反逆者と偽りの街(5/19)縦書き表示RDF


更新遅れました。
まだ、本編に入れてません。
今回は主人公が後ろ向きな少年ということが書きたかっただけなので、ふーんで終わるかも知れません。

次でおそらく本編に入ります。
きっと…
反逆者と偽りの街
作:碧空



00 第三話:少年


朝日が出て、目の前に広がる海を赤く染めていった。
砂浜には肩を寄せ合う二人がいた。
何故あの二人はこんなところにいるのだろう。
何故二人っきりでいるのだろう。
何故俺には何も教えてくれないのだろう。

何故?


二人をボーっと見つめていると、女が振り返った。
幸せそうな顔をして。
「あれ? 直くんどうしたの。そんなところでボーっとして。」

ニコニコしながら話しかけてくる。
「え…っと…なんでお前らはこんなところにいるんだ?」

体は何故か震えていたが勇気を振り絞って問いかけた。
女は表情のひとつも変えずに言った
「直くんの思ってる通りだよ?」
俺の思っている通り・・・二人は付き合っている。

俺は気づかなかった。
そして、今になってようやく気がついた。
二人っきりでいるのを見て、やっと気がついた。

俺が何も言わず固まっている様子を見て、女はクスクスと笑った。
「そっかぁ…直くんは知らなかったんだ。私たちが付き合っていること。18年間ずっと一緒だったのに?」

女は男から離れ、こちらに向かって走ってきた。
俺の前で止まると、肩に手を置いた。
確かに俺達は生まれてからずっと一緒だった。
けど、一緒だったというわけで、分かり合っていたわけじゃない。
いつからか隙間が出来ていた。いや、もしかしたら最初からあったのかも知れない。

「直くんは寂しいんだね。一人がいやなんだね。」

「直くんは孤独が怖いんだもんね。私は怖くないよ? だって彼がいるから。」

後ろを向き男の方へゆっくりと歩き出した。

「孤独なのが嫌だ。自分も仲間に入れて欲しい。けど、二人が怖くて入れない。だから逃げた。」


女が再びこちらを向くと海が黒くゆがみ、周りがなにも見えなくなった。
さっきまでいたはずの二人も見えなくなっていた。
見えるのは自分だけ。まるで自分だけにライトが当てられたようだった。

「怖いでしょ? だから逃げた」
暗闇から声と手がいきなり出てきた。

「…違う。 お前らが悪いんだ! 何も教えてくれなかったお前らが悪い! 俺は悪くない…悪くないんだ!」
ここから逃げたくても外は暗闇でどこに逃げればいいか分からない。

手が体に触れ、震えている俺の体を突き飛ばした。
光の中から闇へと放り込まれた。

その瞬間、あったはずの地面が消え奈落へ落ちていった。

「直くん、逃げちゃダメだよ…」


ーーーーーーーーーーーーーーー


目が覚めると、目の前には木の天井が広がっていた。

布団から出て顔を洗い、鏡で自分の顔を見た。やはり、顔色は良くない。
引越してからいきなり気味の悪い夢を見た。気分が悪い。
目を閉じ、夢に出てきた二人を思い出した。
あれは幼馴染だ。顔はよく思い出せない。笑っていたのしか思い出せない。

確かに俺は二人を裏切った。でも、逃げたわけじゃない。
二人のためを思って離れたんだ。




「おはようございます…」

食事部屋に入りすでに中にいた二人に挨拶をした。
二人はすでに朝食を取っており、テレビを見ていた。

「おはよう、直人くん」
綾さんがこちらを見てニコリと笑った。そのとき急に悪寒がした。
夢に出てきた女の幸せそうな顔と重なったからだ。

「直くん、逃げちゃダメだよ…」
最後に聞いた言葉が頭の中で響いた。
なんで夢に出てきたかは自分が一番分かっているのだが、実際に出てくると気持ち悪い。

俺は逃げたんじゃない。
頭にそう言い聞かせ、言葉を忘れさせようとした。

綾さんには気づかれないように微笑み返した。

「おう。布団は部屋に戻しておいてくれ。」

菊池が振り返りもせず、背中越しに言ってきた。
布団は菊池が風邪を引いたら困ると言って貸してくれた。
朝起きたら挨拶しろよと心の中でつぶやいたが、菊池には届きそうにない。

「荷物はいつ来るの?」
「11時です。」

今日は荷物が届く日だ。
昨日送ってくれればいいものを、親は何故か一日ずらした。


「そっか、ならまだ時間はあるね。」
そういうとテレビをまた見始めた。菊池は寝転がり、かなり邪魔になっていた。

さっさと朝ごはんを食べて、街探検にでも行こうかな。まだ、荷物が来る時間には早い。
ご飯を一気に食べ、テレビを見ている二人を置いて外へと出た。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


街は朝だと言うのに人がほとんどいなかった。
妙に静かで、不安になりそうだった。
これだけ人がいないとなると、自分だけが取り残されたような感覚に襲われる。


「街に出るなら言ってよ。」
後ろから綾さんが追いかけてきた。隣に来ると肩をつかみ呼吸を整えた。
アパートを出たとき、綾さんの声が聞こえた気がしたのだが無視してしまった。

「すいません。迷惑かと思って。」
「迷子になる方が迷惑です。」
冬はもう終わったのだが、上着を着ないと結構寒い。
綾さんも重装備と言われても仕方ないと思われるほど着込んでいた。

「ここら辺は活気がないからね。店もあんまりないし。」
周りを見渡したがボロアパートや小さなビルしかない。となるとあのコンビニくらいしか店がないらしい。
アパートからさほど離れていないのだが、この街全体に活気がないように感じる。
こんな環境ならあのコンビニに必要以上の品揃えがあるのもうなずける。

