ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
  †*聖璃架*† 作者:天使
八日目◆前:告白
 ネイキッドとガイアの家を、脇の茂みから様子をうかがう人影があった。

「レグナム」

 声をかけて現れたのはプレオだ。

「プレオ、いたか」
「いなかったよ」
「そうか、あのはどこにいるんだろう。真誠軍の所にもいないようだし」

 考えながらレグナムは立ち上がる。

「……なぁプレオ。俺っていい男だよな」

 何の突拍子もなく髪を掻き上げてレグナムに問われたが、プレオは驚く事なくまた、と思う。
 こんな事は初めてではないのだ。レグナムは自分大好きな自己陶酔者ナルシスト。出会ったばかりの頃ははっきりいって引いたが今ではもう慣れてしまった。そういう部分を見なければとてもいい奴だし、親友だからプレオは言ってやる。

「うん。レグナムほど男前は他にいないって」

 確かにレグナムの端正な顔だちはいい男に入る方だ。

「だろ。ならセリカはもう俺にメロメロさ。今頃俺に逢いたくて仕方なくて捜しているはずだ。早く逢ってやらないと」

 なんて自信満々で言うレグナムに、プレオは内心呆れていた。

「あんさんら久しぶりやんか」

 かかった声に振り向くと幹にもたれて居たのはジムニィで、レグナムとプレオはげ、と顔をしかめる。

「ヴァーミニオン抜けたゆーて、よーのうのうとしとれるもんやなぁ。かしらに見つかったらどないする気や」
「……別に頭は俺達のことなんて気にしてはいないさ」
「それもそーやな。あんさんらなんておってもおらんでも同じやし」

 ジムニィに言われて、レグナムとプレオはむかぁと腹が立つ。
 だからこいつは嫌いなんだ。現れては嫌味しか言わない嫌な奴。絶対友達いないだろ。いや実際ヴァーミニオンで誰かとつるんでいるところなんて見た事がないし、いないな絶対。

「何しに来たのさ」
「別に。たまたまあんさんら見かけたもんやから。あんさんらこそ何しとるんや」
「関係ないだろ」

 とレグナムがジムニィを睨む。

 すると箒に跨った聖璃架が家の前に着地して、プレオが気づいた。

「レグナム!」
「セリカはんやないか」

 指差すプレオにそちらを見たレグナムだったが、自分より先にジムニィが言って目が点になってしまった。

「俺捜しとったんや」

 言ってジムニィは茂みを抜けて聖璃架に向かっていった。

 ……なんだこの展開は、とついていけないレグナムとプレオは呆然とした。

「セリカはん!」

 名前を呼ばれてドアをノックするところだった聖璃架は振り向く。

「あなたは、ジムニィさん」
「俺あんさんのこと捜しとったんやで」
「え、なんでですか」
「竜の石探すゆーてたやろ」

 あ、その事かと聖璃架は思って。

「大丈夫です。見つかったので」
「なんやて!……まーほんならよかったやん。で、今持っとんのか?」
「ガイアくんに返しました」

 それを聞いてジムニィは驚くと同時に落胆する。

「なんや〜」
「セリカ!」

 またしても呼ばれて現れたのはレグナムとプレオだった。
 来るなりレグナムに腕を引かれて聖璃架は竦む。

「な、何するんですか」
「こいつには近づかない方がいい」
「なんやて?」

 レグナムの言葉にジムニィは振り向いて睨んで、聖璃架のもう片腕を掴む。

「セリカはんは渡さへんで」

 言って聖璃架を引いた。

「この、ふざけるなよ!」

 とレグナムが力強く聖璃架を引いてジムニィも負けじと引く、がしばらく繰り返された。
 ――ちょ、ちょっと?
 大の男に交互に腕を引かれて聖璃架はたまったものではない。
 散々振り回された挙句、終いには向きになった二人に綱引きのように両腕を引かれて、しかも本気まじだから力がどんどん強くなっていく。腕が千切れそうで余りの苦痛に涙が溢れて、聖璃架の意識が薄れた時――

