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ホワイトボードラバー 作者:藍上尾わをん

第2章 新生編

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『彼女が死神かもしれない……』 どうして?

「こいつらは、お前らを大喜利で倒すために集められた、精鋭の若手芸人たちだ!」
 そう言って、司会進行を務めている神田さんは、ステージ後方にずらりと並んだ芸人たちを紹介した。彼らはいずれも年若く、デビューしてからまだいくらも経っていないように見受けられる。現に、司会進行のWAKU-WAKUのお二人は元より、これまで企画大喜利に挑戦していた三組の芸人たちよりも、どことなく観客席に対して気圧されているような雰囲気があった。
 神田さんは、なおも「なんすかなんすか」「なにが始まるんすか」「誰すかこいつら」とわざとらしい戸惑い気味の声をあげる三組に、企画の説明を始める。
「ここからは年齢芸歴関係無しの、ガチ大喜利トーナメントとなります! お前ら三組は、このテレビにすら一度も出たことが無いような芸人たちに混じって、大喜利のトーナメントに挑戦してもらいます。そして、見事優勝すると、賞金として三万円が贈呈されます!」
「うおおお!」「マジスカ!」「三萬!」
「ただし! この一万円を貰えるのは、後ろの若手芸人が優勝した時だけです!」
「えええええ!」「なんでなんすかー!」「ちょっと待って下さいよー!」
「しかも、後ろのこいつらの中から優勝者が出た場合の賞金三万円は、お前ら三組がカンパして支払うこととします!」
 その言葉を聞いた三組は、えっ、と凍り付く。いきなり自腹を切れといわれれば、それはそうもなろう。
 一方でその後ろの方で、未だ名前も紹介されていない若手芸人たちも、目をギラギラと光らせている。完全に優勝して賞金を狙いにいく腹づもりらしい。
「つーわけでお前ら! 出てきたばかりの若手芸人に負けて三万をぶんどられないよう、優勝目指して勝ち進め!」
 うおおおおおお、と観客席が多いに湧いた。
 なるほど、そういうシステムなのか。テレビに出たことすら無いような若手芸人たちは賞金を目指し、やや芸歴に一日の長のある芸人三組たちは自腹での賞金負担を阻止するべく若手たちの優勝阻止を目指す。
 私たちの中では藤根さんが早くも「いいぞー!」と野次を飛ばし、ステージをはやし立ててていた。
 企画大喜利の流れから、トーナメントへの企画変更が告げられるとあとの展開は早かった。
 まずステージ後方にあるスクリーンに、十六人の芸人の名が、抽選システムによってランダムに四ブロックに振り分けられる。選ばれたブロックの四人はステージ上に残り、残りの芸人たちは一旦袖へと捌けていった。
「はい! ではこのブロックの出場者、改めてご紹介しましょう! まずは先輩芸人組からは、超時空シンデレラの榊大地!」
「はい! よろしくおねがいしまーす! 自腹切るの嫌なんで、絶対こいつらの決勝進出を阻止してみせまーす!」
 ぶーぶー、と他の三人の若手芸人が口々に文句を言う中、榊さんは涼しげな顔を見せている。
「そしてその先輩榊を倒して本戦進出を目指すのは……こちらの三人だ!」
 榊さんに続いて水を向けられた若手芸人の三人は、かしこまった表情で一人ずつ自己紹介を始めた。
「こんばんは! 抵抗値というお笑いコンビのボケをやらしてもらってます! 佐伯守です! 優勝して一千万円取りにいくんで! よろしくお願いします!」
「おいおいおい! 三万だぞ! 一千万なんか、俺ら六人でカンパしても払えるかよ!」と、隣で榊さんが突っ込んで笑いを誘う。
「どうも、初めまして! ナツ×メグというコンビで普段は漫才をやらせてもらっています、ナツと申します」
「そしてわたくしが、そのナツ×メグの相方、メグと申します。コンビで一回戦で当たってしまいましたが、優勝狙ってがんばりまーす!」
