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第十九話 協調性

 グレンは立ち上がったがすぐにはクライドに声をかけず、暫くこちらをじっと見下ろしていた。彼は物凄く、驚いているようだった。
「お前、何でこんな所にいるんだよ」
 長い沈黙の末、ようやく彼が発した言葉がこれだった。クライドだって解らない。何でこんな所にいるんだろう、自分もグレンも。
「こっちが聞きたい。まあ、長い話になるだろうから一旦部屋に戻ろう」
 言いながら歩けば、グレンは再び驚いたようだった。先ほどのクライドと同じように、蹴破ったはずなのに消えていない白い壁に驚いたのだろう。
「壁が再生してる。何だこれ」
「違う、これはどうやら壁じゃないみたいなんだ。ほら、抜けられる」
 クライドがすっと手を出せば、それはいとも簡単に壁に飲まれた。それを見たグレンは息をのみ、目を見開いて硬直していた。クライドはそんなグレンを放置して、グレンが外したドアを足で部屋の中に押し込んだ。
 部屋に入れば、クライドが連れてこられた場所と全くといっていいほど変わらない空間が広がっていた。グレンは後ろからついてきたが、その身のこなし方で、彼がこの怪しい壁をうす気味悪がっていることがよく解った。彼はなるべく、壁を触らないようにしているのだ。
 クライドはベッドサイドの壁にもたれかかり、グレンを見た。グレンはクライドをじっと見ながら、ベッドに座る。
「まず、何から話せばいいんだろうな。とりあえず俺は、あの後ノエルと二人で聞き込みをした。それで、通りがかった人から空港に行くように言われて、空港に行ったらパイロットが首都へ行けって言って、首都についたらレンティーノさんにあった」
 ベッドに座ったグレンは、無言で頷きながらクライドの話を聞いていた。クライドは白衣のポケットに手を入れながら、グレンを見下ろして続ける。
「そこで俺は、ノエルとはぐれた。俺はレンティーノさんが送ってくれるって言ったから着いてきたんだけど、騙されてここに連れてこられた」
「言ってる意味が解んねえよ。騙されたって、何だよ」
 グレンは言った。物凄く不機嫌そうだった。恐らくこれはクライドに対してではなく、レンティーノに対しての怒りからくるものなのだろう。グレンがまだ、クライドを仲間だと思っていてくれるのならの話だが。
「レンティーノさんは敵だ。マーティンもここにいる。おそらくはハビさんも、この研究所のどこかにいると思う。まだハビさんが、マーティンの仲間なのだとしたら」
「裏切り? 許せないなそいつ。直接会ったことはないけど、お前の話聞いてた時にはいい人そうだと思ってたのに」
「今でも俺に敵意を持ってるわけじゃないみたいだし、だから余計に厄介なんだ」
「何だそれ。どっちだよ、はっきりしねえ男だな」
「立場的には敵だけど、レンティーノさんは俺を殺さないって言った」
 グレンは真剣に、クライドの話を聞いてくれた。真剣に怒ってくれた。何だか、あまりにいつもどおりなグレンの反応に正直驚いた。シェリーのことはまだ片付いていないから、てっきりクライドはグレンにまた殴られるのだと思っていたから。
 彼は流れるような金髪に指を通し、虚空こくうを見上げながら話し始めた。心地よい低音の声が、透明な響きを持ってクライドの耳に明瞭に届いた。
「……俺はスウェントの空港で誰かに後ろから殴られて、気づいたらここにいた。悪い、クライド。俺、トニーを護ってやれなかった。あいつを、一人にした」
 彼が項垂れると、さらさらの金髪が彼の肩を滑り落ちた。彼は本当に、アンソニーから離れてしまったことを後悔しているようだった。
 それなら、クライドの方はどうなるのだろう。シェリーをとられ、ノエルとはぐれ、挙句の果てにレンティーノに騙されているのだ。比べるまでもなく、クライドの方が取り返しのつかないことをしてしまっている。
