41話 締めは中華で
二章まではグルメ要素強めです。
ドレークの肉は一匹と半分が残った。
ドレークの保存法がわからない。塩漬けかな?
「ヨドさんとこに持っていきましょうか」
「いいんじゃないか」
「でも、持っていきすぎな気もしますね」
ラビットも大量に持って行ったし、ヨドさんパンクしないかしら。
「報告だけして、どうするかはヨドさんに確認すればいいだろう」
「そうですね」
とりあえずドレーク肉はヨドさんのところに持っていくことにした。
どうやって調理するかも気になるし。
温泉から家に帰るとき。先生がマグマプレートを持って帰ると言い出した。
大変気に入ったみたいだ。
「こ、これ重いですよ」
「大丈夫!!」
前回の小さ目ではなく、今回は捨てるつもりだったので、かなりでかい。
まぁ、形がかなりいいからありがたいんだけどさ。
十キロ以上あるでしょこれ。
むちゃくちゃ重いマグマプレートを持ちながら先生は帰った。
一時間かかる道のりを二時間半はかかって帰ってきたらしい。
風呂上りなのに重労働する先生。
俺と設楽さんは先に帰った。だって遅いんだもん。
俺は一人ヨドさんのところへ。ロックドレークの肉を渡す。
「ほぉ~珍しいね。ドレークか」
見ただけでわかるとは流石だ。
「湖沿いでは結構捕れるんだよ、岩石地帯のは食べたことないけどね」
「へぇ~」
「湖の町には王都へ行くときに立ち寄るはずだよ」
「え? そうなんですか?」
「中継地点だからねぇ、観光都市としても有名さ」
ついでに王都までの道のりを教えてもらった。
一日目 村~野営①
二日目 野営①~野営②
三日目 野営②~湖の町
四日目 湖の町~宿場町
五日目 宿場町~王都
湖の町から王都までは、道が整備されてるので走りやすいらしい。
夜走るのは危険だから、朝一出発して夕方には休むとのことだ。
「まぁ、長旅だから疲れるだろうけど頑張りな」
「ありがとう、そうだドレーク肉なんだけど、どうしたらいいかな? 保存とかできるの?」
「ドレークは保存には向かないねぇ、塩もみすりゃ五日ぐらいは大丈夫だけど」
「そっか、さっさと食べちゃったほうがいいね」
「ふむ、少しもらってええかえ? ドレーク料理をつくってやるよ」
「お、それは楽しみ」
「ふぉっふぉ、湖風のドレーク料理をご馳走しようかね」
「おぉ~」
俺たち三人にストライクバードの巣と、ドレークの料理をふるまってくれるとのことだ。
明後日の夜にみんなでお邪魔する約束をして、ヨド家を後にした。
ドレーク肉が結構余ってるので、ご近所さんにお裾分けした。
といってもアイシャさんに渡しただけだけど。
「みなさんで食べてください」
「こりゃまた変わりもんだね! ドレークなんて食べたことないよ!」
「はは、焼くと結構おいしいですよ」
ご近所付き合いも大切です。
家に帰ると、庭にマグマプレートが置いてあった。
さすがに疲れたのか、先生は眠りについてた。
さすが体育の先生だけあって体力あるわ~。
あれ? 体育だっけ。
はて?
――――
翌日は狩りに出かけた。が、異変があった。ラビットが少ない。
一日粘って、捕まえたのは四匹だけだった。
翌日、先生と二人でハンター達のところに顔を出した。
ラビットが見つからないことを話すと、山側に移動したんだろうとのことだ。
春先、ホールラビットは比較的森側で生息するが、
次第に山側に行くらしい。
おそらく繁殖のためではないかとのことだ。
「へへ、まぁ今後狩りがしたいなら、一緒にやろうぜ」
「そうですね、ウィンウィンでいきましょう」
「うぃんうぃん? なんじゃそりゃ」
「ははは」
「そういえば、ワニってどうなりました?」
「絶賛解体中よ! 見てくか?」
「是非是非」
ワニは小さな広場で解体されていた。
おそらく二体分の革が天日干しされている。
「ほぉ~すげぇ」
「今年は大量だったからな!
二体分の革は、次の王都までに天日干し完了させて持ってく予定だ。残り二体は次だな」
ちょうど三体目の解体に取り組んでるところらしい。
五メートル級のワニが今にも動き出しそうな感じで置かれている。
背中に出刃包丁のようなナイフを突き刺す。
真っ直ぐ尻尾の先に向けて切込みを入れていく。
今度は前足の付け根から腹にかけて切込みを入れる。
「っふっし!」
ベリベリベリ!!
革を剥いでいるのはリーダーの息子だ。名前はアイン君。
切込みから革を掴み思いっきり引っ張ると、革がベリベリ剥がれる!俺が知ってる鰐革だ!