 ナツ×メグと名乗るこの二人は女性コンビらしい。ここまで男性の大喜利ばかりを見てきたからか、急に現れた女性の二人組には少しばかり親近感を覚えてしまう。そういえば今日一日を通してこの舞台上に上がってきた女性は、この二人だけだった。やはり芸人ともなるとテレビと同じように男所帯になってしまうものなのかもしれない。
 三人の若手たちの自己紹介もそこそこに、神田さんが観衆の注目を集めるように声をあげた。
「さて! さっそくこの四名には大喜利で勝負をしてもらうわけなんだが……まずはそのルールを説明させてもらいます!」
 神田さんの説明する大喜利のルールは、ひどくシンプルなものだった。
 文章お題が二問出され、制限時間はそれぞれ四分間。その間に何度でも答えることができるけれど、制限時間を超えてのホワイトボードへの書き込みは不可。二問終わった時点で拍手による観客投票を行い、各ブロックの一番拍手の大きかった人が勝利、というルールである。
 神田さんがそのルールを説明するたびに、出たがりの若手芸人たちや、こういう場面に慣れている榊さんは、テンポよくボケやツッコミを交えていく。「ルール説明長いぞ!」「まだ喋り出したばっかりだぞ!」「早く三万早くうー!」「聞け! お前ら!」
 説明し終えただけでも疲労困憊といった様子の神田さんは、まだまだ喋り足りなそうな四人を軽く手を振って黙らせる。
 神田さんの相方の菊池さんが、スタッフに合図を出すと、ステージ後方のプロジェクターに映し出されるお題画面に動きが生じた。
「それではこの四人が回答する最初のお題は、これだ!」

『彼女が死神かもしれない……』 どうして?

「おおー、こういうタイプのお題ですかー」「死神かー」「死神っぽい彼女ねー」
 と、舞台上の回答者四人は気軽なテンションで口々にお題への感想を口にしていた。
 そんな四人の軽いざわつきが治まるのを待ってから、神田さんは遂に勝負の始まりを宣言する。
「それではこのお題で……四分間、スタート!」
 瞬間。
 空気が、変わった——。
 それまでどこかゆったりと流れていた会場内の空気が、突如としてスイッチが切り替わったみたいに張り詰める。
 息をするのも忘れるような……無意識に、呼吸すらも引っ込めてしまうほどの、緊張感。
 何が変わったというのか。ステージ上では相変わらず四人の若手芸人たちがお題に向き合って頭を悩ませている。
 大喜利ライブ。何も変わっていない。私たちは先ほどまでと同じステージを見ているはずなのに……。
 戸惑いながらも私は改めてステージ上の様子を眺め見た。そしてそこにあるものを、私の瞳がはっきりと捉えた。
 ……そうだ。
 変わった。
 変わったのだ。
 先ほどまでとは天と地ほどに大きさく感じる圧倒的な差異が、ステージ上にはっきりとある。
 舞台上に立つ四人のお笑い芸人たち。彼らの目つきが、まるで別人であるかのように四人とも研ぎすまされているのだ。
 ある人はプロジェクターによって後ろのスクリーンに映し出されているお題を、穴が空くほど見つめている。
 またある人は、お題の方を一切見向きもせず、手元のホワイトボードに何事かを書き込んでは消し、また書き込んで、少し悩んではまた消すといった行為を繰り返す。
 先ほどまでは、もっとざっくばらんだった。答えを出していない人でも雑談をするかのように何事かを口にしたり、もっと明るく楽しげに振る舞いステージ上を盛り上げた。
 しかしそんな姿はひっそりと鳴りを潜め、だれもが真剣な表情。まさに、それはそう、職人の顔。会場の空気を、たった一瞬でここまで変質させる、四人の仕事人。
 だれも何も答えない、重苦しい停滞の時間が過ぎていく。
 もう、一分は過ぎただろうか。しかしもしかすると、まだ三十秒すら経過していないのかもしれない。時間の感覚を忘れてしまうほどの、緊張感が場を支配する。
 その閉塞感に満ちた時間は、しかしまたしても唐突に破られる。
 四人のうちの一人……佐伯、と名乗っていた若手芸人が、控えめに手を挙げたのだ。
「はい、佐伯。『彼女が死神かもしれない……』 どうして?」と神田さんが指名する。
「『こういう包丁を使っている』」
挿絵(By みてみん)
 死神のやつだ!
