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転職の神殿を開きました 作者:土鍋

転職の神殿を開きました

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訪問

「僕たちにお客だって?」

 それは、彼らが宿屋の一室で今後の予定を相談している時だった。ノックの音と共に現れた主人の言葉を聞いて、アルミードは興味深そうな表情を浮かべた。

「はい、内密にお話があるため、こちらの部屋にお伺いしたいとのことです」

 内密の依頼。その言葉を聞いて、クルネは形のいい眉をしかめた。今までの経験上、内密の依頼というものにはロクなものがない。誰それを暗殺しろだの、これこれを奪ってこいだのと、まるで冒険者を犯罪者集団だとでも思っているような案件ばかりが思い出される。
 アルミードも同じことを考えていたようで、先ほどまでの興味深そうな表情を真剣なものに切り替えながら口を開く。

「内密……か。みんな、どう思う?」

「王都での内密案件だぜ? 十中八九ヤバい話だろうな」

 間髪を入れず答えたのは、自称盗賊のノクトだ。その言葉に他のメンバーが同意の声を上げるが、そこへ割って入る声があった。

「どうでしょうね。この王都は色々な勢力が複雑に絡み合っています。特に後ろ暗いことがなくても、堂々と動く御仁は少ないんじゃありませんか?」

 そう言うと、薬師のマイセンは開いていた本をパタンと閉じた。それは、客人を出迎えてもいいという意思表示だ。パーティーの参謀役がそう言うと、彼らの中に話くらい聞いてもいいんじゃないか、という空気が流れる。

「……ま、話を聞くだけならタダだからな。あんまりヤバい話をしそうになったら、痺れ薬でも投げつけてやるよ」

 最初に否定的な立場を表明していたノクトが同意したことによって、パーティーの意思は決まった。アルミードは宿屋の主人に対し、爽やかに髪をかき上げながら口を開いた。

「いいだろう、案内してくれたまえ」



 宿屋の主人に案内されて姿を現したのは、控えめに言っても胡散臭い男だった。臙脂色のゆったりしたローブを身に纏い、フードを目深に被っている。その場にいた何人かが、とっさに身構えたのも仕方のないことだろう。

 男はそんな反応に気を悪くした様子もなく、顔にかかったフードを後ろへよけると、その容貌を露わにした。年齢は六十歳くらいだろうか。やや独特の雰囲気はあるものの、そんな人間離れした姿ではない。なんとなく骸骨のような容貌を想像していたクルネは、内心でほっと胸をなで下ろした。

 男は、やや大仰な動作で一礼してから口を開く。

「初めまして、勇敢なる冒険者の方々。私は……そうですね、ジョンと申します」

 露骨な偽名だった。だが、逆にここまでくると「偽名だって申告してるんですから、これ以上追及しないでくださいね」というメッセージになる。その態度に幾人かの目が細められた。

「このパーティーでリーダーを務めているアルミードだ。それでジョンさん、内密の依頼があるとの事だが、どういった内容かな?」

 早速アルミードは本題に入った。この手の人間は、喋らせれば喋らせるほど、真実が見えなくなってくる。最初から単刀直入に聞くのが一番だと判断したのだろう。彼の質問を受けて、ジョンと名乗った男はゆっくりとした口調で説明を始める。

「実はですね、ここ数年、ちょっとしたものがこの王都に出回っていましてね」

 そう言うと、ジョンは懐から何かの包みを取り出した。その包みの中から現れたのは、きめの細かそうな茶色い粉末だった。彼はその粉末を少量指先でつまみ上げると、再び包みの中へさらさらと落とす。

「この薬には特殊な効果がありまして、使用すると神の御言葉が聞こえるそうなのですよ」

 肩をすくめながらニヤリと笑う独特の動作と共に語られたのは、にわかには信じがたい粉末の効能だった。ただ、クルネをはじめパーティーメンバーは誰一人として信じていないようで、皆一様に胡散臭そうな表情を浮かべた。

「ほう、それは興味深い! 少なくとも何らかの幻覚作用程度はあるのでしょうね……失礼ですが、ジョンさんはその薬を試したことがおありですか?」

 だが、信じる信じないは別として、この話題に食いついた男がいた。薬師のマイセンだ。その粉末を胡散臭く思っているのは他の仲間と一緒だが、薬の一種、もしくは薬の材料としては面白い実験材料だと思っているのだろう。

「もちろん試してみましたよ」

「え……」

 平然と答えたジョンに、誰かが驚きの声を上げた。その気持ちはクルネにもよく分かる。効果をそこまで把握しておきながら、自ら服用する気になれる眼前の男は色んな意味で稀有な存在だ。

「どうやら服用した人間によってある程度異なるようですが、少なくとも何らかの幻覚と多幸感を発生させるのは共通のようですな」

「となると、麻薬の類に極めて近い性質を持っているわけですね。……中毒性は?」

 即座に麻薬の一種だと判断したマイセンは、一番気掛かりな事項を尋ねた。その言葉に、ジョンは首を振りながら答える。

「残念ながら存在します。ですが、現時点でこの薬は禁止薬物指定を受けていません。つまり、これらの売買および使用は合法なのです」

「なるほど……。非常に興味深い薬ですが、市井に広く出回るべき代物ではありませんね」

「それで? 現時点では合法だっていうなら、僕たちには何もできないんじゃなのかい?」

 ジョンとマイセンの会話に割って入ったのはリーダーのアルミードだった。このまま二人に話をさせていると、話が前に進まないと思ったのかもしれない。

「私にもそれなりにツテはあります。現在、この薬を禁止薬物指定に加えるよう王国政府へ働きかけているところですが、相手はあの貴族たちです。なかなかすぐには事が運びません。ですが、だからといってこのまま手をこまねいている訳にはいきません。
 そこで、あなた方への依頼なのですが、この薬の製造元、散布元を突き止めてほしいのです。実は私も独自に調査していたのですが、途中で用心棒らしき男に阻まれてしまいましてね。命からがら逃げだしたところです」

 そう言うと、男は腕にかかっていたローブをめくり上げた。すると、そこには剣で斬られたような痕が生々しく刻まれていた。

「それなりに腕の立つ者を連れていたのですが、その男に斬り捨てられてしまいましてね」

「衛兵には訴えなかったのか?」

「下手をすると、私の身元がバレてしまいます。今回の件については、あまり衛兵を信じられませんのでね。正体を割り出されてあの男の襲撃を受ければ、今度こそ私は殺されるでしょう」

 アルミードの問いかけに対して、ジョンは流れるような言葉で説明した。それを聞いて、今度はクルネが疑問を抱く。

「ジョンさん、さっき衛兵を信じられないって言ってましたけど、ひょっとして、今回の事件の犯人は王国政府の内部や貴族の中にいると考えているんですか?」

「その可能性も考えています」

 少なくとも、手傷を負わされても衛兵に助けを求められない程度には、彼らが関与している可能性が高いということだろうか。クルネがそんなことを考えている間にも、マイセンが口を開く。

「それで、その警戒するべき用心棒の特徴などは分かりますか?」

「暗がりでしたので何とも……。ただ、おそらく男は固有職ジョブ持ちでしょうな。私の連れは非常に腕が立つ男でした。それをものともせず切り捨てられる存在といえば、他に考えられません」

固有職ジョブ持ちか……」

 アルミードが呟く。クルネは、仲間の視線が自分に集中するのを感じた。相手が固有職ジョブ持ちである以上、正面をきって相手するのはクルネになるだろう。固有職ジョブ持ちと戦った経験はあまりないが、他のメンバーに任せるわけにはいかなかった。

「……なぜ、その話を俺たちに持ってきた?」

 そこで初めて口を開いたのはグラムだった。寡黙な彼は、腕組みをしたままジョンに問いかける。

岩蜥蜴ロックリザードの討伐遠征ですよ。私にも独自の情報網がありましてね。あなた方がかの『聖女』や『戦闘司教』以上の戦果を上げていたことは存じております」

 そう言うと、ジョンはクルネの方へ視線を向けた。その視線の動きこそが、彼が正確なところを知っている何よりの証拠だった。
 普通に考えれば、パーティーのリーダーでいかにも剣士らしいアルミードや、屈強な肉体を持つグラムを主力と考えるのが筋だ。その彼らを無視して、大して戦力にならなさそうな容姿のクルネに目をやったということは、彼女が岩蜥蜴ロックリザードの群れの過半数を一人で屠った事を知っているということだ。独自の情報網とやらは伊達ではないようだった。

「なるほど。……ジョンさん、この話をお受けするかどうかは、仲間とよく話し合ってから決めたいと思います。返事は明日でもよろしいでしょうか?」

「おお、もちろん構いませんとも。また明日、こちらへお邪魔してもよろしいですかな?」

「いえいえ、依頼主に何度もご足労いただくなど、申し訳のない事です。私たちからお伺いさせていただきますよ」

 丁重に言葉を並べるマイセンの狙いはクルネにも分かった。ジョンの正体を突き止めたいのだろう。冒険者にとって依頼主の素性は重要だからだ。

「私はお願いする立場ですからね、そのようにお気遣い頂かなくても結構です」

「……そうですか、それではまた明日お待ちしています」

 だが、そう言われてしまえばそれ以上粘るわけにもいかない。元より期待していなかったのだろう、マイセンはあっさりと引き下がった。

「この薬、今まではその流通量も微々たるもので、あまり気にしていなかったのですが、最近大量に出回るようになってきましてね。この薬が広まってしまうと、王都の活力は確実に失われてしまうでしょう。それは私の望むところではありません。

……それでは、今日のところは失礼いたします。よいお返事を期待しております」

 そう言うと、ジョンは身を翻し部屋から去っていった。彼が宿屋から出ていったことを確認したうえで、アルミードは口を開いた。

「どう思う?」

「ジョンさんの言葉が真実なら、手伝うことにやぶさかではないのですが……」

「マイセン、あなたはあの薬に興味があるだけじゃないの?」

 弓使いのカーナが、マイセンに至極もっともなツッコミを入れた。彼女の言葉に、他のメンバーが次々と同意を示す。

「信用ありませんねぇ。……まあ、とりあえず今の段階では保留でしょうか。ノクトが首尾よくジョンさんの素性を突き止めてくれる事を期待しましょう。そのために明日まで回答を引き延ばしたんですから」

 そう、マイセンの言葉通り、この場に盗賊ノクトの姿はない。彼は特技スキル気配隠し(コンシール)を使用して、ジョンと名乗った男の後を尾けているからだ。戦闘ではあまり華がないノクトだが、こういった情報戦ではその特技スキルが活きてくる。

 彼らはいつもの鍛練をこなしながら、仲間が帰ってくるのを待つのだった。



「おい、ヤバいぞ」

 ジョンと名乗った男の追跡から戻ってきた盗賊ノクトは、開口一番でそう口にした。その様子に、残るメンバーが揃って身を乗り出す。

「ありゃ大物だ。この王都の守護神を祀っている……なんつったかな、とにかくかなり大きな宗派組織の関係者だぜ。それも幹部クラスとみた」

 その言葉を聞いても、あまりパーティーメンバーに驚きの色は見られなかった。その様子を見て多少つまらなそうな顔をするノクトだったが、そもそも彼の目的は情報の精度を高めることであって、仲間を驚かせることではない。その事を自覚している彼は、頭を切り替えると言葉を続けた。

「あのジョンってやつ、あんな怪しい雰囲気全開で帰るなら尾行は余裕だろうと思ったんだがよ。これが、意外と難しいんだ」

「ノクトの腕が落ちたんじゃなくて?」

「うっせえよカーナ。ありゃ間違いなく魔道具の類を使ってた。あいつに意識を集中している俺ですら、時々姿を見失いかけたからな。当然、周りの人間も誰一人あいつを振り返りゃしねえ」

 カーナの茶々をあっさり流して、ノクトは続ける。

「しかも、一度も後ろを振り返る様子がなかった。尾行に気付かれたとは思わねえが、尾けられても問題ない、って印象を受けたな」

 その言葉を聞いて、メンバー全員が黙り込んだ。尾行を気にしないというのは、どちらかというとプラスの情報だ。彼らを犯罪に加担させようとする場合、大抵の依頼主はその素性を隠そうとするからだ。

「本当にその宗派の人間なのか? 尾行を予想してカモフラージュに使った可能性は?」

「可能性は低いな。特技スキルフル稼働でできるだけ施設内での様子を確認したが、すれ違う奴らがみんな頭を下げてたからな。カモフラージュであそこまでやるのは難しいだろう」

「薄々そんな気はしていましたし、依頼主はその宗派の幹部と考えてよさそうですね。
……個人的には、この依頼を受けてもいいと思っています。今回の依頼内容はあの薬の出処を探るだけですから、法的には何の問題もありませんし。……まあ、ジョンさんの本音はその固有職ジョブ持ち用心棒を倒してほしい、といったところでしょうけれど、用心棒が現れることなく目的を達成できるならそれでもいい。そんなところでしょうか」

 マイセンの言葉にメンバーの幾人かが頷く。だが、性急に判断を下すとロクな事にならない。その事を知っている彼らは、その後も議論を続けるのだった。






「カナメ、帰らへんのか? ちょっと商店街に寄ってこうや」

 午後の部の授業が終わり、神学校から人気が少なくなってきた頃。帰る準備を終えたコルネリオが、俺に声をかけてきた。俺とコルネリオは、お互いに放課後の予定がない時はちょくちょく一緒に街へ出かけている。今日もそのつもりなのだろう。

「悪いな、今日はちょっと約束があるんだ」

 だが、今日はその誘いに乗るわけにはいかなかった。ちょっとばかり真面目な用事があるからだ。だが、コルネリオはそうは思わなかったようだった。

「カナメ……。自分、ひょっとしてまたあの綺麗な子らと逢引きする予定があるんちゃうやろうな?」

 コルネリオが疑うような目つきで俺を見た。あのパレードでクルネ、ミルティと一緒にいるのを目撃されて以来、どうもコルネリオの追及が厳しくなった気がする。そこで、俺は軽く反撃することにした。

「ないって。コルネリオこそ、あの魔法研究所の子はいいのか?」

 あのパレードの時に、コルネリオがちゃっかりミルティと同居している女の子と連絡先を交換していたことは知っている。まあ、後でミルティに教えられて知ったんだけどさ。
 だが、コルネリオは特に照れる様子もなく胸を張った。

「むしろ今から、その子に渡すプレゼントを買いに行くんや」

 どうやら、俺が思っていたよりも仲良くなっていたようだ。ミルティの同居人なら美人局ということはないだろうし、それは素直におめでたい話だった。

「それはおめでとう。……けど悪いな、本当に真面目な用事があるんだ」

 俺はそう言うと、珍しくまだ教室に残っているエディにちらっと視線を送った。王都が誇る『天才児』は、会話している俺たちに注意を払うこともなく、ひたすら何かを紙に書き続けていた。新しい論文か何かだろうか。

 俺の視線を追ったコルネリオが、彼を見て納得した表情を浮かべた。俺の肩に手を置きながら口を開く。

「なんや、自分もエディに卒業論文の相談をするつもりなんか。ちょい意外やけど、俺も他人の事は言われへんしな」

 正確にいえばちょっと違うのだが、わざわざそれを否定するのも面倒くさいので、俺はとりあえず同意しておいた。
 エディはさすが『天才児』と言われるだけあって、苦も無く見事な論文を書き上げる。その能力を見込んだクラスメイト達が、次々と彼に卒業論文の相談を持ちかけているのは事実だった。

 エディの性格的にそういうのは嫌がるだろうと思っていたのだが、曰く「特待生クラスは変わり者が多い。着眼点や発想が僕の周りにいる人間と違っていて面白いぞ」ということらしい。
 変わり者の権化たるエディにそう言われると、何だか引っ掛かりを覚えるが、みんながそれで幸せなら何の問題もないだろう。

「ほな、俺は帰るわ」

 鞄を持ったコルネリオが、そう言って教室を出ていくのを見送る。これで、特待生クラスの教室にいるのは俺とエディの二人だけとなった。そしてエディがまだ残っているのは、俺が彼に「少し時間をくれないか」と頼んでいたからだった。

「カナメ君、君が僕に話とは珍しいな」

 俺がエディの席の前に立つと、彼は珍しい事に自分から話しかけてきた。

「すまないな。ちょっとエディの意見を聞いてみたいことがあるんだ」

 俺がそう釈明すると、エディは興味深そうな表情を浮かべる。授業中にはあまり見ない類の顔だ。

「君はなかなか個性的な考え方をする人間だからな。僕の知的好奇心を刺激してくれるような内容であれば歓迎するぞ」

「エディの期待に沿えるかどうかは分からないけどな」

 そう言うと、俺は肩をすくめた。……なんとなく緊張するな。もしエディに「それはおかしい」ってばっさり一蹴されたら、さすがに悲しくなる自信がある。

「それで、どんな話だ?」

「……固有職ジョブについての話だ」

 その内容が予想外だったのか、エディは一瞬きょとんとした顔をした。おそらく、卒業論文っぽくないと思ったのだろう。たしかに転職ジョブチェンジは教会の『奇跡』の一つだが、神学校生が手を出そうと思う内容ではない。なぜなら資料の収集や実証が非常に難しいからだ。

 だが、そもそも俺は卒業論文にこのネタを使うつもりはなかった。資料や実証の点でも難しいし、わざわざ教会に目をつけられそうな論文を書いても仕方がない。ただ純粋に、俺の好奇心と職業病だ。

 俺はエディの目を見て、静かに自分の考えを口にした。



「――その昔、この世界は固有職ジョブ持ちで溢れていたんじゃないのか」






固有職ジョブ持ちが……?」

 どうやらそれは、エディも考えたことがない命題だったらしい。彼が俯いて思考の海に沈むのを、俺は黙って見守った。

「……カナメ君、君がそう考える根拠はなんだ」

 やがて顔を上げたエディは、真剣な眼差しでそう要請した。少なくとも一笑に付されるレベルではないと知って、俺はほっとした。

 理由はいくつかあった。例えば、膨大な量の魔法書。そもそも魔法職の固有職ジョブ持ちなんて大した数がいないのに、あれだけの魔法書が今に伝えられている事には違和感があった。どう考えても、需要と供給のバランスが悪すぎるのだ。

 魔道具にしたってそうだ。魔道具を作ることができる鍛冶師ブラックスミス細工師アルティザンの数は非常に少ない。いくら古代文明で魔道具が発達していたとはいえ、もし現在と同じく国に一、二人レベルの人口比率でしか生産系の固有職ジョブ持ちがいなかったとすれば、遺跡からあんなに大量の魔道具が発見されるような事にはならないだろう。

 それに加えて、この世界の神話や英雄譚では登場人物のほとんどが固有職ジョブ持ちであることも引っ掛かった。主役級が固有職ジョブ持ちなのは当然だとしても、名もない一兵卒ですら固有職ジョブを持っているような記述が多々見られる。神話に強さのインフレはつきものだが、なんというか「人は固有職ジョブを持っていて当然」のような書きぶりが気になったのだ。

 そのあたりの話をエディに伝えると、彼は再び考え込み始めた。

……実のところを言えば、他にも理由はあった。俺がルノール村の住民で転職ジョブチェンジさせたのはクルネとエリンの二人だけだが、他にも資質がある人間を三、四人ほど村で見かけている。

 あの村の人口は二百人ほどだから、人口の二、三パーセントは固有職ジョブ持ちになれる計算だ。もちろん、それだけではまだまだ想定している人口比率には至らないが、『当人の修練や経験が固有職ジョブの資質を高める』という俺の仮説が正しければ、もっと固有職ジョブ持ちの数は増やせるはずだ。そう考えると、むしろ現在の固有職ジョブ持ち人口の少なさの方が異常な気がしてきたのだ。

 もちろん、どれも確たる根拠にはならないし、我ながら唐突な思いつきだとは思う。だが、小さな違和感が一つ一つ積み上がった結果、俺はそういう結論に至ったのだった。

 その考えに至った俺は、まず最初に神学校の図書館で関係ありそうな本を探したのだが、残念ながらそのあたりを詳しく論じている本は見つからなかった。
そこで俺は、自分の考えがこの世界にとって荒唐無稽な与太話なのかどうか、天才児と呼ばれるエディに聞いてみたかったのだ。

「……今と昔で人口と固有職ジョブ持ちの比率が違う、か。正直なところ考えたこともなかったぞ」

 かなり長い沈黙の後で、エディは口を開いた。

「だが、面白いな。君が今挙げた理由以外にも、いくつかその説の補強要素になりそうな話に心当たりがある。この場で真否の判断はできないが、君のその仮説には研究するだけの価値があるな」

「そうか、ありがとう。……しかし、もし仮説が正しかったとするなら、今は何でこんなに固有職ジョブ人口が少なくなったんだろうな?」

 それは、少し気になっていたことだった。まさか転職ジョブチェンジ能力者が魔女狩りに遭ったとか、そんなことはないだろうな。

「仮定の話だ、思いつきを口にすることしかできないが、人種族という種の衰退、もしくは、古代文明は人を転職ジョブチェンジさせる技術を持っていた。……ぱっと思いつくのはこのあたりだな」

 俺は、エディが最悪の想像を打ち砕いてくれたことに心の中で感謝した。まあ、種の衰退とかはある意味もっと大問題だろうけどね。贅沢は言うまい。

「ところでカナメ、君はこれを卒業論文にするつもりなのか? もしそうなら、僕もある程度協力しないでもないが」

「いや、それは――」

 俺がエディの言葉を否定しようとした時だった。突然閉まっていた教室の扉が開かれた。

「おや、まだ残っている生徒がいましたか」

 そこに現れたのは、俺たち特待生クラスの担任であるマーカス先生だった。見回りにでも来たのだろうか。どちらかというと校門など校舎外を見回っているところをよく見かけるが、今日は内回りの日なのだろうか。

「マーカス先生、ちょうどよかった。カナメ君の卒業論文についてなのだが」

「あ――」

 と、エディが突然マーカス先生に話しかけた。俺が止める隙もなく、エディは俺が話したテーマをマーカス先生に話して聞かせる。
 いえ、卒業論文にするつもりはないんです。そう言おうと口を開きかけた俺だったが、ふとマーカス先生の真剣な表情に気付いた。

「……マーカス先生?」

 先生の様子はどこかおかしかった。コルネリオが卒業論文のテーマを「異性が喜ぶ贈り物についての考察」にすると言った時も、ミュスカが「注目を浴びない立ち居振る舞いの研究」にすると言った時も、にこやかにアウトを出しただけだったのに、なぜこんな真面目な表情をしているのだろうか。

「はい!? ……ああ、失礼しました。ちょっと別の考え事をしてしまいました」

 先生はそう言うと、俺に視線を合わせてくる。

「カナメ君、なかなか面白い仮説だとは思いますが、神学校の卒業論文としては難しいかもしれませんね。実証や資料の収集が困難であることが予想されますから、今から卒業までの半年足らずで間に合うかどうか分かりません。
 内容が内容なだけに、教会の『聖女』様にも取材する必要がありそうですしね」

 どうやら、マーカス先生はあまりこのテーマに気乗りがしない様子だった。あえて教会の『聖女』の名前を出してハードルを上げたのも、俺に思い留まらせようとしているように思えた。まあ、元々俺にそんなつもりはなかったので、さっさとテーマを撤回しようと口を開く。

「エディにも言いそびれていたのですが、私はそのテーマで卒業論文を書くつもりはありません。ただ彼に意見を聞いてみただけです」

 俺がそう言うと、エディは不思議そうな顔で俺を見ていた。逆に、マーカス先生は安心した表情を浮かべている。

「そうですか。せっかく見つけたテーマなのにすみませんね。ああ、もし別のテーマを思いつかないようなら相談に乗りますから、いつでも頼ってください」

 マーカス先生はそう言うと今度はエディの方を向く。

「エディ、あなたの卒業論文は以前聞いた通りで変更ありませんね?」

「ああ、僕の卒業論文となれば、あれくらいの事はしなければな」

「……そうですね、楽しみにしていますよ」

 どうやらエディはすでに卒業論文のテーマを決めているようだった。それもなんだか大作っぽいな。そのエディの返事を聞いて満足したのか、マーカス先生は早く帰るように、と俺たち二人に言い残すと教室を出て行った。

「カナメ君、よかったのか?」

 先生の足音が遠ざかるのも待たずに、エディは口を開いた。

「ああ、卒業論文にするつもりがなかったのは事実だ。……それと、できればこの話は公に出さないでもらえないか」

「安心したまえ、僕は人の発案を横取りして論文を書くような真似はしない」

 そう言うと、エディは真面目な顔で頷いた。そういう意味じゃないんだけど……まあいいか。結果オーライだ。これでエディに何かあったら申し訳ないからな。

 俺は心の中でそう呟くと、今度こそ本当に卒業論文のテーマを考えるのであった。






 このクローディア王国には、二つの本神殿がある。一つは神殿派の代表格とされるダール神殿。そしてもう一つが、俺の目の前にあるクルシス神殿だ。

 王都にある神殿巡りを始めて何日目だろうか。社会勉強も兼ねて、俺は王都にあるほとんどの神殿を訪問していた。当初、元の世界の就職活動をイメージしていた俺はだいぶ気が重かったのだが、どうやら神学校のブランドを甘く見ていたらしい。

 ほとんどの神殿は、俺が神学校の活動許可証を見せると、下にも置かぬ扱いで神殿を案内してくれたのだ。元の世界では、圧倒的な買い手優位の労働市場しか経験のない俺としては、逆に落ち着かなくて仕方がなかったくらいだ。

 そんな事情もあって、俺はけっこう本命な神殿を目の前にしても、あまり緊張せずにいられるのだった。

「あら、カナメ君じゃない」

 そんな事を考えながら、俺が神殿の受付での会話をシミュレートしていると、突然背後から聞き覚えのある声が投げかけられた。

「この声はセレーネか」

「正解よ」

 後ろを振り返ると、そこには予想通りの女性が立っていた。艶やかな紫髪に切れ長の目、そして相変わらずの色気の発散ぶりに、神殿へ行こうとする参拝者か何かがちらちらとこちらを眺めてくる。
 技芸神クルシスはその名の通り人の技や芸を司っているため、ひょっとするとセレーネは参拝に来た踊り子か何かと勘違いされているのかもしれないな。……まあ、俺だって未だにセレーネが神学校生だと思えないんだから、人の事は言えないが。

「カナメ君も今日が訪問日だったのね。心強いわ」

 そう言ってセレーネは艶然と微笑んだ。彼女なら、どこでも一人で乗り切ってしまいそうなイメージがあるんだが、それは言わないでおいた方がよさそうだな。

「あら、どうかした?」

 そんな内心が顔に出ていたらしい。セレーネがこちらを覗き込んでくる。

「いや、なんでもない。実を言えば、ここが一番気になっている神殿だからな。ちょっと緊張してる」

 言い訳のように口にした言葉だったが、それ自体は本当のことだ。俺は神学校の図書館に入り浸り、七大神をはじめ色々な宗派の教義や特色を調べてみたのだが、その中で一番しっくり来たのがこのクルシス神だったのだ。

 技芸神と言われるだけあって、クルシス神は能力の成長を司っている。成長といっても、身長が伸びるだとか、植物が育つだとか、そういう物理的な事象は大地神グラシオスが司っており、どちらかというと内面の成長や技術の習得、進化という意味での成長という意味合いが強い。

 そして重要な特徴の一つとして、自身の技術の向上を祈願する者や、特技スキルを授かりたい者が参拝したりすることも多いため、別宗派の人間が割と気楽に訪れるという変わった特徴があった。

 転職ジョブチェンジ能力を神殿の一員として使用すると考えた時に、「転職ジョブチェンジさせていいのは同じ宗派の信徒のみ」なんて縛りをつけられるのは正直ご免だった。詳しい確認はこれからする必要があるだろうが、この宗派ならその辺の事については寛容に思えたのだ。

「ふうん、意外ね。カナメ君は風神エネロープ様か、闇神ノマド様のどちらかが本命だと思っていたのに、外れちゃったわ」

 セレーネがなぜその二柱だと思ったのかが気になって仕方ないが、ここは敢えて黙っていることにしよう。すると、セレーネがさらに言葉を重ねてくる。

「そしてやっぱり、教会派じゃないのね」

 言うまでもないことだった。奇跡を売り物にして、ごく一部の資金を捻出できる人間にだけ転職ジョブチェンジの儀式を行う教会のやり方は、あまり好きにはなれなかった。
 いや、ある意味では独占企業の正しい姿だと思うんだけどね。どうにも心に引っかかってしまうのは、俺が日本人だからだろうか。

「それはセレーネだって予測してただろ?」

「もちろん私は予測していたけれど、ミュスカが寂しがるんじゃないかしら」

「人生の岐路を人間関係で選ぶと、失敗した時に色々きついからな。……というか、別に会えなくなるわけじゃあるまいし、そこまで寂しがる必要もないだろ?」

「ミュスカは『聖女』よ。一般的な聖職者よりも遥かに多忙なスケジュールが組まれるはずだわ。まあ、彼女がお世話になっている司教さまはバルナーク大司教の派閥だから、そんなひどいスケジュールを組んだりはしないと思うけどね」

 じゃあそこまで悲観する必要はないんじゃないか、そう言おうとした俺に、セレーネが唇を抑えるジェスチャーをする。

「カナメ君、今『じゃあ別にいいじゃないか』って思ったでしょ」

 む、鋭いな。俺が沈黙していると、セレーネが艶っぽい溜息をつきながら口を開いた。

「カナメ君は紳士だし、頭もいいし、胆力もある。運動神経だって悪くないわ。それに、どこか底知れないところもミステリアスで人を惹きつけると思う。ただ、その姿勢がねぇ……?」

 あれ。最初は褒められたのかと思ってたけど、ひょっとして俺、ダメ出しされてる?

「もし私だったら、もっとグイグイいくところだけど、あの子にそれは無理よねえ……」

 そう言って頬に手を当てると、セレーネはそのまま神殿の受付へ向かって歩き始めた。その様子を見て、俺も慌てて彼女の後を追う。

「こんにちは、今日はどのようなご用でしょうか? 参拝ですか?」

 俺たちに気付いた受付の女性が声をかけてくる。

「初めまして、ノルヴィス神学校より参りましたカナメ・モリモトと申します」

 そう言いながら、俺は神学校が発行した活動許可証を取り出した。隣を見れば、セレーネもいつの間にか許可証を手に持っていた。

「え!? しょ、少々お待ちくださいね!」

 そう言うと受付の女性がバタバタしながら奥へと走って行く。やけに驚いていたようだが、ひょっとしてこの神殿、あんまり神学校生が来ないのかな。つまり、人気がない……?

 そんなことを考えていると、受付さんがまたバタバタと戻ってきた。彼女はしばらく息を整えた後で、俺たちを応接室らしきところへと案内してくれた。

「まもなく案内の者が参りますので、しばらくお待ちください」

 そう言うと、受付の女性は軽くお辞儀をして去って行った。あとにはぽつん、と俺たち二人だけが残される。

 せっかくの機会だし、と俺は通された応接室を観察することにした。なかなか広い応接室で、十人くらいまでなら快適に過ごせそうだった。さすが本神殿といったところだろうか。
 ただし飾り気は少なく、部屋にあるのはソファーとローテーブル、そして小さな置物が一つあるくらいだ。よく見るとソファーやテーブルに細かい傷が入っているが、だいぶ年季の入った調度品のようだし、それは仕方がないことだろう。

「――ねえ、カナメ君」

 俺がそんな事を考えていると、不意にセレーネが声をかけてきた。彼女の瞳が真剣なことに気付いて、俺は五感を研ぎ澄ませる。

「変な音がしない?」

 セレーネがそう言うのと、俺が物音の原因をつきとめたタイミングはほぼ同時だった。どうやら、音は応接室の隅の床から聞こえてくるようだ。俺が音のする方へ視線を集中させていると、やがて敷かれていた絨毯がむくっと盛り上がった。

「……!」

 その光景を見ても悲鳴を上げないセレーネに感心しながら、俺は静かにソファーから立ち上がった。あの動きは、どう見ても何かが這い出ようとしているものだ。

 俺はセレーネを促して、ゆっくりと応接室の扉へとにじり寄る。わざわざ謎の生命体の正体を確かめようとするほど、俺は命知らずではない。というか、ただの神殿見学に来ただけだし。

 そして扉まであと数歩、というところまで近づいた俺たちだったが、それが間に合わなかったことを悟った。突然盛り上がっていた絨毯の一角がめくれ上がったのだ。そしてそこから現れたモノの正体を見て、俺は思わず声を上げた。

「クルネ!?」

「え!? ちょ、あれ、カナメ!? なんで? ここどこなの?」

 そう、絨毯の下から現れたのは、俺がよく見知っているクルネ・ロゼスタール当人だったのだ。だが、俺たち以上に彼女は混乱している様子だった。それを見た俺は、クルネの傍まで近寄ると彼女の肩に手を置いた。