「テッメェらァァ――!!」

 怒号と共に歳朗が茂みから飛び出した。その表情は怒りに満ちて瞳孔が開いた状態で、今までで最も恐ろしいものだった。
 拳銃を発砲して振り向いたレグナムは肩を撃ち抜かれて表情が歪む。続けてジムニィに銃口を向けたが既に姿はなくて、再びレグナムとプレオに発砲したが逃げ出していた二人は間一髪で逃げ延びた。
 怒りで呼吸を荒げた歳朗は舌打ちして拳銃を下ろす。

 歳朗の声と銃声を聞きつけて、家からネイキッドとガイアが飛び出してきた。
 聖璃架を抱えた歳朗を見て足を止める。

「……何があったんだ」
「……ヴァーミニオンの連中に」

 怒りを秘めた低い声音で歳朗が答えて、ネイキッドは衝撃を受けた。
 また、自分のせいで聖璃架が。
 ハーレー達ではないが、ネイキッドにとってはそういう問題ではない。ヴァーミニオンに狙われているという事が。自分が護れなかったという事が辛くて。
 体が震えて顔を伏せた。

「お姉さん大丈夫なの?」
「気絶してるだけだ」

 心配そうに尋ねたガイアに歳朗は答えて立ち去った。



 木陰に腰を据えて歳朗は煙草の煙を吐く。傍らには、幹に凭れる意識のない聖璃架。

 ……腕は、平気だろうか。
 歳朗はそっと聖璃架の肩に触れる。ひんやりして、氷のように聖璃架の肌は冷たい。
 ――生きてる、よな……?

 初めて出会った時も思ったが、こんな真っ白で冷たい肌では思わず心配になる。このまま目を開けないなんて事はないだろうかと。
 ――早く目を開けてくれ、聖璃架――

 こんな華奢でか細い腕だ。聖璃架があんな目に遭っているところを見た時は、腕が引き千切られてしまうかと思った。一気に血が逆流して頭が熱くなるのを感じた。気づいたら、奴らに向けて発砲していた。

 もう、聖璃架が傷つく姿を見たくない。誰も聖璃架に寄らせたくない。――……いや、そうではない。自分が、聖璃架の側にいたいのだ。
 …………これが、俺の正直な気持ちだ。

 解っていた。だが気づかない振りをしていた。何故こんな気持ちになってしまったのだろう。

 最初は、只聖璃架が心配なだけだった。親になった事がないから解らないが、親が子を想うそれと同じようなものだろう。今でも心配な気持ちは変わらない。だが、確実に別の感情が混ざってきている。

 それが何なのか気づかない振りをしていた。まさか自分がそんな気持ちになる訳ないと否定していた。
 ――だが、俺は――――

 すると聖璃架の体が僅かに動いて、歳朗は手を離す。同時に安堵のため息が漏れた。

 聖璃架の紅玉ルビーの瞳がゆっくり開かれる。

「体は平気か」

 目を開けた途端聞こえた声に聖璃架は竦んで怯えた表情になったが、居たのが歳朗でほっとした。
 ……え、今ほっとした?
 思って聖璃架は解らなくなる。
 先程人間にあんな目に遭わされて、人間が怖い筈なのに歳朗だとそうではなくて。
 安心しているのは何故なのだろう。解らないけど、安心しているのは事実だ。

「体は、平気なのか? 痛くないか?」
「あ、はい大丈夫です。でもなんで土浦さんが?」
「おまえがヴァーミニオンに襲われてるのを見かけてな」
「そうだったんですか。助けてくれて、ありがとうございます。いつも助けられてますね、あたし」
「んなことはいい」 

 聖璃架は小さく一息つくと、森の香りを一杯に吸って仰ぐ。

 木々の合間から差す木漏れ日がカーテンのように優しく揺らいで、島に来たばかりと同じ光景に心が安らいだ。胸に心地良い空気も同じで。

「聖璃架」

 歳朗が差し出したのは楕円形の黄色みがかった赤い果実だった。てのひら程の大きさで、皮は薄くてそのまま食べられそうだ。

「ありがとうございます」

 受け取って聖璃架は一口齧る。甘味が口中に広がって、ほんわかして幸せな気分になった。

「聖璃架、これだけは約束してくれ。前にも言ったが一人でフラフラするな」
「はい、ごめんなさい……でも、なんでだろ……他の人間は怖いのに、土浦さんて怖くない。一緒にいても、なんか安心できる……」

