(笑ってよ。)
隣を歩く幼馴染、活発な彼女はよく笑う。
けれど、ある日を境にその笑顔は微妙に変わってしまった。
何時からだろう、あの笑顔を見れなくなったのは。
もう幼い頃の写真の中にしか無いその笑顔。
(何がいけなかったのかな。)
彼女は気付いていないはず、この想いには。
君を束縛したくない、だから伝えなかった。
振られるかもって不安もある。
けれど……もし付き合えたなら、その方が怖くもあった。
他の全てに嫉妬しそうで怖い、見たくない嫌な自分を直視しなければならない。
でも僕が恋心に気付いた時期と、本当の笑顔を向けてくれなくなった時期は一致している。
これが彼女の答えなのかな。
「夏休みかあ。」
彼女は空を見上げて言った。
果てなんか無い様な、深い青空が広がっていた。
「どこか行くのか?」
「もちろん!
もうすぐ夏祭りだし、他にもたくさん。
あ、見て!
あの店、カキ氷の看板出してる。
ちょっと買っていこうよ。」
「そうだね。」
二つで百八十円。
レモンとイチゴのカキ氷。
木陰のベンチに二人並んだ。
「ん〜、冷たい。」
「欲張って頬張るから。」
「もう、いっつもそんな事言うんだから。
でね、新しい水着買ったらすぐ海に行こうよ。
最近はナンパもあるし結構危険なんだからね、あんたも行くのよ。」
「虫除けなのかよ。」
「嫌?」
「どうかな、僕もナンパしようか?」
「また冗談ばっかり!」
僕は、笑ってから見上げると。
木の葉の合間を縫って刺す光が、綺麗で―――なぜだろう。
どこか、楽しい会話も虚しくて。
「……なあ。」
「ん?」
「笑ってくれないか?」
「何時だって私は、笑ってるよ。」
「違うんだ!
上手く言えないけれど…昔と違ってる。
僕が…悪いのかな?
なんだろう、以前の全てを満たしてくれる様な、輝く様な笑顔が。」
不意に彼女は鏡を取り出し、僕を映した。
「なに?」
「大好きな貴方が、その笑顔をくれないのにどうして私が笑えるの?」
「……ッ。」
一粒の涙が、頬を流れた。
少しだけ待って、そしたらとびっきりの笑顔で君へ。
――愛していると。 |