 死神が持ってる鎌だ!
「ああー、確かにこれ持ってたら彼女は死神かもしれんわー!」
「しっかしこれ、切りにくそうだなあ!」
 と、司会の神田さんや菊池さんへの手応えも好印象だ。
 そしてその佐伯さんのウケを見て焦ったか、他の人たちも堰を切ったように続々と挙手をしていった。
「はい、じゃあメグ! 『彼女が死神かもしれない……』 どうして?」
「『旅行に行くと、だいたい出先で人が死ぬ』」
「探偵漫画の主人公みたいになってるじゃねえかよ! まあでも、もしかしたらって思っちゃうよね! はい、次ナツ! 『彼女が死神かもしれない……』 どうして?」
「『好きな野球選手ですかぁ? ん〜、中日の岩瀬投手かな〜』」
「どゆことだよ!? 中日の岩瀬が好きだと、死神なの!?」
 神田さんがそうツッコミを入れると、相方の菊池さんが「背番号が十三番で難攻不落の守護神だったから、タロットカードの十三番の死神とかけて、そうあだ名されてるの」とフォローを入れた。
 ナツさんとメグさんはぽんぽんと立て続けに回答を出してきたが、佐伯さんのそれに対してこちらはあまり大きく笑いを獲ることができなかった。
 先ほどから場を支配する重苦しさ。真剣勝負の張り詰めた空気が故にといったところなのか、今までのあたたかいステージとは一転して、簡単には観客を笑わせられない。
 と、今度は榊さん……優勝しないと三万円払う側となってしまう先輩芸人が、指名を求めて手を上げる。
「ほい、榊。『彼女が死神かもしれない……』 どうして?」
「あのー、バイクで大事故を起こしてしまいまして。一週間生死をさまようような昏睡状態に陥ってたんですけど、お見舞いに来た彼女が、全然心配してなくてですね。『なんで心配しないの?』って聞いたらですね……」
 榊さんは滔々と語っていく。そしてホワイトボードをひっくり返しながら、
「……『だって、まだ“その時”じゃないでしょ』って」
「怖あああっ!」と神田さんがステージ上で叫んだ。
 観客席も笑ったりざわついたりと色々な反応を見せている。
 榊さんも手応えを感じてか、笑顔を覗かせながらホワイトボードを裏返した。
 すると今度は、一答目で大きな当たりを見せていた佐伯さんが、再び挙手をする。神田さんが指名し、回答権を得る。
「はい、佐伯。『彼女が死神かもしれない……』 どうして?」
「えー、『りんごしか食べない』」
 一拍の静寂を置いて、
 観客がその意味を理解すると同時、大きな笑い声が会場内を包み込んだ。
「確かにな! りんごしか食べてなかったら、そいつは死神かもしれないわ!」
「デスノート持ってそうだな!」
「りんごダイエットしてるだけかもしれないのに、『こいつ死神なのでは……?』と思われるの、嫌すぎるだろ!」
 ステージ上の司会二人も楽しそうにコメントをし合っていて、榊さんの盛り上げた空気を、今度は再び佐伯さんが持っていってしまった。
 この激しい打ち合いは、四分間という短い時間の中で、しかし濃密に繰り返されていった。



 ☆



 結局あの試合は、二問を通じてほとんど榊さんと佐伯さんによる激しい一騎打ちの様相を呈した。ナツさんとメグさんも会心のボケといって良さそうな回答自体は出ていたのだが、榊さんと佐伯さんの二人はその精度が段違いだったのだ。
 投票の結果、わずかな差でこのブロックを制したのは佐伯さんの方だった。先輩芸人でありながらも土をつけられる形となった榊さんはがっくりとうなだれるも、会場からは万雷の拍手が送られることととなった。
 激戦の大喜利トーナメント戦はおよそ一時間に渡って行われ、先輩芸人と後輩芸人の意地がぶつかり合い、名試合を何度も演出した。
 そしてその激闘を制したのは、先輩芸人軍団の中から唯一決勝に生き残り、その勢いのまま後輩芸人の猛追撃をかわし切った、たなかしもだの田中氏。見事後輩への優勝賞金の自腹を阻止してついでに優勝の栄冠も手に入れた田中さんは、負けた後輩芸人たちに向かって「ざまあああああああああ!」と叫び倒しブーイングの嵐を食らっていた。
