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ウォーターボーイズ
作:tensuke



16.再会


16.再会

「昇?」
「こんにちはっ!ご無沙汰しておりますっ!」
「おお〜っ!昇ぅ〜 お前ご無沙汰し過ぎだぞぉ〜
一度お母さんに駅でばったりお会いして お前がK大付属に
合格したって聞いたけど お前報告にも来なかったし
ったく 愛想がないのもたいがいにしろよぉ〜っ!!
そんで 今度はバイトかよぉ 驚かせるなよっ 」

彼は饒舌に笑いながらまくしたてると 僕の頭を何度も叩いた
変わらない笑顔と声だった 
でも どこかちょっとだけ照れくさそうに
そして何か慌てたような
そんなぎこちなさが僕の目には新鮮だった
明らかに それは彼が「あの日の事」を覚えている
そう 僕に確信させるものだったから

彼も忘れていない 僕とのあの口づけを
そう確信した 
それは 不思議と僕の心を落ち着かせ 穏やかにした
それまでの あの葛藤とも言える焦燥感が
嘘のように心の中で消えていった

後には ただ これから毎日 このヒトと顔を合わせられる
その喜びだけが満ちていた 
単純に ただ単純に 僕は戻ってみてよかったとそう思った
彼のそばに 戻ってみてよかった
後の事は これから考えればいい
今はただ 彼の近くに肩を並べて共にいられる事が誇らしかった

僕は子供達のスクールのクラスで彼のアシスタントについた
毎日通ってくる子供たちと 僕もすぐに仲良くなった
佐藤コーチは昔と変わらず 相変わらず子供にもその父兄にも
とても人気のコーチだった
クラスでは どの子供も コーチの言う事を真剣に聞き
皆がそろって上達していった

ある日 初めて参加するという 小柄な少年がやってきた
大きな瞳に一杯に涙をためて
彼は水がコワイと言っていた
初めての子供の世話はアシスタントが見る事になっている
クラスの時間中 その少年のそばに僕はただついていた

少年は 結局 水に顔をつける事ができないままに
その日のクラスを終了した
少し暗い顔をして 少年はプールを後にしていった

次の週から彼は週に2回 プールに通ってくるようになった
僕は気長にその少年のクラスにつきあった
少年は 必死に他の少年たちに追いつこうと
水に顔をつける練習を繰り返していた
僕は少年と水中にらめっこをしながら
ただひたすら彼が自ら水に入ることだけを待ち続けた
決して甘い言葉をかけてやる事はなかった
ましてや 少年を腕に抱えてレッスンするなど
僕はしたりはしなかった

「のぼる 昇のレッスン クールだって評判なんだけど・・・」
彼がクラスの後 シャワー室で僕に声を掛けてきた
「クール・・・ですか?」
「そう・・冷たいっていうんじゃないんだけど 厳しいっつうか
なかなかにスパルタだねぇ〜って 他のコーチの評判よ」
「評判・・・」

シャワーの音にかき消されながらも会話は続いた

「そ・・・あの泣きそうな少年にも 結構いろいろさせてるでしょ」
「はい やらせてます レッスンですから」
「俺は昇が泣いてた時は 待ちの心境だったけどなぁ・・・」
「僕も待ってますよ あの子が自分でプール好きになるの」
「そっか・・・」

僕はシャワーの栓を止めると 隣りのブースにいる彼に大声で言った

「そーですよ 僕は誰かさんみたいに優しく抱っこなんて
しませんけどね」
「お・・・挑戦的なセリフ」
「そーですよ・・・僕みたいなのがまた育っちゃったら可哀想ですからね」
「なんだ?そりゃ」

彼もまたシャワーをとめて タオルで髪をふきながらブースから出てきた
ロッカールームへ歩きながら会話は続いた

「貴方が優しく抱っこなんてしてくれてたお陰で僕はこうなった」
「こうなったって何だよそれ・・・」
「まぁ 泳げるようになったのは感謝してますけどね
まともな恋愛もできない風にもなっちゃったんで ちょっとそれがね
恨みがましく思えるっつぅか あの子が大きくなった時に
昇コーチぃ〜 なんて言われても困るんで」
「・・・・・のぼる・・・」

「はははは 佐藤コーチ 情けない顔しないで下さいよ
冗談ですよ 冗談! やだなぁ 真に受けないで下さいよ
ホントなら こんな風にバイトに来たりしませんって」
「・・お前 おどかすなよ・・・身が縮むぞ」
「ホント 縮みました?背の高さ 変わらなくなりましたよ」
「てめぇがデカくなったんだろうがっ!」
「はははは そーですね お陰様で大学進学も決まったし
ちゃんと 大人に なってますよ 俺」
「・・・・昇・・・」

僕は 
僕は一体何を言いたかったのだろう
彼を困らせて ただ困惑させて 何を本当は伝えたかったのか
ちゃかして自分の心情を打ち明けた
あの口づけの続きを期待した
大人になったら そう言った彼の心が知りたかった

でも
彼は「おどかすな」と そう言った
そうなのだろう もう30にもなったいい大人が

彼からすれば 僕はいつまでたっても あの泣き虫だった小学生
あの頃とかわらぬ 年下の後輩
いつまでも埋まらないこの年齢差が口惜しい
身体の大きさは変わらなくなり
仕事も同じにできる程になったというのに
いつまでたっても 僕は小学生の昇のままなのか

彼との再会は 新たな日々の始まりだった


ラストスパートです
最終回に向けてρ(^^ )/ イッテミヨー!











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