好きな人がいた。
でも叶わぬ相手だってことわかっているから、この場所から。唯一見えるこの隣の席から離れたくはなかった。
君はどうしても友達を作らないような瞳で人を見る。それかもしくは、読書をしているのを知っているから。だから話しかけるのも戸惑ってしまう。だけど、隣の席ということで、たまに何かしら話しかけれる。
といっても、小学生レベルで、消しゴム落ちたよ。とか言って拾ってあげると、憎めない声で素っ気なく「ありがとう」とちゃんと言えるやつだって知ってるから。だから言わない。
だって。
同姓同士だから。
俺をそれは嫌がらないけど、絶対君は嫌がると思うから。
それを三年待った。
神様はきっと、味方についてくれたのだろう。
本当に自然に三年間同じクラスで、地味に席は近かった。
隣じゃなくとも、右だったり左だったり。前だったり後ろだったり、少しばかり斜めの位置にだってなった事があるけど、神様がタイミングを見計らってくれるかのように、絶対一緒だった。
だから今日という卒業まで。ジッと俺は待っていた。少なからず、タイミングが合っていようと、間違っていようと。神様はもう俺たちを放り出したから。
なんて言ったって運がいいのか悪いのか。いや。神様は放り出さずに、あえて違う進路にしてくれたのかもしれない。でもそこでわかっていた。
俺は叶わぬ恋をしているのかもしれないと。
解ってはいたのだが、ここまで来るとはっきりと直接言われた気分だった。
卒業式。
一人の君に俺は声をかけて、誰も来ないような教室に連れて行った。軽く笑顔を保っていたからか、余り警戒するような様子をしていなかった。
近くの席だったことを覚えてくれていたのか、解っていたのかもしれない。
その教室に着いたとき。話しかけたのは一歩遅かったのか、君から話してくれた。初めて。
「もう最後だね。運が良かったのか悪かったのかは君しだいだけど、席離れなかったね。僕は嬉しかった。こうやって話しかけてくれたのだって嬉しかった」
「嬉しかったよ。最高に俺だって。でも、君が気付いてくれてるなんて思わなかったなそれに」
参った。逆に告白されている気分になってしまった。
だって。
君がそんなところを意識してくれているとは思わなかったから。だから。
「僕。君のこと嫌いじゃなかった。結構僕嫌いになりやすいタイプなんだけど、君だけはどうしても嫌いになれなかったな。進路が変わらなかったら僕、ちゃんと君に話そうと思ってたけど、君から話し掛けてくれるとは思わなかったな」
薄く微笑んだその顔は、この三年間初めてだった。
どうしてだろうか。同じクラスで凄く近い席だったのに、どうしてかその笑顔は今まで見たことが無かった。
高校生。
その先は、誰とも被りにくい進路へと変わって行ってしまうから。
「俺は……俺は君が好きだった。進路変わったのだって、少しばかり神様は味方になってくれると思ってた……拒まれたら顔を合わせにくくなるだろう? それを君は嫌がると思ってた」
「僕も好きだよ? 進路は一緒だったら良かったって思ってた。君は席が神様がくれたと思ってた? 僕はずっと思ってたよ。神様が近くに居させてくれるようにしてくれたんだって」
悲しそうなその瞳。
その瞳はさせたくなかったけど、させたのは俺なのだろうか。
ソッと腕を伸ばして、君を抱きしめた。
この胸に抱きとめて見せた。
「俺は……君をこういう風に好きだ。でも同姓だろ? だから君は嫌うと思ってたんだ」
「……うん。今はびっくりした。僕そういう風な目で見られてたとは思わなかった。でも、何でだろう。驚いただけで、不快感とか嫌悪感とかは感じない。このぬくもりがほしかった」
俺の背中に回した君の腕。
どうして今までこうしてあげれなかったんだろう。もっと早くに感じさせてあげたかった。
「……卒業しても。今日が終わっても連絡取り合える?」
勇気がいった。
凄く今、勇気がほしくて、それで尚且つ少ないうちにそれを言った。そんな自分が凄いと思えた。
今日で最後かもと思ったら、心の中が気持ち悪く感じたから。
だから言った。俺は。
「君さえよければ僕は取り合いたいな」
「ありがとう……」
|