第2話 2人きり
「ハイ、コーヒー」
「おお、サンキュ」
静かにコーヒーを啜る新一。
哀はその様子を見ながら、自分も新一の向いの椅子に腰かけた。
ここは阿笠邸。博士は学会に行っていて留守。
哀と新一は二人で話していた。
「で?その黒羽って人が・・・どうかしたの?」
「あ?あぁ、そうだった」
思い出したように話し始める。
「その黒羽ってやつがよぉ・・・俺にそっくりな顔してたんだよ!!」
「・・・・・・!!」
哀はコップを落としそうになる。
振動で波打つコーヒーに、哀の驚いた表情が映る。
「ウソ・・・」
「本当だよ・・・。俺もビックリした」
そう言ってはいるものの、案外落ち着いた新一。
「世の中に自分とおんなじ顔の人間が3人はいるって言うけど・・・だとしたらアイツは絶対その中のひとりだな・・・」
新一はうんうんと頷き、しみじみ言う。
「・・・それは、さすがにびっくりね」
さすが哀だ。さっきはあんなに驚いていたが、もうすでにポーカーフェイスを取り戻している。
「それでさ・・・灰原」
「あぁ、検査の結果ね。もう出てるわよ」
ピラッ
哀の差し出した紙には、新一の解毒剤を飲んでからの検査結果が書いてあった。
「異状なし。いたって健康!」
「・・・ありがとう。灰原」
しばらくプリントを眺めていた新一が、白い歯を見せ笑った。
「私は・・・当然のことをしただけよ。こうなったのも全部、わたしの・・・」
「だ〜〜〜!!もう、それは言いっこなしだって!!」
「でも・・・」
やっぱり哀は・・・すぐに自分を責める。
そんな哀を新一が気にかけ始めたのは、何時からだったろう。
「とにかく!!ありがとう」
屈託のない笑顔を向けてくる新一に、哀は何も言えなかった・・・
夕方になり、彼が隣の家に帰る頃。
夕陽を背にして彼が訊いてきた。
「そーいや、オメーは元に戻んねーの??」
・・・元に、戻る?
私が?
元に戻ったら。
宮野志保には、何がある?
家族もいない、親戚も居ない。
友達もいないし、帰る場所もない。
いったい私は・・・元に戻って得をすることがあるのだろうか?
いろいろな思いを巡らす私の様子に気づいたのか、彼はそっと微笑み
「ま、お前が決めることだから。好きにしろ」
じゃーな、と手をヒラヒラ振り、家に入って行った。
私は彼のいた場所を見つめ、なぜか・・・溢れてくる涙が止まらなかった。
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