 こうして私……いや、私たち忍舞学園生徒会の初めての大喜利ライブは大盛り上がりのままに終演を迎えたのだった。

 終演後、スタジオの外に出ると、辺りはすっかり真っ暗になってしまっていた。辺りには帰路を急ぐ人もいれば、まだまだ遊び足りないとばかりに別のお店へと足を向けるグループの姿もあった。
 私たちは往来の邪魔にならないように道の端に寄ると、寧々さんを中心に輪になって立ち、お互いの顔を合わせる。
 腕組みをした寧々さんが「どうだった?」と尋ねると、まず真っ先に藤根さんが喋り出した。
「すっごくおもしろかったぞー! みんなおもしろいことめっちゃ言ってて、すごかったぞー! なあ、らんらん!」
「ひゃぇっ!? あ、そ、そう……ですね……。その、思わず笑っちゃうようなこと、いっぱい言ってて、すごく皆さん頭の回転が早いんだなあって、思いました……」
 藤根さんと、彼女に同意を求められた折原さんがそのように言うと、寧々さんは腕組みをしたままに深く頷く。
「そうね。さすがにああいうことを生業にしている人たちともなれば、アマチュアのあたしたちとは全体的にレベルが一段階……あるいはそれ以上、上がってくるものだわ。そして……」
 諏訪部さんは私たちを見回すと、言った。
「あたしたちは、あのレベルを目指す必要があるわ」
「は!?」と藤根さん。
「えっ!?」と折原さん。
「なっ……!」と私。
「……」と会長。
「大喜利には二種類あるわ。そして、あんたたちに観てもらった今日の舞台には、その二種類の大喜利の両方があったわ。なんだか分かる?」
 藤根さんと折原さんが、お互いに顔を向け合い、視線を交わらせた。分からないらしい。斯く言う私も、分かっていない。
「霧島は? どう?」
 寧々さんは黙り込んだままの会長の方へと、水を向ける。
 会長は地面に向けていた視線を、すいっと持ち上げて、寧々さんを見た。
「楽しむ大喜利と……戦う大喜利、でしょうか」
「正解」
 パチン、と寧々さんが指を鳴らした。
「大喜利には二種類ある。それが楽しむ大喜利と、戦う大喜利。あんたたちも観たでしょう。最後のトーナメント……優勝賞金をめぐって、先輩後輩入り乱れて大喜利を行ったあの時間だけ、それまでの和気あいあいとした雰囲気とは一線を画したのを」
 確かに、そうだった。私は思い出す。
 それまで楽しそうに一緒になって文句を言い合ったりからかったりして楽しげに大喜利をしたり話したりしていた芸人たちが、いざ四分間の大喜利の勝負が始まると、それまでの仲の良さが全て嘘だったかのように真剣な目つきに変わった。お題を何度も読み返し、攻め込むべきところを見定め、渾身のボケをひたすらに脳内で掘り起こす。
 彼らは戦士だった。それまでのおちゃらけた姿は、戦っている間だけは、どこにも無かった。紛れも無い、笑いにのみ特化された精鋭の戦士たち。
「正直な話をしてしまえば……楽しむ大喜利、否、彼ら本職のお笑い芸人たちにとっての『観客を楽しませる大喜利』には才能次第で向き不向きがあるといわざるを得ないわ。だって大喜利の回答は何を言ってもアリの自由空間だし、外野から回答へのツッコミを入れたりする必要もある。出したボケがすべっても、その後のフォローのコメントで爆笑に変えることだってできる。生まれもっての性格、喋り方、場の空気に合わせた立ち居振る舞い、フリートークでの喋りのうまさ……それらが総合的に問われるんだもの。もはやあのレベルまで行けば、才能のステージよ」
 でもね、と寧々さんは続ける。
「戦う方の大喜利なら、違う。観客は、“回答そのもの”だけを見る。いくら他人のボケにツッコむのがうまかろうが、ボケの後のフォローがうまかろうが……関係ない。そして、回答の精度だけに焦点を絞って鍛えていけば……」
 寧々さんは、私たちの顔を見た。今一度覚悟を問うように、一つだけ頷いて。
「あたしたち素人でも、プロレベルの大喜利は、できる」
 ぶるっ、と身体が震える。
 できる? 私たちにも、あれだけ次々と爆笑を搔っ攫うような大喜利が、できるっていうのか?