「俺だって、ノエルを取り返せなかった。『HoLLy』のビルに貼ってあったポスターを見た女の子達が、ノエルを拉致してどっか行ったんだ」
 沈んだ声で告げると、グレンは顔を上げた。そして、にやりと笑んだ。いつもどおりの、悪戯っぽい笑み。彼のそんな顔を、再び見ることが出来るとは思っていなかった。
「本当にノエルのポスターあったのかよ。見せろクライド!」
「何か別人だった。ヴァル・セイナに行けば見れるけど、ノエルが本気で嫌がってる」
 本当に、旅に出る直前のようなグレンだった。シェリーのことで怒り、クライドに殴りかかったグレンとは最早別人だった。クライドは許されたのだろうか? けれどそれを訊ねてしまったら、グレンが怒り出しそうで嫌だ。
 折角こんな風に、グレンは何もなかったように振舞ってくれているのだ。それにのるのが、クライドにできる最良のことだろう。
「しかし、大変なことになったな」
 グレンは言いながら、仰向けにベッドに転がった。仰向けに転がったまま、意味を成さないうめき声を上げている。掠れたその声を聞きながら、クライドは首をかしげた。
「どうしようか、俺ら」
「けどさ、俺らだけでも再会できてよかったな。シェリーとトニーとノエル、とっとと助け出そうぜ。で、早くお前の目的を遂げて、帰ろう」
 再会できてよかったなんて、彼に言ってもらえるような台詞ではなかった。あれだけ怒っていたグレンが、もう怒っていないなんて。やはり、グレンもこの白い空間に閉じ込められて怖かったのだろう。
 出口のない空間になんて、きっと彼も今まで入ったことがないはずだ。あんな思いはもう二度としたくないと、ここに閉じ込められた誰もが思うだろう。
「……おう」
 答えると、グレンはベッドから跳ね起きる。クライドは、そんな彼に歩み寄った。どちらからともなく差し伸べた手を、どちらからともなく握る。目に見える、確かな絆がそこにはあった。
 これこそが、和解が成立した瞬間だった。お互いに、協力して仲間達を救出することを誓った瞬間でもあった。どちらにせよ、こうして目に見える形で仲直りを示しておくのは、双方にとって必要なことだった。これから先、お互いをより信頼するために、しておかなければならないことだった。
 この状況下では、喧嘩より協力が必要なのだ。たとえまだ腹が立っていたとしても、お互いに今は唯一の仲間なのだ。それが解らないほど、クライドもグレンも馬鹿ではなかった。それに、やっと会えた嬉しさで罪悪感が潰されていたのもある。
 1068と書かれた部屋を出て、クライドは真っ先にグレンを備品庫へ連れて行った。そこで彼に白衣を着せて、少し身を護るのに役立ちそうなものを見繕って持たせるのだ。彼は素手で何でもやってしまうが、万一相手が武術に長けていたら困る。折角再会した親友が、再びいなくなるなんて嫌だ。
「なあクライド、ここって防音設備凄いとこだよな」
「そうだな。こうやって廊下歩いてても、何の物音もしないし」
「だとすると…… 考えたくないんだけどさ、もしトニーとかシェリーが泣いてたとしても声が聞こえないよな? ノエルは泣いたりしないだろうけど、あいつにしてもあんなところに閉じ込められたら叫ぶぐらいはするだろうし」
 いきなり現実的な言葉を聞かされて、クライドは胸に錘をのせられたような気持ちになった。彼らがどんなに泣き喚いて苦しんでいても、クライドたちにそれを見つけるすべはない。どんなに声をらして叫んだとしても、彼らは一人で恐怖と不安に耐えなければならないのだ。自力で脱出でもしないかぎり。
「絶対みつけてやろう」
 ぽつりと呟くと、グレンは力強く頷いてくれた。
