01 第十二話:助けれない
人は何のために生きているのだろう。生きていても欲が生まれるだけで何にも得をしない。自分の欲望をかなえるために何かを犠牲にしなければいけない。しかし、それは何かを犠牲にしてまででもかなえなければいけないことなのだろうか。
人は欲望の塊。欲望と夢は違う。夢を追って生きている人間と欲望をかなえるために生きている人間。夢は清いもので欲望は自分だけのためにある汚れたもの。しかし、この2種類の人間はどちらも最終的に同じ道をたどることになる。
夢をかなえたらどうするのだろう。欲望をかなえたらどうなるのだろう。
目指すものを叶え、目指すものを失ったらその後はどうするのだろう。
叶えた後には何が待っていると言うのだろう。
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誰も助けてはいない。助けようとしていない。殺されようとしている人間に救いの手をさしのばさない。
菊池、あんたはいろんな人の運命を握っていたはずなのになんで目を背けたんだ。
「あんたには失望したよ。」
あんたは綾さんまでも見捨てると言うのかよ。そんなわけ無いよな。あんたにだって家族同然の人間を見殺すような心なんて持っていないはずだ。
クローゼットを開け服を退かしながら何かもわからないものを探した。いや、何を探しているのかもわからない。目指しているものすらわからないのにただひたすら探し続けた。
俺の心の中ではすでに答えが出ているのに。ここには綾さんを助ける方法などないことが。いくら探してもどこを探してもそんなものは見つからない。
焦りではない何かが俺を狂わせている気がした。憎しみなのだろうか。
俺は菊池に対して憎しみを抱いているのだろうか。多くの人間を見殺しにしてきた菊池に対して。
けど、心のどこかでは願っているにちがいなかった。隅に押し込まれた小さな希望。答えは出ていてもどんなに小さい希望でも俺は…欲しかった。
『菊池は本当は助けようとしていた。ちっぽけな無力な人間を助けようとしていた。綾さんを助ける方法をこいつは知っている。』
現実から目をそらそうとしているわけじゃない。本当のことを知りたいんだ、俺は。
そのとき、クローゼットの下から風が入ってきた感じがした。その場にかがみこみ板を叩いてみた。コツンという音が床で響いている。この下に何かがあるということだ。
これだけの資料を隠しているのに、それらよりも大切なものがこの下にあるということか。
もしかしたら、もしかしたらあるかもしれない。今まで見てきたものが偽り<フェイク>であるといって欲しい。隅に追いやられていた小さな希望がゆっくりと自分の心の中心にやってきた。
周りに散らばっていた紙を板の隙間に入れてみた。紙は半分ほど入るとそれ以上進まなくなった。15cmくらいだろうか。そんなに深くないということは…もしかしたらこれはフェイクなのかもしれない。
紙を抜き入れ替わりに自分のつめを刺し、ゆっくりと上に引いて行った。自分のつめが長くてよかったとくだらないことだが少し気が緩んだ。
そこにあったのは3丁の拳銃と7,8本のナイフだった。
唖然したというよりも衝撃的だったという感じだろう。期待していたものとは違うと言えば違うのだが、ある意味あっているような気がした。
生の拳銃をはじめて見て反射的に、無意識に手を伸ばしていた。ひとつ手にとってみたが、冷たくて重かった。ただそれだけだった。触れて感動したといわれれば感動したかもしれない。だが、それと同時に何故こんなものがここにあるのかという当たり前の疑問が生まれた。
警察が持っているような拳銃ではなく、外国映画で見るようなタイプの拳銃だった。自動式の拳銃だっただろうか。無駄に知識を持っていた友達から教えてもらったのだが。
まぁ、今はそんなことはどうでもいいか。弾は入っているからいつでも使えるようにしてあるのだろうか。安全装置とかいうのはついているのだろうか。
そんな疑問はほうって置いて拳銃を元に戻し、ナイフを手に取った。
「拳銃なんて俺にはあつかえない。これだったら俺も使えるかもしれない。」
なぜ、このときこんなことを思ったかはわからない。だが、これはある意味俺が綾さんを助ける方法を見つけたということかもしれない。
これを手に取ったのは勇気があったからの行動ではないことはよく分かっていた。憎しみから生まれた行動だということだ。誰に対する憎しみかも分からないまま。 |