01 第十話:立入禁止の部屋
部屋の中は足の踏み場が無いほど散らかっていた。
足元には紙やファイルが無造作に捨てられており、机の上にはパソコンが3台。コードが至るところから出ている。
ここでは絶対に生活出来ないと思うほどの汚さだった。
床に落ちている紙を一枚拾い上げた。
「これは…履歴書?」
経歴や住所が書かれている紙だった。
写真に微妙に線が入っているから、履歴書のコピーだと思うのだが、何故こんなものを持っているのだろう。
周りにも履歴書のコピーが大量に落ちている。色あせたものから真新しいもの。
コンビニにアルバイトしに来た人の履歴書なのだろうか?しかし、それにしては数が多すぎる。
30枚以上は床に散らばっている。
積み上げられている紙を調べればもっと出てくるかも知れない。
紙を置き、パソコンも前に立った。
机の上もやはり汚く、飲み終わったコーヒーの缶が15個もある。
履歴書はここにも置いてある。
電源は落ちていない。ということは作業の途中だったのか。
ディスプレイをつけ、出てきた文字をを隅々まで読んだ。
何かの資料らしいのだが、書いてあることがかなり物騒である。途中で削除リストとものが出てくるのだがこれは一体なんだ?
資料の最初に会社の方針というのが書かれており、そこには
「我々はこの街の監視者であり統治者である」
と書かれている。
どういう意味だろう。この街を監視している? 統治している?
そんなことが出来る人間がいるのだろうか。本当に会社であったにしてもそんな会社は聞いたことが無い。
街を監視する会社。そんなのがあるのだろうか。
そう思ったとき、昨日の出来事が思い出された。
そういえばあいつは俺の名前を知っていた。住所はあのときに後ろをつけていて分かったのかもしれない。
しかし、俺が誰なのかは分からないはずだ。
それにあいつの周りには五人くらい仲間がいたはずだ。拳銃も持っていたからテロリストなのだろうか。表向きは会社と言って置きながら、裏では人殺しをやっている。
そんなところだろうか。
ではこの会社はなんていう名前なんだ。
残りのパソコンのディスプレイをつけると、ひとつのパソコンである会社のホームページが開かれていた。
写っていたのは地図だった。会社の内部の地図なんて載せるところがあるのか
「IGSって確か…IT系の会社だっけ」
街を案内してもらった日に綾さんに教えてもらった会社である。
その時はたいしたことは教えてもらえなかったが、後から調べたんだった。
しかし、なぜこんなものを調べているんだ。
ここで働きたいと思っているのだろうか。しかし、大家にコンビニの店長をやっているのだから金には困っていないはずだ。
だったら何で?
一旦パソコンから離れ、山積みの紙やファイルをあさることにした。
しかし、出てくるのは履歴書かさっきの資料のようなものばかりだ。ファイルにはさんであるものは履歴書ばかり。
しかも、同じ人間のばかりだ。
「なんでこんなにも履歴書が…同じ人間を省いても100枚はあるぞ」
下の方を調べて見ると、リストのようなものが出てきた。一番上には削除リストと書かれている。
さっき見た文章に書かれていたのはこれのことだろうか。
名前が20人分くらい書かれており、日付が3つ書かれている。猶予期間と削除日。
日付はかなり古く、8年前のものだ。日付が早い順に書かれているらしい。
場所を変え、パソコンの横をあさってみると、日付が最近の削除リストが出てきた。
「1月25日、1月27日、2月1日」
視線をゆっくりと下げていくと、知っている名前が載っていた。
「秋山…勇人」
思わず目を疑った。そこに載っていたのはあの日殺された男の名前だった。削除日もあの日と同じだ。
これは一体どういうことだ。殺された日が削除日と重なっているのは偶然だろうか。削除とはなんだ。
そのとき、さきほど見た資料の一文を思い出した。
「価値の無いものは確実に排除すること」
価値のないもの…秋山勇人が価値がないということだろうか。
その男を良く知らないから断言できないが、この削除リストと資料の内容から考えると、削除リストに載っている人間は…
「全員殺される。削除日に殺される。」
もしかして…綾さんも…
そんな不安がよぎり、急いでリストを上から下へと見た。
まさか、綾さんは価値の無い人間と見られているのか?だから、殺されるのか?そんなはずがない。綾さんに価値が無いわけが無い。
そんな理由で殺されるなんて考えたくも無い。
だが、この世界は悪い予感だけは当たるように出来ている。
「そんな…」
リストの一番最後に書かれていた名前は大河内綾だった |