 出口のないただ真っ白なだけの空間に、閉じ込められている仲間がいる。彼らを早く助けてやりたい。そして、こんな仕打ちをしたミンイェンとかいう少年を見つけ出して仕返ししてやりたい。
 どうやって仲間達を見つけるか思案しながら備品庫を出ると、研究員らしき男性と出くわした。見るからにインドアで、運動の出来なそうな感じのする男だった。彼は黄色人種の中年だ。背が低く、足が短い寸胴のような体型をしている。
「いやあ、良い実験材料が手に入ったなあ。俺が担当してるのは、昨日入った茶髪のサンプルなんだがな。最初は暴れてたが、今はもうすっかり大人しくなっちまって」
 研究員は流暢りゅうちょうなエフリッシュ語で言った。隣でグレンが身を強張らせたのがクライドにはすぐに解った。彼が言う『茶髪のサンプル』は、高確率でノエルのことだと思う。
 もっと話を聞きだしても良かったが、あまり長時間一緒にいると正体がばれかねない。クライドは、咄嗟に曖昧な微笑を浮かべて見せた。
「そうなんですか。僕らはまだ茶髪のサンプルのみ確認していないんです。他はもう見たんですが」
「おう、それじゃついてこい。案内してやる」
 平静を装ってみれば、研究員は上機嫌で頷いた。実験材料として使う茶髪の人物を手懐てなずけたことが、よほど誇らしいようだ。
 先頭に立って歩く研究員の後に続きながら、グレンがクライドの肩をさりげなく叩いた。ちらりと振り返ってみれば、不安そうな目でこちらをじっと見ている彼と目が合った。クライドは大丈夫だと微笑して見せ、研究員の後を追った。
「お前らは、何の担当だ?」
「え?」
 先を歩く研究員の問いに、クライドは思わず妙な反応を見せてしまった。そうだ、研究員になりすましてみても研究員が普段何をしているのかクライドは全く知らないのだ。
「ああ、まだ何も任されてません」
 グレンが助け舟を出してくれたおかげで、クライドは不審がられずにすんだようだった。心の中で嘆息しつつ、クライドは白いだけの廊下をひたすら歩いた。
 研究員はクライドたちに比べれば年配者だが、ここに入ってからまだ十年も経っていないという。彼は研究員になる前は、高校で科学を教えていたらしい。
「ミンイェン様は本当に良い人だ。学校をクビにされた俺を、ここで働かせてくれるんだから」
「そうなんですか」
 あんな生意気で卑劣な少年が、良い人だなんて。否定してやりたかったが、クライドは澄ました声で心の中とは正反対のことを言った。
 隣を歩くグレンは、白衣のポケットに手を入れて気だるげに白いだけの廊下を眺め回していた。冷房のきいたこの建物の中では、長袖の白衣を着ていても暑くない。クライドも彼にならってポケットに手を突っ込みながら、黙って研究員の後を追う。
「お前らがここに入った理由は何だ?」
「研究に携わる仕事をしてみたかったんです」
 クライドが白々しい嘘をつけば、男は感心したように唸った。
「偉いぞ、君。ミンイェン様も、喜ぶことだろう」
 ひきつった微笑を浮かべつつ、クライドはふと考えた。この男は、何かにつけてミンイェンのことを美化して言う。しかも薄気味悪いことに、様をつけて呼んでいる。
 相手は声からして年下だ。もしかしたらクライドよりは年上だということもあるかもしれないが、少なくともこの男よりは大分年下だろう。たとえあの少年が権力者なのだとしても、『様』ではなく『さん』をつけて呼ぶのが普通の範囲内だと思う。宗教じゃあるまいし、自分より二十も三十も年下の子供を様づけで呼ぶなんて。
 ミンイェンは、よほど社員に慕われているようだ。しかし、あんな卑怯な手でしかクライドをここに呼べないような少年を、どうして慕うのだろう。というか、これは慕っているというより崇拝している感じに近い。
 クライドの住む国では、王にさえ敬称をつけない人がいる。大半の人がそうだし、王室関係者や権力者たちの面前でもないかぎり、様をつける人のほうが珍しいような気もする。
 けれど、宗教を信仰している人は違う。自分の崇拝する神や賢人を、例えばルクルス教なら『救世主ルクルス様』とか、レベン教なら『清らかなるレベン様』などと言った調子で、焦がれるような眼差しで呼ぶのだ。
 礼拝堂に集まった人々が、神や聖人、賢人などを呼び捨てにしているのは聞いたことがない。呼び捨てにしている人がいるとしたら、それは聖書を読んでいる牧師のみだと思う。聖書には登場人物の名前に敬称がついていないから、牧師だけは神を呼び捨てにしているのだ。
 クライドは、歴史が好きだが宗教は信じていない。だから、いもしない人物を崇拝し、熱烈なまでに慕う様子をはっきり言って異様に感じている。
 そしてこの研究員の発言にも、異様さを感じていた。ミンイェンは神か? いいや、ただの少年だろう。ただの、ずるがしこくて生意気な少年だ。
「ついた、ここだ。ようし、彼が被験体1020だ」
 研究員は言いながら、ポケットの中から真っ白いカードを取り出した。何をするのかと思えば、彼はそれを壁についていた溝に滑らせた。
 プシュッ、と軽い音がした。空気入れを上下させた時のような音。それは、電車のドアが開閉する時にする音にも少し似ていた。
 表面的には何も無いように見えたが、研究員はつかつかと白い壁に歩み寄り、その中へ消えていった。クライドは一瞬だけためらったが、彼に続いて白い壁をくぐる。
 この部屋の内装も、クライドたちのいた場所とほとんど変わりなかった。しかし、ベッドの周りに白いカーテンが引かれているのだけは異なった点だった。
「気分はどうだ、1020」
「最悪です」
 カーテンに閉ざされたベッドに向かって、研究員が声をかける。返ってきた冷たい声は、確かに聞き覚えのあるノエルの声に間違いなかった。
 声からすると、ノエルは酷く疲れている。そして彼の声のトーンは、出会って間もない頃の彼よりも更に不機嫌そうだった。
「採血するから、降りて来い」
 研究員は言った。そして、クライドとグレンを振り返って楽しげに微笑んだ。一瞬この男を殴って気絶させようかとも思ったが、あまりにノエルのことが気になってタイミングを見失ってしまった。
 研究員は楽しげな表情を崩さないまま、ドアの方へ向かう。途中で振り返って、彼はポケットからカードを出しながら満面の笑みを浮かべた。
「採血用の道具を持ってくるから、暫く1020と遊んでやっていいよ。壊さん程度に」
「はあ」
 どういう意味で、遊んでやれなんていったんだろうか。恐らくそれは、痛めつけても良いとかそういう意味なのだろう。ふざけるな。怒りが湧いてきたが、まずはノエルの無事を確認しなければ。
 彼が廊下へ出て行き、ドアが開閉している証である空気のような音がしたのを確認すると、クライドとグレンはすぐカーテンに閉ざされたベッドに駆け寄った。
「ノエル!」
 カーテンを翻しながら叫ぶと、ベッドの柵にもたれていたノエルが顔を上げた。やつれた顔だった。彼は眼鏡をかけているのに焦点が合わない目で、暫くクライドとグレンの間辺りを見つめていた。しかし、数秒して掠れた声を上げる。
「……クライド、グレン?」
 何も言わず、クライドはノエルの鳶色とびいろの髪をくしゃくしゃと撫でた。いや、正しくは何もいえなかったというべきだろう。再び再会できた喜びと、彼が衰弱しているという事実に打ちのめされる思いとの間に、クライドは板ばさみになっていたのだ。
 ノエルはきょとんとした顔でクライドを見ていたが、やがていつもどおりに微笑してくれた。その微笑があまりに懐かしくて、クライドはまた言葉を見失う。こんな短期間離れていただけだったのに、感じるこの切なさは一体何なのだろう。
「もう会えないかと思ったよ」
 クライドも、そう言うノエルと同じ思いだった。