 聖璃架は思った事を只素直に口にしただけなのに、それは歳朗を思い切り動揺させた。
 歳朗の顔が赤くなって、口から煙草が落ちる。

「――なッ! 何言ってやがるッ! やめろそんなことを言うのはッ!」
「あ、ごめんなさい。また変なこと言っちゃいましたね」

 聖璃架が謝ったが、変な事ではない。
 鼓動が高鳴って、はっきり解った。
 そう言われて嬉しい自分。今こうして聖璃架と過ごしている時間も嬉しくて。
 何故あんなに聖璃架が気になって苛々《いらいら》していたのかも、解っている。もう、否定は出来ない。

 自分は、聖璃架に惚れているのだ。

 ――……ずっと封じていた気持ちだった。自ら不要だと避けてきた。
 聖璃架に、そんな事を言われたら――

「……離れたく…なくなるだろうが……」
「えっ?」

 聖璃架が振り向いて歳朗は立ち上がる。

「俺は軍人だ。いつ死ぬかわからねェ戦場に身を置く俺には色恋沙汰など邪魔になる。俺はそう思って今まで避けてきた。そう、今まではな……」

 見上げて聖璃架は歳朗を見つめる。

「だが、今は違う。おまえのことが、頭から離れねェ。気がつくとおまえのことを考えてる俺がいる。さっきもおまえを捜して歩いていた。そしたら、おまえがあんな目に遭ってるのが見えて……」

 真剣な眼差しで歳朗は聖璃架に向く。

「もう、おまえが他の連中に手を出されるのは我慢ならねェ。おまえの側にいたい。側でおまえを護りたい」
「…………」
「……迷惑か?」
「いえ、そんな迷惑なんて。嬉しいです」

 素直に思って聖璃架が口にした言葉だったが、歳朗は意外そうな表情をする。

「本当か?」
「はい」
「側にいて、いいのか」
「あ、でもずっとってわけにはいきませんよね……」
「おまえが望むなら。あ、いや、なんでもねェ」

 思わず言ってしまって、歳朗は恥ずかしそうに顔を背けた。
 そして聖璃架の隣に腰を下ろす。

「……ずっと言いたかった」
「え?」
「昨日は……誤っておまえを……すまなかった」
「そんなこと」
「初めて、罪悪感に襲われた……今まで人をどれだけ斬っても何も感じなかった俺が、だ」

 ――感じて当たり前だ。本当に震えて。怖くなった。
 俺は刀を処分した。総助と共に地面に埋めた。
 もう俺は一生刀を握れねェだろう。――見るのすら嫌で、近江さんの差す刀でさえ見たくねェ。
 だが俺は命にかえてでも、おまえを護っていく。誰もおまえに触れさせねェ。――だから俺から離れるな。

「……あの、土浦さん」
「どうした」
「そろそろ、行かないと」

 なんて聖璃架に言われてしまって歳朗は正直切なくなったが、もっと一緒にいたいなんて恥ずかしくて口が裂けても言えない。

「そうか。送ってやる」

 言って歳朗は立ち上がる。

「え」
「大丈夫とか抜かすんじゃねェぞ」

 聖璃架は立ち上がって言う。

「はい、じゃあガイアくんとネイクさんのお家までお願いします」
「アイツらの家?」
「はい、あたし達の家にご招待しようと思って」
「……ネイキッドもか?」
「いえ、ネイクさんは」
「そうか、ならいい」

 返ってきた答えに安心して、歳朗は歩き出す。 

「俺から離れるなよ」
「はい」

 すると歳朗は自分の後をついてくる聖璃架に何か違うと思って、足を止めて振り返る。合わせて聖璃架も立ち止まってしまった。

「…………」

 並んで歩きたいのだが言えなくて只見つめていると、聖璃架はどうしたのだろうと言いたげにきょとんと歳朗を見る。
 思い切って歳朗は聖璃架の手を握り、今にも赤くなりそうな顔を見られないように前を向いて歩き出す。手を握られて聖璃架は鼓動がどくんと高鳴った。
 ……何? 怖い訳じゃないのに、ドキドキする。変なの……

