第5話 お隣さん
さっきの巻髪の女・・・くせぇ・・・!!!
外靴を履いて校庭に出ると、さっき鼻に突き刺さった香水の匂いに悩みながら、新一の姿を確認した。
あ・・・いたいた工藤・・・
両手を広げて、校庭のサッカー軍団のなかに乱入した。
「お〜い!工藤!」
「・・・黒羽・・」
校舎の窓からは、「お、噂のツーショットだ!」と顔をのぞかせるたくさんの生徒。
生徒を横目で見ながら新一は訊いた。
「なんだよ、黒羽」
「ああ、工藤。俺、お前のこと他人だと思えなくてさ」
頭をポリポリ掻きながらはにかんだ様に言う。
・・・俺に興味があるだけのくせに・・・
内心そう思うも、うなづく新一。
「ね。友達になろう」
新一に差し出された手。
新一は黙ってその手を握った。快斗も握り返すと、笑いかけてきた。
「まあ、用はそれだけ。じゃーね」
バイバイと手を振り去っていく。
・・・宣戦布告か???
新一の頭の中は“?”だらけ。
「あ、そうだ」
振り向いた快斗の顔は、無邪気。
「今日、放課後空いてる?」
「ああ」
「ちょっと用があんだけど」
「ああ」
それだけ言ってまた微笑むと、行ってしまった。
何だあいつ・・・?
明らかに怪訝そうな顔の新一に、近くの生徒が話しかけ、サッカーがまた再開された。
・・・・・
さっき降った通り雨のせいで、空気がムシムシしていて気持ちが悪い。
「ねぇ。工藤ん家まだ〜ぁ??」
「るっせーな」
肩に手をのせてくる快斗にだるそうに言った。
「暑いんだから、くっつくな!!!」
相当イライラしているのであろう、新一は空気が通るよう、シャツをぱたぱた引っ張った。
「あ〜もう。シャツのびるよ」
「るっせぃ・・・」
ようやくついた工藤邸に入ろうとしたとき・・・
「あら、工藤くん」
哀が声をかけた。どうやら買物から帰ってきたところのようだ。
「おお!灰原!!」
「え!?なになに可愛いじゃんv」
快斗はすかさず食らいつく。
「ああ。お隣さんの、灰原哀。小2だけど甘く見んなよ・・・恐ろしいことに・・・」
「・・・工藤くん?余計なことは言わなくていいのよ??」
こめかみのあたりに青い筋を浮かばせる灰原。
両手に持ったスーパーの袋からニンジンがのぞいているので、なんだか迫力に欠けるが。
「へぇ。よろしくね。哀ちゃん」
「・・・工藤くん?親戚?」
「似すぎてるわ・・・」と付け足す灰原。
「やっぱ俺ら、親戚なんだよ〜〜〜」
嬉しそうな快斗に少し嫌気がさした新一は、奥歯を噛んだ。
「な、れ、な、れ、し、い、ん、だ!!お前は!!」
「え〜〜冷たぁい、新ちゃーん」
「や、やめろ!!気持ちワリぃ!!」
抱きついてくる快斗を払いのけると、哀もういなかった。
「あれ?哀ちゃん??」
「暑いし・・・もう家に入るわ。あなたたちは夫婦喧嘩漫才、続けてなさい」
声の主を探すと、哀はもう家に入るところだった。
「あ!そうだ!新一!」
「あん?」
「哀ちゃんも一緒に遊ぼうよ」
その言葉に哀は反応する。
「はあ!?何いってんのよ。私は、忙しいの!貴方達と遊んでるヒマなんかないのよ・・・」
暑さに弱いのか、語尾が小さくなっている哀。
そんなことお構いなしに、元気のいい快斗は哀に近づいた。
「まぁまぁ。そんなこと言わずに、ね?」
「遠慮しとくわ」
快斗は一瞬困ったような顔を見せたが、すぐに何時もの笑顔になった。
「じゃあ、強制で」
「え?」
そう言ったのと同時に、哀はフワッと浮く感じがした。
「え?ちょ・・・っと!?」
「さあ、いこうか〜」
嬉しそうに哀を担いだ快斗は、軽い足取りで工藤邸に向かった……
「………ていうか俺、おいてかれてるし。」
虚しくつぶやいたのは、新一だった…… |