「そんなわけないだろ、今までどんな時だって一緒にいたんだ」
 消極的なノエルに対し、グレンは普段どおりの楽天的な笑顔で言った。彼らのやりとりに、クライドも胸がじんとする思いだった。今までずっと一緒にいたのだ。だからこれからも、きっとずっと最高の友達でいられる。
 三人で、それぞれの経過を報告しあった。クライドは先ほど言い忘れたことを、この場で言った。レンティーノと電話したことは、グレンに言っていなかったのだ。
「あの男、僕のこと男娼だんしょうだなんて言ったんだ。許せないよ、あの人どこまで品のない男なんだろう」
 白いベッドから抜け出ながら呟いたノエルの言葉で、ようやく彼が不機嫌だった理由を見つけた気がした。クライドは首を捻り、グレンは声を荒げた。
「理解に苦しむな。ノエルのどこが? 言うならホストだっての」
「おいおい、待てよ。男娼よりはマシかもしれないけど、ノエルはホストにも見えないから」
 ちょっとずれたグレンの発言を修正しつつ、クライドはノエルを見た。ノエルは苦笑しつつも、少しだけ楽しそうだった。再会できたことを喜んでくれているのだろう。
 クライドは、彼を見つけられたことが誇らしかった。あんな少年の言ったことなど気にしていたくないと思っていが、やはりミンイェンが言った言葉が、まだ頭の中にきっちり残っているのだ。
 友情ごっこだとか、本当の友達ならはぐれずに一緒にいられるだとか。クライドの思う本当の友達とは、ミンイェンの言うようなものではない。どんなに遠くても、はぐれてしまっても、必ず再会していつもどおりに過ごせるのが友達なのだ。
「さて、トニーたち探そう。シェリーは人質だから待遇いいかもしれないけど、トニーはきっと辛いだろうから」
 言ってみれば、大切な友人達は頷いてくれた。クライドはグレンとノエルと一緒に部屋を出ようとしたが、そういえば研究員が帰って来るまで部屋がロックされた状態なのだということを忘れていた。どうしようか。
「また蹴破ったら今度こそまずいよな、グレン」
「ああ、まずいな。あのおっさん帰ってきたら、俺が昏倒させてやるよ」
 グレンは何気なく怖いことを言う。クライドは苦笑しつつも、彼に研究員のことをゆだねることにした。
 ほどなくして研究員は採血用の注射器などを載せたワゴンを押しながら現れ、ドアの傍で待機していたグレンにあっけなく気絶させられた。グレンの蹴りは鮮やかに研究員の鳩尾みぞおちをとらえ、彼はその一発の蹴りで本当に気絶してしまったのだった。
 クライドはグレンの手際の良さに見惚れていたが、研究員に歩み寄ることに思い至った。うつぶせに倒れた彼を仰向けて、白衣の中に忍ばせているカードを奪い取る。これが全部屋共通のものなら嬉しいと思いながら、クライドは壁に近寄った。
 彼がカードを溝に通して外側からドアを開けたように、内側からも同じ方法でドアを開けることが出来るはずだ。クライドは壁をさわり、溝を探した。溝はすぐに見つかったから、クライドはそこにカードを通した。またあの空気入れのような音がして、白い壁の向こうからエタノールの匂いがする風が流れ込んでくる。
 振り返ってみると、ノエルが研究員の傍に屈みこんでいた。彼も研究員のポケットを物色していたらしい。ノエルはクライドに気づいて顔を上げると、柔らかく笑みながら紙を見せてくれた。ノエルは彼のポケットから、地図を発見したようなのだ。サイズはB5で、四つ折りにされたあとがある。
「行こう」
 倒れた研究員を放置して、クライドたちは部屋を出た。そして、部屋の外からカードを使って部屋をロックした。ノエルは相変わらず長袖の私服でいたので、彼も研究員に扮装させるために備品庫に連れて行くことにした。


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