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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

27 月の謎と宇宙船竣工篇

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27-39 月面探索

 3隻の搭載艇が射出されたあと、仁DはエルザDに声を掛けた。
『彼等が戻ってくるまで、お昼にしよう』
 折からお昼時。仁とエルザは、操縦装置を外し、昼食を食べることにした。
「お父さま、こちらに運ばせましょうか?」
「うん、そうだな」
 何かあった場合、即座に対応できるよう、昼食は蓬莱島の司令室で食べることにした。
「今日の昼食はソレイユが作りました」
 釜揚げうどんであった。野菜と海老の天ぷらが一緒に付いてくる。
「お、これは美味そうだ」
「美味しそう」
 飲み物はそば茶。猫舌の仁のことを考え、うどんと一緒に持ってきてある。食べている間に、飲み頃に冷めるであろうからだ。
「よろしければ、刻んだネギもどうぞ」
 今回出されたネギは、どちらかというと分葱わけぎ浅葱あさつきに似ている。
 辛味がやや強く、葉だけでなく、丸くなった根も、エシャロットのように食べられるのだ。
 仁もエルザも、こうした薬味を入れて食べるのは好きなので、たっぷりとネギを入れ、天ぷらと共にうどんを堪能した。
 そしてそば茶を飲んでいると、老君が簡単な報告をしてきた。
『3隻は高度1000メートルほどを飛んでおりますが、今のところ何も発見できておりません』
「そう、か。もう少し高度は落とすんだろう?」
『はい、『大聖』もそう言っております。最終的には50メートルから100メートルまで。その後のことはまたご指示を仰ぐことになるでしょう』
「わかった」
 まだ慌てる必要は無さそうだ、と、仁とエルザはゆっくりとそば茶を味わいつつ飲んだ。

 そして、軽く身体のストレッチをしてから、シートに座り、操縦装置を被り直した。

*   *   *

御主人様(マイロード)、3隻とも何ごともなく、高度100メートルを飛んでおります。めぼしいものは何も発見されていません』
 仁DとエルザDの制御を取り戻すと、さっそく『大聖』からの報告が入った。
『うーん、逆に、何もない、というのはおかしいな』
『ほんと。ジン兄、旧レナード王国の人たちはいったい……』
 そう、以前、旧レナード王国を訪れた際、疫病を逃れるため、国王以下、ほとんどの国民が『月へ』転移した、という過去を知ったのである。
 その、転移したはずの彼等の痕跡が何もないということは……。
『やはり地下、だろうな』
『ん』
 少しほっとした顔のエルザ。
 旧レナード王国の人々が、こぞって月へ転移し、戻って来ないという事実を知った時、真空の月面で全員息絶えているのではないかと震えたこともあったのだ。
『そうすると、着陸して地中を調べる必要があるの?』
 エルザDからの質問。
『うーん、それだと時間が掛かりすぎる可能性もあるよな……』
 上空を飛びながら月面を探査するのと、月面上を動き回って内部を調べるのとでは効率が違いすぎる。
『何か、いい手は……』
 仁D、というより、操縦している仁は考え込んだ。
『……そうか、探しているのは空洞じゃない。おそらくそこには魔導機(マギマシン)や魔導具があるはずだ』
『ああ、確かに。そうすると自由魔力素(エーテル)が消費されている、はず』
 エルザも仁の考えに気が付いたようだ。
『そうだ。つまり『魔力素探査機(エーテルレーダー)』を使うんだ』

魔力素探査機(エーテルレーダー)』は、700672号の助言により開発された、対象空間の自由魔力素(エーテル)分布を調べる魔導機(マギマシン)である。
 何もない晴朗な空間であれば、自由魔力素(エーテル)の分布密度に大きな偏りはないが、そこに物質がある限り、『偏り』が生まれる。
 その『偏り』を検知するのが『魔力素探査機(エーテルレーダー)』である。
 本来の用途ゆえに、短時間で調査できるのは強みである。

魔力素探査機(エーテルレーダー)』を使い、『大聖』は、ちょうどCTスキャンした画像のように、月の内部を描いていった。
 速度優先で、概略図であるが、今回はそれで十分だ。
『……表側……アルスに向いた面の地下に空洞があるようですね』
『何かあるなら裏側かと思ったが、違うのか』
 そこで『アドリアナ』は月の表側、すなわちアルスに向いている側へと回り込んだ。同時に、偵察に出ていた3隻も回収する。

 表側に移動し、再度『魔力素探査機(エーテルレーダー)』が作動。今度は、先程よりも若干精細な調査を行った。
 所用時間約2分で、月の断面図が描かれる。
『早い』
 エルザDが感心するが、元々は飛行中に障害物を検知するためのシステムである。反応が遅かったら使いものにならない。
『ふむ、ちょうどアルスに向いた真正面あたり、地下200メートルくらいのところに大きな空洞があるな』
『居住区でしょうか?』
 仁Dの呟きに『大聖』が反応する。
『かもな。大きさからいって、その可能性は高そうだ。階層構造になっているようだし』
『中央部には高密度の自由魔力素(エーテル)凝集体がありますね。強力な魔導機(マギマシン)でしょうか?』
『そうかもな』

 こうして、探している場所は見つかったようだが、次に問題になったのは『どうやって行く』かである。
『『穴を掘っていく』のは無理があるだろうな』
『ん、勘付かれる可能性が大』
『と、なると……』

 その1。『転送機』で目的地へ行く。
 その2。入口を探す。
 その3。転移魔法陣のシーケンスを調査し、『ハッキング』して蓬莱島式の転移門(ワープゲート)で移動。

 の3つが、まずは検討のまないたに載った。
『2はないな』
『ん。今まで3隻で月面を偵察して見つからなかったのだから』
『しんかい』と同様、出入り口が無いという可能性もあるので、無駄なことはしたくない。
 と、すれば、残るは1と3。どちらも『転移』を使う点で似通った案だ。
『3が一番スマートだけど、どのくらい時間が掛かるかわからないな』
「そうですね。ごしゅじんさまでしたら、魔法制御の流れ(マギシークエンス)の解析には時間は掛からないでしょうけれど」
 わざわざ旧レナード王国へ行って、転移魔法陣を調べる手間は如何ばかりか。
 なにしろ、旧レナード王国のことを教えてくれた『メッセンジャー』である魔導頭脳も、転移魔法陣については知らなかったのだから。
『と、なると1か』
『アドリアナ』には、主に攻撃用として、『転送機』が搭載されている。『魔力爆弾(マナボム)』などを敵前面に送り出す目的で搭載されているのだが、当然、こうした目的にも使える。
『高密度の自由魔力素(エーテル)凝集体、あれなら十分マーカーとして使えますね』

 転送機が目標を定めるには2通りの方法がある。
 1つは『測定』。魔力探知機(マギレーダー)などで測定し、角度と距離を算出する方法。
 もう1つは『マーカー』。魔力的な目印を設置し、そこへ向けて送り出す。
 当然、『マーカー』の方が手軽で精度も高い。今回は、マーカー代わりに高密度の自由魔力素(エーテル)凝集体を使おうというのである。

『よし、まずは偵察隊を送り込もう』
 仁Dが決断した。
『偵察隊としては『忍部隊しのびぶたい』でよろしいでしょうか?』
 忍部隊しのびぶたいとは、体長5センチの諜報用ミニゴーレムである。いざという時は、内蔵した転送装置で300メートルの転移ができる。
 以前は50メートルだったが、宇宙船に乗せるにあたり、『アドリアナ』の直径分まで転移距離を延ばした。
『それでいい。頼むぞ』
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