第4話 工藤と黒羽
青空の下、屋上に快斗は立っていた。
高いフェンスの下に見える校庭。
フェンスに右手をかけ、寄りかかった。
校庭でボールをける男・・・工藤新一。
快斗は左手に持ったジャムパンをたいらげ、袋をポケットに突っ込んだ。
何度か・・・見たことのある彼・・・
一番衝撃的だったのは・・・
ちょうど、一年と三ヶ月くらい前。
自分が追っていた大組織の基地に乗り込んでいくFBIと、江戸川コナン・・・そして・・・
あの、茶髪の少女。
その人たちを見かけた快斗は、キッドの姿でこっそりついていった。
途中で彼らを見失っていたとき、遠くで銃声が聞こえた気がした。
侵入していたその場所はどこかの港の倉庫で、月明かりだけが頼りだった。
何度か遭遇していた江戸川コナンを、いや、あの茶髪の少女を・・・なぜだか無性に、「助けなきゃいけない」と思っていた。
無我夢中で走り回って、やっと見つけた銀髪の男。
そいつを見たとき、血が凍ったかと思うほど寒気がした。
その切れ長の冷たい目で、睨みつけられたから。
そして何より・・・
茶髪の少女を、銃で狙っていたから。
銀髪の男が俺に気を取られているほんの一瞬、FBIは銀髪の男を取り押さえた。
悔しそうな顔をして自決したその男の亡骸から、俺は目が離せなかった。
どうしても。
めぐる過去の記憶を頭の中で整理すると、深く息を吸って屋上の出口のノブに手をかけた。
・・・・・
「・・・あいつ・・」
ボールを抱え、屋上を見上げている新一。
新一は気づいていた。快斗が屋上にいたことを。
「何者だ・・・?」
小さいその声は、誰にも届くことはない。
大声で友達に呼ばれた新一は、返事をしてすぐにボールを蹴った。
・・・・・
廊下を歩くたび、周囲の人に注目される快斗。
少しウンザリしていた。
「あの〜ぉ・・・」
後ろから話しかけてきたのは、三年と思われる金髪で巻髪の女。
化粧でかなり化けている。
「工藤クンと親戚なんですか〜ぁ??」
甘ったるいその女のしゃべり方に少々イラッとしつつも、質問に答える。
「ん?違うよ。何の関係もない」
作り笑いを浮かべたが、彼女は気づいていないらしい。
「でも〜ぉ、黒羽クンさ〜・・工藤クンとならんで、リカの超タイプ〜〜」
「・・・・・・」
少し考え、ニカッと白い歯を見せると、
「俺、キミみたいのタイプじゃないし。それに、ナチュラルメイクのほうがいいな」
あっけにとられる彼女。
「じゃーね」
颯爽と走っていく彼を眺め、男には苦労しない“リカ”は、悔しそうにハンカチを食いしばったのだった。
その二人のやり取りを、たくさんの見物人に交じって、蘭も見ていた。
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