ウォーターボーイズ(10/17)縦書き表示RDF


ウォーターボーイズ
作:tensuke



10.キスして下さい


10.キスして下さい

しばらく泣いて 僕の涙もおさまってきて それでもまだしゃくりあげる僕を
彼はずっとその腕の中に抱えていてくれた
小さい子供をあやすように 泣きやまない小学生を腕に抱えてレッスンをするように
彼は今も変わらず 僕をこうやって抱き締めてくれる

懐かしい コーチの腕の感触 ずっと覚えてる 忘れない小学生のあの日
僕はコーチの腕に抱かれてプールにいた
他の子供達が水の中にすいすい入ってゆくのを 泣きながら
そしてコーチの腕の中から眺めていた

安心できて 暖かくて とても居心地のいい場所だった
父に抱っこされるのとも違う 何だか不思議な感じだった
そしていつも 僕の顔の横には優しい笑顔のコーチの顔があった
キレイで格好良くて 大好きなコーチの顔がそこにあった

今も 心配そうに僕の顔を覗き込む彼の顔が間近にある
「従姉妹さん・・・残念だったな・・昇もよく頑張って行ってきたな辛かったな・・」
僕が泣いた理由も 突然死なないでなどと言い出した事も
ちゃんと彼は判ってくれていたのだろう
突然の従姉妹の死に 僕が戸惑っていたことも 死というものを初めて間近に感じ
大きなショックを受けていることも 僕以上に彼は判ってくれていたのかもしれない

彼の大きな黒い瞳に見つめられて 僕の頭は思考回路が鈍り・・・
口は思いがけない事を口走った
「・・・キスしてください・・・」

彼の瞳に 素直に驚きの色が浮かぶのが見えた
その一瞬で 僕の中は後悔で一杯になり 逃げ出したい 消えてしまいたい
そんな思いで身体が震えるようだった

しかし そんな僕の顎に彼の長い綺麗な指が静かにかかり
そっと上を向かされた僕の唇に 彼の柔らかいふっくらとした
あの紅い唇が重なった
全身に電気が走るようなもの凄い衝撃を感じた

ただ そっと その唇が 僕の唇に重なっただけなのに・・・












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう