表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/122

06 北の~魔王城には~♪

タイトルは小節をきかせてお願いします(笑)


レツの背中に乗って、ディルナンさんに抱っこされて快適な空の旅。

ディルナンさんの抱っこは安心感が半端ない。気付いたら寝てました。

ん? 何で寝てたって分かったかって??




「ディルナン隊長、子供誘拐してきちゃダメじゃないですかー!!」




叫び声に叩き起こされましたので。


「ぴっ!?」


何か最近、妙な悲鳴(?)ばかり上げてる気がする。




気付いたら、華美ではないが重厚で立派なお城の敷地内。此処が北の魔王城ですか。

現在地は時計塔付きの巨大な城門。周りには物語の挿絵にあるような騎士の格好をした男の人達。

ただ、持っている武器は剣だったり槍だったりとその形も様々で、槍にがっつり刃が立ってるのは見ただけで分かるけど。この場所の警備員さんと思われる。

目の前にいる、叫んだ兄さんもそうだ。


「…テメェ、ユーリが起きちまっただろうが。ぁあ?」

「ぎゃあああぁぁぁっ!

ディルナン隊長、無理っ、死ぬぅっっ。

いでででででで!!」


…ディルナンさん、般若顔負けのお怒りっぷりです。非常に怖いです。

叫び声上げた兄さんの頭を右手で鷲掴みにしております。どれだけの力が加えられてるのか、ミシミシ頭蓋骨が軋む音が聞こえてますっ。

見てるこっちが痛くなりそうなんだから、絶叫するのは当然だって! 

しかも、さりげなく体が浮きそうだよね?!


目の前の光景にガクブルしていると、ディルナンさんの体が何かの衝撃に揺れた。

それと同時に、締め上げられていた兄さんがぼとっと地面に落ちた。全く動く気配が無いんですけど。おーい、兄さん、大丈夫かーい?




…返事がない。ただの屍の様だ。


「何をしているのです? ディルナン。子供が怯えているでしょう」

「…エリエス」


高めだけど男の人の声がディルナンさんに制止をかけた。その声を聞き、ディルナンさんが振り返る。


いつの間にかディルナンさんのすぐ後ろにいたその人は、神官服っぽいローブ姿を身に纏った黒のストレートの長髪に碧い瞳のどえらい美人さん!

エリエスなんて、名前もお美しいんですね!!

ビジュアル系も、二次元も、そこらの美人な女の人も目じゃないわー。


「こんにちは」


思わずガン見してたら、微笑んで挨拶されたよ。

優しげな笑顔、プライスレスっっ。


「こんちはー」


はっ、いかん。ここは社会人としてきちんと挨拶しなければ。

接客もしてたから笑顔ぐらいは作れるぞ。


でも。

そんなお美しい微笑を向けないでー! 溶けちゃうでしょ!?

もう無理、見てられない! ディルナンさん、避難させて下さい!! 逃げ場が無いからへばりつく!!!


「ふふ、可愛らしいですね」

「可愛いだろ」


美形二人揃って何を言うかっ。余計照れるじゃないかっっ。


「ユーリが気持ち良さ気に眠ってたってのに、この阿呆が人の話も聞かずに訳の分らん事を叫んで叩き起こしてくれやがってな。極刑もんだろ? それで締め上げてたんだが、お前に殴られて止めた」


え? さっきの揺れた衝撃は、エリエスさんがディルナンさん殴ったせい??


「あぁ、さっきの誘拐云々の叫び声がそれでしたか。寝ている子供を叩き起こすとは確かに極刑モノですね。ですが、子供を怖がらせてはいけません。やるなら、見てない所でお願いします。教育にも悪いですし」


…あるぇ、二人から非常に物騒な台詞が聞こえた気がする。極刑って、一番重い刑罰だよね? え、私叩き起こしただけで??


「今なら見てないし、イケるか」


ミシッ


「ぎゃあっス!」

「イケますね」


ミシミシッ


「ぎょえぇっ!!」


見てない所で、惨劇が起こってませんかー!?

ミシミシ軋む音と絶叫リターン。しかも、二回。

ディルナンさんが動いたタイミングと一回目の絶叫が一致してるから、ディルナンさんが先に踏んだんだと思う。でも、二回目のエリエスさんの声がした時の方がイイ音が…。

こ、怖いよー!


「うぇ…」

「「“うぇ”?」」

「痛くしたらダメなのー」


いかん、怖いと思ったら、涙が出てきた。肉体年齢に精神年齢がひきずられてる。

昨日から泣きすぎじゃないか、私。

しかもへばりついてるから、ディルナンさんのコック服に鼻水ついたかも。ゴメン、ディルナンさん。


「あー、この程度で傷む様な柔なヤツはこの城にはいないから大丈夫だ、ユーリ」

「そうですよ。明日にはピンピンしていますから、泣かなくていいのですよ」


うぅ、二人掛かりで慰められてるよ。

背中を撫でてくれる大きくて固い手はディルナンさんだ。頭を撫でてくれてる、大きいけどほっそりとした指の持ち主はエリエスさんだね。申し訳ない。でも、撫でられるのは恥ずかしくも嬉しいんだ。

「撫でて」って普通に甘えられるのは子供の特権だって知ってるから。


しばらくして落ち着いてから恐る恐る顔を上げると、少し困った顔をしていたディルナンさんが笑った。

タオルが出現して顔を拭かれる。何から何までお世話掛けます。そしてやっぱり鼻かめって?ちーん。




あれ、例の痛め付けられてた兄さんがいないんだけど。

キョロキョロ見回すと、門の警備員らしき人達に笑顔を向けられるか、目を逸らされる。

前者の人は子供相手だからだと思うが、後者の人よ、一体何を見たんだ!?


最後にエリエスさんと視線が合うと、にっこり笑顔を頂きました。ただでさえ花の顔と言えるのに、その笑顔が美しすぎて思考回路がオーバーヒート。ぎゃふん。


美形は遠くから観賞するに限ります。近くで見たいのは美味しそうな御飯。

見るだけじゃなく、当然食べるけど。もちろん、温かい物は温かい内に、冷たい物は冷たい内にね。

最上の状態で頂くのが一番です。(現実逃避本日二回目)







ディルナンさんに連れられてやって来た北の魔王城には、やたら美人なエリエスお兄様がいらっしゃいました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