「あたしたちにも……あんな風に、会場を笑いで包み込むようなことが、できるのか!?」
 藤根さんが興奮したように、前のめりになって叫んだ。
「できる!」
 寧々さんは頼もしげに断言した。
「私たちは……始めたばかりなのに、あんな風に、なれるんでしょうか……」
 折原さんが自信なさげに言う。
「なれる!」
 寧々さんは背中を押すように、言った。
「夏の対抗戦まで、後二ヶ月。短い時間だけど、大喜利ってのは身体的スポーツと違って、始めたばかりでも強くなれる余地はいくらでもあるわ。だから、この素人集団五人組でも、必死になって大喜利のノウハウを詰め込めば……」
 寧々さんは、私たち四人を鼓舞するように、ぐっと力を込めて、言い放った。
「勝てる」
 勝てる。その言葉は、実感こそまだ無かったけれど、もの凄い心強さと共に胸の奥へと沁み入る感じがした。
「大丈夫。あんたらの目の前にいるのは、スマホ大喜利第三十九代目レジェンド、ねるねるねるねる様よ。あたしが本気で鍛え上げてやるって言ってるんだから、大船に乗ったつもりできなさい」
 そう言って、彼女はその豊かな胸をぽんと叩いた。
 初めて、目の前のこの女の人が、ひどく頼もしく感じられた瞬間なのだった。
 隣を見れば、藤根さんも、折原さんも、興奮しているのかやや紅潮した顔で寧々さんを見ている。その目に確かに宿る闘志を、私は見逃さなかった。もう彼女たちは、寧々さんが無理矢理つれて来た人数合わせではない。自ら戦地へと赴く、大喜利戦士になったのだ。私には、なぜだかそれが分かった。
 そして、会長は。
「よろしくお願い致します、師匠」
 寧々さんに頭を下げた。
「よろしくお願いしまっす!」
「よ、よろしく、お願いします……!」
 藤根さんと折原さんも、それを見て後に続く。通行人がなんだなんだとこっちを見ているのが分かるが、今は知ったことではない。
 私も改めて、寧々さんを見た。彼女は確かな実績を持っている。そして、彼女の教えに従って大喜利をしたあの日……大喜利女子会での大喜利で、私は確かに手応えを感じていた。
 勝てる。勝てるんだ。この人についていけば、もしかしたら……。
 そんな希望を胸にして、私は頭を下げる。
「私たちを、強くして下さい。よろしくお願いします」
 こうして私たちは、最初の一歩を踏み出した。
 長く険しい、大喜利の道を。だれでもない、自らの意思で。
 寧々さんは満足そうに、頷いた。
「よし! じゃあ、今日のところは……」
 寧々さんは自らの左腕に巻かれた腕時計を見ると、
「一旦帰るか! もう遅いし!」
 四人ともリアクション芸人顔負けのずっこけを見せた。
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