「落ち着けクルネ。ここはクルシス神殿の応接室で、俺は所属宗派を決めるためにこの神殿を見学しているところだ」

 そう言うと、俺はクルネの中に言葉が浸透するのを待った。やがて、彼女の瞳に理解の色が宿り始めたのを見て、もう大丈夫だろうと判断する。

「それで、クルネは何故そんな斬新な登場の仕方をしたんだ?」

「そこにスポットを当てないでよ……」

 少し赤くなりながら、クルネが顔をそらす。もう少し彼女をからかうべきかどうか悩んでいると、もう一人の同室者から声をかけられた。

「あら? あなたはたしか、パレードの日にカナメ君と一緒にいた……」

 そう言いながら、セレーネは小首を傾げた。クルネの方も心当たりがあったようで、はっとした表情を見せる。

「あ、カナメの学校の……」

 だが、そこから彼女たちが自己紹介を行うような余裕はなかった。なぜなら、規則的な足音が一つ、こちらへ近づいて来ていたからだ。

「クルネ、見つかるとまずいならソファーの下に隠れろ。それとも絨毯の下に戻るか?」

 俺は頭を切り替えると、クルネに二択を迫った。この部屋には調度品が少ないため、それくらいしか身を隠せるところがないのだ。幸いなことに、この部屋のソファーには長めのカバーがかけられており、あまり足元が見えない作りになっていた。

 ちなみに、彼女が這い出してきた絨毯は、だいたい元の形に戻してある。床には穴が開いているのだろうが、わざわざあの隅っこに立とうとしない限り、誰かが落ちることはないだろう。

「絨毯の下には戻れないわ」

「ソファーの下へ。……セレーネ、すまないが頼めるか?」

 クルネの返事を聞いて、俺は即座にセレーネに協力を依頼した。

「もう、高くつくわよ」

 セレーネはそう言いながら、ソファーへ掛け直した。それとほぼ同時に、クルネが俺たちの向かいのソファーの下へと潜り込む。
 そんなクルネの行動を見て、俺はなるほど、と感心した。どうせソファーの下に隠れるなら、俺たちの足元よりにいるよりは、神殿関係者の足元に隠れた方が見つかる可能性は低い。対面の位置に隠れていた場合、ひょんな拍子に視線を下げられたら見つかってしまうものな。

 クルネが潜り込むのと、部屋の扉が開くのとはほぼ同時だった。

「お待たせしました、神学校生の方々。本日お二人をご案内させていただくテイラー・マクダニルと申します。当神殿で助祭を務めております」

 そう言って一礼したのは、まだ二十代後半であろう青年だった。癖っ毛なのか、くるくるとカールしている髪が特徴的だ。彼は人好きのする笑みを浮かべて、俺たちに握手を求める。
 若干セレーネの雰囲気にたじろいだようにも見えたが、そこはさすが聖職者と言うべきか、それ以上の動揺を表に出すことはなかった。

「それでは、早速ですが当神殿をご案内しましょう」

 テイラー司祭に促されて、俺とセレーネはゆっくり立ち上がった。そして、やや不作法かな、と思いながらも俺は彼に話しかける。

「噂には聞いていましたが、こちらの神殿には関係者だけではなく、一般の人々もたくさんいらっしゃるのですね。やはり特技スキルを覚えたい兵士さんや冒険者の方々が多いんでしょうか?」

「そうですね、他の宗派の方でも、当神殿には気軽にいらっしゃいますよ。そういう意味では、なかなか他所では経験できないような事も多いと思います」

 突然の質問にも関わらず、テイラーさんはしっかり答えを返してくれた。なんていい人だ。そしてその人の好さにつけこむように、俺は話を続けた。

「やっぱりそうなんですね。ちょっと前に、そこの廊下で戦士らしき人とすれ違ったものですから、つい気になってしまいまして」

「ああ、なるほど。本来ここは関係者以外立ち入り禁止のエリアなのですが、よく参拝の方が迷いこんでしまうんですよ。もう少し分かりやすい注意書きを用意したほうがいいかもしれませんね」

――ありがとう、テイラーさん。俺は心の中でテイラーさんに感謝の言葉を捧げた。たぶん、今頃クルネもソファーの下で彼に感謝しているはずだ。

 そう、俺がわざわざフライング気味に会話を始めたのは、ソファーの下に隠れているクルネに対して、ここがどんなエリアで、部外者が見つかるとどう扱われるかを知っておいてもらいたかったからだ。

 まさか、関係者に見つかった時の対処法まで教えてくれるとは思わなかったが、それこそ神のお導きというやつだろうか。俺たちが部屋を去った後、クルネはこっそり廊下へ出て、この辺りを歩いている神殿関係者に「道に迷ったんです……」と言えばそれで脱出できることだろう。

 俺はクルネが無事に脱出できることを祈りながら、彼女が隠れている応接室を後にしたのだった。
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