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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

27 月の謎と宇宙船竣工篇

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27-34 搭載艇見直し

「それで、提案はまだあるのか?」
『はい、あとは……』
 説明役は老君に替わった。今度は当たり障りのない内容が語られる。
 まず、『植物工場』で栽培する植物は、丈夫で成長が早く、栄養豊富なものがいいということで、『丸豆』(ダイズ)、『イトポ』(サツマイモ)『クロムギ』(ソバ)、『エアベール』(イチゴ)などが候補に挙げられる。
 次に、搭載艇だが、用途が異なるものをそれぞれ用意するより、多用途に使えるものを複数用意する方が良い、という。
 更に、偵察用の超小型艇が必要であるという提案が。
 そして、予備の動力源として、魔結晶(マギクリスタル)とエーテノールは積めるだけ積んで欲しいということ。
 最後に、できるなら『アドリアナ』1隻ではなく、サポート艦隊と共に飛んで欲しいという内容で締めくくられた。

「なるほどなあ」
 こちらは、仁にも納得のいく内容であった。いずれも、仁のやる気を喚起するような内容。
 ドラム缶型宇宙服よりよっぽどいい。
 そんな仁の横顔をちらっと見たエルザは、苦笑のような、微笑みのような、曖昧な表情を浮かべた。

*   *   *

 結局、老君たちの提案を全て仁は了承した。

 艦隊の方は、『アドリアナ』が完全に成功した後で考えることにする。
 その代わり、『イカロス2』と同型の、10メートル級宇宙船を数隻作り、サポートさせることにした。
 但し、非常時には内部に人間も乗れるように改造をする。つまり、脱出艇としても使えるようにするわけだ。
 更に、偵察用として、2.5メートル級の宇宙船も何隻か建造することになった。
 こちらは老君に任せることになる。

「よし、俺は搭載艇の見直しだ」
 少し早めの昼食を済ませた仁は、まずは万能搭載艇に着手する。
「ジン兄、どういう思想でいくの?」
 エルザは助手をする気満々である。
「うん、まずはどんな場面があるか、列挙してみよう」
「ん」

「アルス世界。普通に重力、酸素がある」
「飛行機、自動車、4脚歩行車。なんでも大丈夫」
「海とか、水だらけの場所」
「船か飛行機ですね。潜水艦もよろしいかと思います」
 礼子も参加してくれる。
「真空で重力が少ない場所」
「気密性に優れた小型宇宙船、でしょうか」
 アンもやって来て、知恵を貸してくれる。
「熱帯雨林のように植物が密生している場所」
「難しいですね。飛ぼうにも障害物が多そうですし、重量のある自動車もしくは4脚歩行車でしょうか」
 これはロルだ。
「氷に覆われた世界」
「飛行機や4脚歩行車ですね」
 そしてレファ。要は、皆参加してくれたと言うことになる。

「うーん、やっぱり飛行機は汎用性が高いな」
「それは当然。速度も出るし、便利」
 仁の呟きにエルザが同意を示す。
「ただ、速度が速いと見落とすというデメリットがありますね」
 アンが指摘してくれる。確かにその可能性はある、と仁も頷いた。
「密林の場合が一番大変か。小型の装甲車か4脚歩行車でも辛そうだな」
「その場合は刈り払いなどをするしかないでしょうね」
「だなあ……」
 レファの発言に仁も同意せざるを得ない。
「と、なると、小型の装甲車か4脚歩行車に飛行能力を持たせればいいのでしょうか」
 ロルの発言は的を射ている。その方向性でいいのだろう、と仁も思った。

「飛ぶ方は力場発生器フォースジェネレーターだから、陸上移動と水上・水中移動を考えるか」
 宇宙の場合は、圧力差が1気圧に過ぎないが、水中の場合は、深度10メートルにつき1気圧増えるという。
 つまり、圧力差に関しては、潜水艦の方が宇宙船よりも頑丈なのだ。
「うーん、何というか、方向性がまとまりきらないな……」
 万能とか汎用というものは、専用に比べ使いづらくなることが多い。
「……飛行機が歩くのか、自動車が飛ぶのか?」
「お、それわかりやすいな」
 ふとエルザが漏らした表現が面白かったので、仁は笑ってその考え方を追ってみる。
「お父さま、使用頻度はどうなのか、考えてみたらいかがでしょう」
 礼子からも有益な提案が来た。
「そうだな。……そもそも、月と長周期惑星。それに……ヘール。そんなところだからな」
「月に密林があるとは思えませんね」
「長周期惑星は……未知ですね」
「ヘールという星には密林はないか、あっても限定された地域でしょう」
 アン、ロル、レファがそれぞれ考えを述べていく。こんな賑やかな環境で検討したのは初めてだ、と仁はこの状況を楽しんでいた。
「としたら、まずは飛行機に脚を生やすことから考えるか」
「……なんだか、不気味」
 珍しく、エルザが混ぜっ返した。
「だな」
 エルザにも言われてしまったので、まずは無難なデザインを考える仁である。
「……やっぱり、自動車を飛ばすか……」
 近未来系のマンガなどで見られる、飛行自動車をイメージする仁。
「やっばりベースになる自動車は近未来的なデザインでなきゃな」
 クラシックカーが空を飛ぶ、というのも、それはそれでマニア心をくすぐられるものがあるが、まずはオーソドックスな線でいこう、と仁は思うのである。
「ごしゅじんさま、宇宙線や紫外線の害も考慮して下さい」
「おっと、そうだったな」
 アンに言われなければ、操縦席は透明なドーム状にしているところだった、と仁は反省した。
「全部金属で覆って、外は魔導投影窓(マジックスクリーン)か……」
「それが無難だと思います」
「……仕方ないな」
 仁としても、宇宙空間においては、人間の肉体がいかに無力かはわかっているつもりである。
 無理をせず、設計を進めていく。
 結果、卵を平たく潰したような形の『万能車』となった。
 もう少しわかりやすく言うと、林檎PCの『ワイヤレスマウス』のような形状である。
 全体をマギ・インバー、ミスリル、軟質魔導樹脂、64軽銀の4層構造で覆い、力場発生器フォースジェネレーターで飛行する。
 そして、極めつけはといえば、タイヤも脚も付いていないということ。
「これは、バリアクッション・カーだ!」
「お父さま、それってどういうことですか?」
「ジン兄、どういう意味?」
 礼子とエルザは意味がわからず、小首を傾げている。

 エアカー、という車種がある。
 正式にはエアクッション・カーという。現代地球ではホバークラフト、と呼ぶのが一般的だろうか。
 空気を吸い込み、それを底面に噴射して、その圧力で車体を浮かす。

 そして、仁が作ったこれは、空気ではなく、『障壁(バリア)』を使って車体を浮かそうというのであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20151027 修正
(誤)宇宙船や紫外線の害も考慮して下さい
(正)宇宙線や紫外線の害も考慮して下さい
+注意+
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