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「……くああ」
欠伸が出た。
現在居る場所は学校の教室で、目の前に居るのは担任で不良な女教師、御里南。まあ不良と言っても俺が言っているだけだが。それに見た目は不良ではない。束ねた黒い髪は男の俺からしても綺麗だと思えるし、鋭い目つきと形の良い眉がもとより整った顔立ちの先生をより凛々しく引き立てている。その凛々しさは男女問わず、密かにファンクラブだかが出来ているくらいだ。
そんな先生と俺が何をしているかと言うと、話している。先生はいつもの先生とは思えないしおらしさで俺に問う。
「な、なぁ、アイツ、元気か?」
「ええ、元気ですよ。環の奴にも聞いたけど特に病気も無いらしいです」
「そ、そうか。環なら嘘は吐かないな」
ほっとしたように先生は言う。環は嘘を吐けない。嘘を吐くのがヘタだからだ。
具体的に言うと……止めよう。アイツが不憫に思えてくる。取り敢えず今言うべき事はひとつ。
「……そんなに心配なら会いに行けば良いじゃないですか」
「……ぅ。だ、誰があんな奴に!」
先生が怒鳴る。普通の生徒なら首を竦めるだろうが、俺はこれが照れ隠しだと云う事を知っているので竦めず、むしろ追撃を仕掛けた。
確かこういう人をツン、……なんだっけ。……まあいいや。
「先生。今流行りのツンなんとかもほどほどにしといて下さいよ。あんまりツンツンしてると輝月に嫌われますよ?」
「もうとっくの昔に嫌われている。後誰かツンデレだ!」
ああ、そうだ、デレだ。というか知ってたのか。流石は不良教師。……って、ん? 不良教師は関係ないのか?
そんな事を思っていると、ポケットが振動した。
「ん?」
どうやらマナーモードにしていた携帯からのようだ。
「ちょっと待って下さい。携帯に着信が入りました」
「そうか。出て良いぞ」
元よりそのつもりだ。
携帯を取り出し、開く。着信名は……環か。まあ良いタイミングではある。
「もしもし、環か?」
「あ、うん、環だよ~」
相変わらず能天気な声だ。
「何の用だ?」
「ん~とね、最近こっちに来てないなぁ~って思って」
「最近テストで忙しかったんだよ。まあ、それも終わったから、しばらくは大丈夫だ。なんなら今から行っても良いぞ?」
「え?」
「いやなら別にいいが」
「ううん、いやじゃないよ! むしろ歓迎! 大歓迎だよ!」
「……それは嬉しいな。……あ」
そこで俺は思いついた。
「ん? なになに、どうしたの~?」
「いや、ちょっとな。……今、そっちに輝月はいるか?」
「え? あ、うん、居るよ。何なら呼ぼうか?」
「いや、いい。ただ確認しただけだ」
「そう? ならいいや」
「じゃ、切るぞ」
「うん。また後でね~」
ピッと電話を切る。
そして目の前で見つめている先生に気付かれないように息を深く吸う。
……さて、嘘を吐くとするか。
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