 草を踏みしめる音を耳にしながら、聖璃架と歳朗は手を繋いで並んで歩く。
 聖璃架の手は小さくて華奢で冷たい。肌も冷たくて、そんなだと抱きしめて温めてやりたいなんて思ってしまう。こんな気持ちになったのも初めてだ。
 高鳴る鼓動を静めて落ち着いてきたところで、歳朗は気になる事を聞こうと口を開く。

「……聖璃架」
「はい?」
「一度しか言わねェからよく聞けよ」
「はい」
「……俺のこと、どう思ってんだ」

 極端に蚊の鳴くような小さな声で尋ねた。当然聖璃架が聞き取れる訳がなくて「え?」と言われてしまって再び顔が熱を帯びる。

 歳朗は復唱が嫌いだ。聞き返されるといらっとする。今はそうではないが、こんなこっ恥ずかしい言葉をもう一度言うなんて冗談じゃない。だが聖璃架に想いを伝えた今、聖璃架の気持ちが気になって気になって、今度はそちらで苛々しそうだ。

 平常心に戻そうと思っているのに鼓動は高鳴り出して、額がじんわり汗ばんできた。
 じきに森を抜けてしまう。聖璃架の気持ちを聞かないままでいいのか――
 ――聞こう。もう苛々するのは御免だ。
 一度、はっきり言えばそれで済む。

「聖璃架」
「はい」
「俺のこと、どう思ってる」

 歩きながらだが歳朗の声はよく通って、聖璃架の耳にしっかりと届いた。

「……どうって、土浦さんにはいつも助けていただいてるし、とても感謝してます」
「それは俺が勝手にしてることだ」
「そんな! 土浦さんが助けてくれなかったらあたし。もう土浦さんには感謝してもしきれないです」
「…………」

 違う。そうじゃない。自分が聞きたいのは。
 ……だが、今はそう思われているだけでもいいか。



「えっ、お姉さんちに?」
「うん、ぜひ遊びに来て」

 ネイキッドとガイアの家を訪れて、聖璃架が笑顔で言った。

「うん行きたい!」

 ガイアが答えて、聞いていたネイキッドは自分は誘ってくれないのかと思って尋ねてみる。

「あの、聖璃架さん。オレもいーすか?」
「えっ?」
「オメェは入ってねェだろ」

 歳朗に睨まれてネイキッドは不愉快になる。
 それも合わせて今まで二人が一緒にいたんだという事が不愉快で。――考えたくないが、二人はもしかして出来ているのではと不安がよぎる。

「ダメっすか」
「……いいですよ」
「何ッ!?」

 聖璃架の口から出た言葉に歳朗は驚いた。

「華蓮ちゃんにお願いしてみます」
「聖璃架ッ! 話が違うだろッ!」
「でも、ネイクさんにはお世話になりましたから」

 それを聞いてネイキッドは感激する。

「……そうかよ。勝手にしな」

 低い声で言われて歳朗が怒ったのを感じて、聖璃架は焦る。

「土浦さんもいらっしゃいませんか?」
「俺はいい」

 即行断られて、聖璃架は悲しくなった。

「えーなんでー? せっかくお姉さんが誘ってんのになんで行かないの?」
「俺はいいんだよッ!」

 向きになってガイアに言ってしまって、歳朗はばつが悪くなる。
 また苛々している。子供に八つ当たりしてしまった自分が滑稽で、情けなくて嫌になる。

「何怒ってるの歳朗さん」

 ガイアは訳が解らない。

 歳朗の横では聖璃架が悲しそうにうつむいていて、何故そんな悲しい顔をするのかとネイキッドは辛くなった。



 家に着いた聖璃架は異変に気づく。
 家を出た時ははっきり見えていた家がなんだか薄くなっていて、あれ? と思って目を擦る。だがやはり薄くて。
 どうしたのだろう……