「あんなにきれいにとれるんですねぇ」
「っま、まだまだだがな。今回は俺がこんな状態だからな」
怪我したほうの手をヒラヒラさせてアピールする。
「怪我はどうですか?」
「もうばっちりよ! 王都までには完治してるだろ、へへへ」
「そっか、リーダーも王都来るんですね」
「まぁ、通常は俺とサブが行くことが多いな」
「へぇ~」
「特にサブは王都に住んでたからな、顔見知りも多い」
「なるほど」
「だから俺は王都行ったら遊んで帰るだけだ、がははは!」
おいおい、なんてリーダーだ。
「それはそうとよ、おめーらは誰が王都行くんだ?」
「へ?」
「いや、6人乗りの馬車だからな、村長、ディーン、俺、サブとあと二人だろ」
「……あ!!」
「なんだ、決めてなかったのかよ、へへへ」
これはまずい、全員行けるものだと思ってた!
緊急の議題ができてしまった!
「先生! ちょ、ちょっと!」
「ん?」
「先生!まずいことになりました!」
「なんだい」
「王都には2人しかいけません!」
詳しく説明した後に先生が一言。
「じゃぁ、赤井君と設楽さんでいいな」
「え、でも」
「行きたいっちゃ行きたいけど、二人が適任だろう」
こ、この人、大人やぁ~。惚れてまうわ。
「へへへ、じゃぁ坊主達が王都にいる間は先生は狩りでもしたらどうだい?
俺はいないけど、ボアとかホッグあたり狩りに行くだろうし」
「あ~それはありがたいですね!」
「まぁ、かる~くやるだろうし気軽にやってくれや、へへへ」
この人たちの軽くは確実に軽くないだろうなと思った。
その後、日が暮れるまでワニの解体ショーを見て、
設楽さんと合流しヨドさんの家に向かった。
――――
「こんばんは」
「あーおはいり」
家の中から声が聞こえたので入ることにした。
ドアを開けると良い匂いが立ち込めた。
「ふぁ~」
「いらっしゃいな、座って待ってな」
ヨドさんは手際よく調理している。ドレーク肉を炒めているみたいだ。
「ほらできたよ」
「「「おお~」」」
四点机に並んだ。
・スープ
・黒パン
・ドレーク肉の炒め物
・小皿に黒いソース
「さぁ召し上がれ、まずはスープだよ」
このスープやばい。匂いが美味い。
具材は巣だけだ。だけどなんだこの匂い。
ズズッ
うま! うま! なんの味かわからん! でも美味い!
ツバメならぬストライクバードの巣も美味い!
食感が楽しい。あま~い香りが心地いい。
味わいたいのに飲んでしまう。これはやばい。中毒的だ。
二人も一心不乱に飲んだみたいだ。
「こ、これは」
「ひゃっひゃっひゃ、美味いじゃろうて巣を入れんでも美味いスープじゃからな」
「材料が全くわからないわ」
「本当に美味しい料理は調理方法がわからないと聞くが」
ヨドさんはしてやったりといった感じだ。
「まぁ、山菜なんじゃけどな」
「さ、山菜でこの味は出ないでしょ」
たしかに、肉やコンソメって感じではない。
「おぬしたちに教えておらん食材もあるんじゃよ。たとえばキノコや山桜の実じゃな。
キノコは乾燥させると味わいが増すし、山桜の実はアク抜きが必要じゃが、
長期間アク抜きをするとえもいわれん味になる」
「「「はぁ~~」」」
このばあさんマジでやばいよ。知識が深すぎる。
「ばあちゃん、店やったら絶対儲かるよ」
「はん! この村で店なんて誰も来ないさ」
う~む、もったいないこの腕。
「ま、肉も食べな。スープは結構貴重でね。たくさんは作れないのさ。その分肉はいっぱいあるよ」
正直この後になに食べても蛇足に感じる。それほどの料理だった。
さて――
一口サイズに切り分けられたドレークと香草を炒めた感じだ。
そのまま食ってみよう。
「パクッ、お、ササミっぽいな」
「ま、ドレークってのはタンパクだからね。湖の町では素揚げして食べてるね」
「ふむ、なかなか美味いな」
「そうだろう。臭み消しにサギナミ草を足したんだよ。ほれ、ソースを付けて食ってみな」
黒いソースを付けて食うと、
「おっ、これはいい」
「うむ! 中華っぽいな」
「ハグハグ」
「どうじゃい、ドレークも美味いじゃろうて」
「確かに!」
ソースを確かめてみる。これは異世界に来て初めての味だ。
「これも、ベリーですかねぇ」
「そうじゃ、ブラウンベリーを油で少し炒めたのさ」
「ブラウンベリーは見たことないですね」
「この辺じゃあまり見かけないからね。
ベリーを極めし者が料理の頂に立つ、わしの師匠の言葉じゃ」
「お! 流石師匠」
「ふん、坊は適当じゃのう」
「そんな~」
今日も今日で美味しい一日が終わった。