくるだろう。
新一の家に一晩いたなんてことがバレたら、新一はどんな目にあうだろうか・・・
考えながら少し哀れみ、そして新一のためにもばれないうちに帰ろう、と強く決心した。
冷蔵庫の中の昨日買った食材たちを全部取り除くと、お気に入りのエコバッグに詰め込み、振り向いた。
すると後ろに、制服姿の眠そうな快斗が立っていた。
「おはよう、哀ちゃん」
「・・・おはよう。黒羽君」
私帰らないといけないから・・・と、快斗をスルーしようとしたが、快斗に腕を掴まれた。
少し驚いて掴まれた腕を見ると、「何?」と目で訴える。
少し言うのをためらっていた快斗だが、決心したように話し始めた。
「・・・哀ちゃんさぁ、工藤とは・・・どういう関係?」
「え・・・」
訊かれたことが理解できなかった。
頭が混乱する。
「どういうって・・・ただのお隣さんよ・・・?」そう言いたかったのに、固く閉ざした唇は、動きはしなかった。
「なんかさ・・・特別って感じがするんだけど?・・・ただのお隣さんじゃないよね・・・・・?」
声は優しいが、快斗の発する言葉一つ一つに、秘めた思いが感じられた。
「・・・・・」
答えられない。
なぜだろう。自分の中にいるもう一人の自分が、快斗の質問を否定したがらなかった。
「・・・・・・・・な、何いってんのよ。ただのお隣さんよ」
「そんなに間を開けられると、信用できなくなる」
まっすぐ見つめてくる快斗に迫力負けしそうだった。
でも、自分がここで折れたら・・・工藤新一の秘密だって外部に漏れてしまうだろう。
現在、APTXの薬で工藤新一と宮野志保が幼児化したことや、あの、巨大組織にかかわったことは、世間に知られていない。
いや、知られてはいけないのだ。
知られたらきっと、世界中が薬に注目し、悪用することも考えられるからだ。
よって、それを知っているのはFBI、目暮警部や白鳥警部、佐藤刑事、高木刑事・・・警視庁の幹部の人々だ。
目暮警部、白鳥警部、佐藤刑事、高木刑事にも話したのは、警視庁の中で最も信頼できる人々であったからだ。
・・・それから・・・蘭には話していない。
それを知ったら蘭はどれだけショックを受けるだろう。新一に裏切られたと思うかも知れない。哀は、それだけは、どうしても避けたかった。
毛利夫妻にも話していない。
とにかく・・・
こんな、普通の高校生に事情を話すことなんて、できない。
「・・・はなして」
哀が呟くと、手はするりと離れた。
「・・・ただの、お隣さんよ。妹みたいに可愛がってくれてるだけ・・・・・」
上目遣いで快斗を見ると、無表情だった。
「・・・わかった。悪かったね、掴んだりして」
こんなに強くつかんだのに・・・あっさりと引き下がった快斗に少し不信感を抱きつつも、哀は工藤邸を後にした。
掴まれた手首がまだ、ジンジンと熱を持っている。
その一部始終を、新一が隠れてみ見ていたことに・・・2人は気づかなかった・・・
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