01 第十五話:高級車
「自分が死ぬ可能性…か」
ベットにお横たわり天井へと語りかけた。本当はあんなことどうでもよかったのだと思う。
その場を切り抜けるためのバレバレな嘘。今まで生きてきた中で集まった知識を使って俺を言いくるめた。
いま思えばなんであのとき追いかけなかったのだろうと思う。もっと冷静だったら反論してあいつに強引について行ったはずだ。どちらにせよあいつが言いたかったのは「ついてくるな。足手まといになる」だろう。しかし、ただ置いていっては奴らに狙われる。だから銃を置いていった、というところだろう。
足手まといに銃を渡してどうするつもりだよ。
心のなかでつぶやきながら、机の上で無造作に置かれている銃を見つめた。
弾は入っているのだろうか。撃ったら当たるのだろうか。音がうるさくて警察が来ないだろうか。
そんなくだらないことばかりが頭の中で渦巻いていた。
7時半を回り、辺りはすっかり暗くなってしまった。
3月のはじめということもあり日が暮れるのも早い。いや、中途半端な時間に日が沈むのだろうか。
窓から見える月はあまりにも残酷だった。俺はこんなところで寝ているのに菊池と綾さんは死の恐怖にさらされている。これほどまで違う立場、状況。なのに月は僕たちを平等に映す。
心の中では行きたいと言う気持ちがあるが、どうしても体を動かすことができない。自分でも理由はわかる。怖いんだ。
この気持ちはついこの間も味わった。あのときは逃げることを選んだ。勇者みたいに選ばれた人間でもないのに、なんで死の恐怖に立ち向かわなければいけないのだろう。そう思っていたはずだ。
俺はいつだって自分を中心に考えてきた。自分を中心に世界が回っている、とまでは思っていなかったが、ただ単に自覚が無かっただけなのかもしれない。
自分を守りたいのになんでこの街に残っているのだろう。
自分を守りたければこんな殺人だらけの街には残らず、どこかへ引っ越すはずだ。
故郷ではないどこかに。この街が第二の故郷になんてならないうちにどこかに行こうか…
机に捨てられた銃に触れた瞬間とほぼ同時に外で車が止まる音がした。
この街に来てから車の音に敏感になってきた。
理由は簡単だ。この街で車が走ることなんてほとんどないからだ
締りの悪い窓から外を覗いてみるとこの街には不似合いな…いや、逆にあっていると言ったほうがいいだろうか? 視線の先にあったのは黒い高級車だった。
特徴なんてほとんどない。黒くて高そう。それだけだ。だが、それだけでも十分不審に思える。
ただでさえ車がめったに通らない街だというのに、夜に高級車が停まるなんてありえない。
そんなことを考えているうちに車から男が1人下りてきた。車と同じく黒く、ハッキリ言ってありきたりな格好である。
その男が歩いてくる方向は以外にもこのボロアパートだった。
高級車にのってやってきた男がボロアパートにお邪魔する。
実におかしなシチュエーションだ。あきらかにこれはおかしい。
机の上の拳銃を腰に刺し、ドアをゆっくりと押して開けた。 |