 何もない場所で立ち尽くした聖璃架にガイアは声をかける。

「どうしたの?」
「あ、ううん。ここがあたしと華蓮ちゃんの家です」

 聖璃架の言葉に歳朗、ネイキッド、ガイアがきょとんとする。何もないからだ。

 行かないと言っていたのに何故歳朗が、と思ってネイキッドはここへ来る途中問うと「聖璃架を送るだけだ」と歳朗に睨まれた。自分がいるのだから必要ないのに。

「どこにあるの?」
「あたし達の家は人間には見えないんです。ここにあるんですよ」

 言って聖璃架が見えないドアを開けると、ぽっかりと暗い空間が現れた。

「わあすごーい」
「どうぞ」
「おじゃましま〜す」

 笑顔でガイアが家に入って、続いてネイキッドも入った。

 歳朗は聖璃架に歩み寄って耳元で囁く。

「聖璃架、明日ここへ迎えに来る。それまで勝手に出歩くんじゃねェぞ。わかったな」
「……はい」

 歳朗が怒っていると思っていた聖璃架は、嬉しくなって笑顔で返事をした。聖璃架の笑顔に歳朗も嬉しくなって。

「じゃあな」
「送ってくださって、ありがとうございました」

 帰る歳朗に聖璃架はお辞儀して見送った。



 ドアが閉まると家の中は闇に包まれた。

「暗いね〜」
「魔女の家はこうなんです」

 と聖璃架がガイアに答えた。

 見上げると蝋燭ろうそくの灯る水晶クリスタルのシャンデリアがあるが、役立っているとは思えず周囲は真っ暗で足元さえ見えない。徐々に目が慣れてくると少し先に壁の所々の蝋燭で、ぼんやりと二階へ続く大階段が見えた。

「聖璃架」

 闇に美しい声が響いて、大階段を規則正しく下りてくる靴音が聞こえた。

「華蓮ちゃん、ただいま」

 ゆっくり姿を見せた華蓮の美貌は、闇の中だと一層妖しさを増して蠱惑こわく的な美しさだ。

「お邪魔します」

 ネイキッドが会釈したが、華蓮は一瞥いちべつして聖璃架に言う。

「招くのは坊やだけの筈よ」
「ごめんね華蓮ちゃん。ネイクさんにはお世話になったの、いいでしょ?」

 お願いする聖璃架に、華蓮は美麗な瞳を不満げに細くする。

「……仕方ないわね、今日だけよ」
「ありがとう華蓮ちゃん」



「この家の中では想像したことが実現できるんです」

 暗い部屋で聖璃架に言われて、ネイキッドとガイアはぽかんとする。

「何かしてみたいことないですか?」
「してみたいこと……う〜ん」

 ネイキッドは考え込んだが、ガイアは「お姫さまごっこ」とすぐ答えた。

「アイツらをブン殴ってみたいすね」
「あいつら?」

 と聖璃架が首をかしげた。



 ネイキッドの前にハーレー達の等身大人形が出現した。

「おおっ! スゲーっ!」

 余りにもそっくりな人形で、目を見張ってしまった。

 本当によく出来ている。動きはしないが肌の質感、生えている顎髭、細部まで本人のようで、まるで生きているみたいだ。

 拳を握りしめて、ネイキッドは思いっ切り息を吸い込む。

「オリャアアッ!!」

 日頃のストレスと恨みを込めて、鉄拳で人形ハーレー達を殴り飛ばした。

「ガイアくんとっても似合ってる」
「本当?」

 笑顔で聖璃架に言われて、ガイアは煌々《きらきら》の生地のドレス姿で嬉しそうにくるくると回る。

 本当によく似合っていて女の子みたいなガイアが、聖璃架は微笑ましかった。



「聖璃架、あの赤墨色の髪の人間とは会わないで」
「赤墨色?……土浦さんのこと?」
「名前なんてどうでもいいわ。さっき一緒にいたでしょう」

 華蓮に静かに言われて聖璃架はどく、と鼓動が高鳴った。

「み、見てたの?」
「貴方を傷つけた人間じゃない」
「でも……土浦さんはいい人だよ。あたしのこといつも助けてくれるし」
「解ったわね、聖璃架」

 と言う華蓮の瞳と声音はいつもと違って迫力があって。

「…………うん」

 そうだ。華蓮がそう言うのなら。
 自分は華蓮に逆らうなんて事、許されない――……



【後編へ続く】


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。