―――そうだ、銀行強盗になろう!!―――
小さい頃から格好良い物に憧れ、自分が格好良いと思った事だけをやって来た。
知的な人間が格好良いと思い、猛勉強をして私立の有名中学に入った事もあった。
不良が格好良いと思い、仲間を作り悪事を沢山働いた事もあった。
そんな風に自分の信じる道を進み続けて来た俺だが、特に何のジャンルでも有名になれないまま三十歳を越えてしまった。
あぁ……何かひとつでも良いから、人の記憶に残るような事がしたい。
何かひとつでも良いから、格好良い事をしてから死にたい。
そう思い立ってから数年間、俺はずっと悩んでいた。そのうち歳は三十を大きく越えたが、ようやく自分で納得できる答えを見つけた。
―――そうだ、銀行強盗になろう―――
コレが俺の考えに考えた結果だ。
考えがまとまった時、俺はちょうどある犯罪小説にハマっていた。その本の主人公は最終的に捕まるのだが、彼が最後の犯罪で言ったセリフが格好良かったのだ。
その主人公が行なった最後の犯罪こそ、銀行強盗だった。
俺なら彼のセリフをもっと格好良く言える。
俺ならもっと格好良い最後を迎えられる。
よし、強盗しよう。
いつも通りの平日の昼間、左ポケットに拳銃をしまいこみ銀行の自動ドア開け、中に入る。
室内のちょうど良い所に立ち、ひと呼吸置いてから拳銃を取り出す。
突然の悪夢に、ざわめき出す客と銀行員。
まだ、まだだ………
まだ、俺の時間じゃない。
少しばかり時間がたつと、俺が中心に構えている拳銃を見て、何も言って無のに手を上げるヤツが出て来た。
―――よし!
――言おう!
脅える人々に向かって俺は、
『手は上げなくて良いよ。どうせみんな殺すから。』
コレを言ってから、拳銃の引金を引いた。
何発もの銃声が鳴る。
銀行に転がる十八の死体、肉塊。
そのうち警察が来て、俺を捕まえた。俺は世界に記録を残し、人々の記憶に残った。
―――〇〇〇新聞―――
昨日午後二時ごろ、〇〇県△△市の銀行で合計十八人を殺害した、史上最大の強盗殺人事件がおこった。犯人の□□ □□容疑者(34)は、警察の調べに対し
「何か人々の記憶に残るような事がしたかった。」
などと、意味不明の供述しており、今後も警察は動機等を詳しく聴取する模様。犯罪心理学者の●●氏は
「この事件は世界に知れわたる史上空前のものとなった。しかし犯人はその有名になる事自体が目的だったと言うのだから、皮肉なものである。」
と語る。
この三日後、世界的な爆弾テロが起こり俺の存在は世界に忘れられた。
もう何をしても……自殺しても駄目だ。格好良く無い。 |