「あそこに無駄に高いビルがあるでしょ?」
綾さんが指差した先にはこの街には似合わないほどキレイな高層ビルが3つほど建っていた。
アパートも一応この街の中心に位置しているのだが、どちらかというとあのビルが実質的な中心となっているらしい。

「あそこは何の会社のビルなんですか?」
「さぁ…IT関係の会社としか聞いてないなぁ。そこまで経営拡大してないらしいし。あまり有名じゃないから。」
「有名じゃないから知らないって…会社名もですか?」
「興味ないからね。裏があるんじゃないかって言われてるし。」

裏がある会社なんて普通だと思うけど。
それよりも、何で裏があるって知ってて会社名を知らないんだろう。

「そういえば何でこっちの大学を選んだの?」
「えっ…」

動かしていた足を思わず止めてしまった。綾さんは俺の反応に少し首をかしげている。
一瞬、時が止まったように感じた。
もしかしたら、俺の思考が止まったのかもしれない。

どこでもいいと思っていた大学を変えた理由。考えたくないことだ。
理由を考えると二人の顔を思い出す。
今日はよりによってあのときの夢を見た。

今は考えたくない。

空を見上げ小さく息を吐いた。雲のような白い息が空へ上がろうとした。
俺の中にいた二人は本物じゃなかった。
偽られていた存在だった。
俺の知っていた二人は偽者だった。

「どうやら聞いてはいけないことを聞いてしまったみたいだね」
空を見上げて何もしゃべろうとしない俺を見て申し訳なさそうに言った。
「別にいいですよ。」
くだらないことを考えている自分が悪い。
俺には新しい生活が待っているんだ。過去と決別した新しい生活が。
毎日のように過去を振り返ってはいけないんだ。
フっと笑い綾さんの元へと走った。


ーーーーーーーーーーーーー


「遅いぞ。いつまでデートしてるんだ。」
玄関にはテーブルを持っている菊池がいた。
綾さんとの街探検は思った以上にためになった。この街にも新聞社やスーパーがあることが分かったし、大体の駅への道も把握できた。
おかげで予定より時間がかかったのだが。
綾さんはお怒りの菊池を落ち着かせに行ってくれた。

「久しぶり、直兄。」
トラックの助手席から高校生の弟が降りてきた。
俺と同じような道を歩んでいる哀れな高校生である。
「久しぶりって一昨日別れたばっかだし。」
「そうだね。」
そういうとトラックに積まれた荷物をおろし始めた。
部屋にあったものはすべてアパートに移すことにしており、俺の部屋は今何もない状態となっているはずだ。
簡単に言うと戻る気がないと言うことだ。


「お前はもう少し必要な物だけを持ってくるとかしないのか。」
部屋には家具がちゃんと置かれており、廊下に小物などが入ったダンボールがつまれていた。
荷物は全て部屋に移し終わり、トラックは帰って行った。
「お前は電車で帰るのか?」
部屋でダンボールの中身をあさっていた弟に声をかけた。
「直兄と少し話したいからね。いつ会えるかわかんないし。」
「一昨日しただろ。十分。」
そう言いつつも、内心嬉しかった。それじゃあと言って帰られたら兄としては悲しい。
作業をやめ、弟をエアコン部屋へと通した。

「父さんと母さんも来たがってたけど、説得して家に置いて来たよ。」
「そっか。来たらうるさいもんな」
綾さんの入れてくれたお茶をすすりながら話した。
エアコン部屋にもなぜかコタツがあり、かなり贅沢である。
「それから…二人にはまだバレてないよ。」
真面目な顔でこちらを向き、報告してくれた。
「そうか…よかった。」
二人にはバレていない。俺が引っ越したことはバレてない。
「けど、かなり怪しがってたけどね。いきなり、引越し作業するから。バレるのは時間の問題だよ。」
そういうとため息をつき、寝転がった。
高校生にしては小柄な奴だが貧弱と言うわけではない。
「まぁ、バレないほうがおかしいけどな。」
卒業式の翌日に引越すことは決めてあったため、一週間前から準備をしていた。
親には毎日のように文句を言われた。
言葉一つ一つが重くのしかかったが、一度決めたことを曲げるつもりはなかった。
弟も分かってくれたし、それで良かった。

「じゃあ、僕はこれで帰るよ。」
1時間ほど話し、弟は帰っていった。
その後、ダンボールに入っていた物を全て出し片付けをしていた。
綾さんと菊池も手伝ってくれたため、作業は順調に進んでいた。

「あれ?直人君も写真大事にするんだね。」
そういうと綾さんは写真たてを机の上に置いた。
その写真立ては見たこともなく、可愛らしいデザインだった。
「写真?」
おかしいな。写真なんて持ってきてないはずだけど…
親が勝手にいれたのか?迷惑なことしやがって。
「ふうん。この写ってる二人は…幼馴染?」
綾さんと菊池が写真をのぞきこんでいた。
幼馴染?
写真を見ている二人をどかし、写真たてを手に取った。
写真建ての中には海を背に肩を組んで写っている三人がいた。
この写真はあのときより前に撮った写真だ。
親が勝手に入れたんだろう。
人のことを何も考えずに。

「…そうですよ。まぁ、どうでもいいでしょ」
そういって机に写真たてを伏せた。
この写真は見たくない。

けど、懐かしいとは感じた。
あのころの3人。
偽りもなく純粋だった俺たち。
もう、つながっていない。


関係ない話だ。












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