第9話 尾行
う・・・うう・・
新一は迷っていた。
盗み聞きするつもりはないのだが・・・
やっぱり抑えきれない“興味”がわいてきて、電信柱の陰に隠れた。
微かに聞こえてくる、二人の会話。
一体どんな話をしているのだろう。
「・・・・・なの?」
「ええ・・そ・・よ・・・」
「・・うなんだ。・・ってら・・」
「ええ・・・」
途切れ途切れに音だけが聞こえてくる。
話の内容は全くわからなかった。
やがて快斗は哀に手を振って別れを告げた。
反対方向に歩いていく2人。
新一は哀の方に着目していた。
・・・灰原の奴・・どこ行くんだ・・・?
さっきまで新一の家にいた灰原は、また出かけるのだろうか。
どう見てもよそ行きの服に、ハンドバッグ。
それから・・・花まで持っていた。
なにに使うんだよ・・・?
気になる新一は、後をつけることにした。
・・・・・
にしても・・・
歩き始めて、まだ10分。
新一はある、異変に気づいていた。
灰原の表情・・・いつもと違う・・・
いつもクールでツンツンしている彼女だが、今日はなんだか・・・
可愛い・・・・・
柔らかな表情。
うっすら浮かべた微笑み。
どれもこれも、いつもの哀とは全く違った。
何なんだよ・・・??
次第に疑問が広がってゆく。
最近哀は、近所でも有名になってきていた。
「あいさつもきちんとするし・・・」「前よりもっと可愛くなったわよね」というご近所さんの噂話もよく聞くほどだ。
その、小学二年生の灰原哀が・・・一体何をしに、どこへ行くのだろう・・?
気になることは、増えていくばかりだった。
・・・・・
・・・バスかよ。
バスに乗り込んだ哀。
A「バスはどうかな・・?さすがにまずいか・・・?」B「いや、でも・・悪いことしてるわけじゃねえし・・・」A「悪いことだろ・・・・」
今、新一の中では、“新一A”と、“新一B”が闘っていた。
結局・・・迷っている間にバスは発車してしまった。
あーあ・・でもこれで良かったのかもな。
なんて考えながら歩く新一は、間違いなく、周囲に哀愁をぶちまけていた・・・
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