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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

27 月の謎と宇宙船竣工篇

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27-19 素材探索

「地底蜘蛛か……」
 グースは記憶を手繰ってみる。
「フソーではとうの昔に絶滅したと言われていたな。なんでも、穴蔵に棲んで、近付く生き物を捕らえて食べるとか」
「はあ?」
 サキが間の抜けた声を上げた。
 蓬莱島の地下にいる地底蜘蛛を見せてもらったことがあるが、基本的におとなしいし、食糧は自由魔力素(エーテル)である。
 だが。
(……もしかして、種類が違う?)
 考えてみれば、そこらにいる蜘蛛だって、種類が違えば生態も違ってくる。
 地底蜘蛛が1種類しかいないとは、誰も言っていない。
「これは、調べてみる価値がありそうだね」
「サキもそう思うかい?」
「うん。まずはグースが布を買った店に聞いてみることから始めようか」
 そう言いながら身体を浮かしかけたサキを押し止めたのはアアル。
「サキ様、本日はもうお休み下さい」
 言われてみれば、もう午後9時、蓬莱島にいた時間を加味すれば、20時間以上も起きていたことになる。
 アアルが忠告するのも無理はなかった。
「そうしたら、明日にでもロイザートへ行ってみることにしようか」
「そうだね」
 この日はそれでお開きとし、サキはアアルの手によって入浴、そして布団へと押し込められたのである。

*   *   *

 翌21日、グースは単身、首都ロイザートへ向かった。
 2人で出掛ける必要はない、とグースが主張したためである。
 帰化したばかりのグースを1人で行かせることにサキは心配を憶えたものの、記憶力のいいグースは、すでにロイザートについてサキよりも詳しくなっていたし、交渉ごとにも長けていた。
 宿は仁の屋敷を使えるよう、サキとトアから紹介状を書いて貰い、それを懐に入れて出発する。
 サキは残り、地底蜘蛛素材をもっとよく調べることにした。
「くふ、なんとなく寂しいけど、都合がいいことも確かだしね」
 サキ1人なら、心置きなく蓬莱島へと行くことができる。

「……と、いうことなんだよ」
『なるほど、ロイザートで、ですか。それは私も把握していませんでした』
 蓬莱島へ移動したサキは、老君に事情を説明した。驚いたことに老君も、ロイザートの店に『地底蜘蛛絹(GSS)』が売られていることを知らなかったという。
「グースの奴、どこで買ったんだろう?」
 付いていけば良かった、と、早くも後悔したサキである。
『サキ様、それでしたら、ロイザートにいる第5列(クインタ)をグース殿に付けましょう』
「うん……そうしてくれるかい?」
 こうして、ロイザートでのグースの動向は、老君の知るところとなった。

「さーて、それじゃあ、この地底蜘蛛絹(GSS)の性質を調べてみるか」
職人(スミス)151とペリド49をお付けします』
「ありがとう」
 工学魔法のエキスパートと、家事のエキスパートを付けてもらったサキは、自分が割り当てられた研究室へと赴いた。ここには、仁が700672号から貰った試薬もある。
 試薬の大半は、老君が分析し、同じ物を合成、調合してくれていた。
「さて、始めるとするか。スミス、ペリド、頼むよ」
「はい、お任せ下さい」
「はい、お任せ下さい」
「この前、エルザがこぼしていたっけな、蓬莱島の素材はあまりに高性能すぎて、流通に乗せられないって……」
 この地底蜘蛛絹(GSS)、ひいては地底蜘蛛樹脂(GSP)であれば、一般に供出できるかもしれない。
 錬金術師として、サキは燃えていた。

*   *   *

 一方、グースは、トスモ湖を渡り、午後の早い時間にはロイザートに着いていた。
 船着き場で見張っていた第5列(クインタ)、少年型のカペラ7、通称『テラル』はグースを見つけ、尾行に入った。『不可視化(インビジブル)』で姿を消して。
 グースは、まずは宿とする仁の屋敷を目指した。
 もう何年も住んでいるかのように、すっかりロイザートに馴染んでいる。
 この辺も彼の記憶力のなせる業である。
「これは、グース様」
 屋敷ではバロウが出迎えた。手紙を見せると、早速中へ通される。
「承りました、どうぞこちらへ」
 そして一室へと導かれる。
「どうぞ、こちらをお使い下さい」
 実は、サキから『仲間の腕輪』で仁に連絡が行っており、仁からはバトラーDに連絡をしてあり、よってバロウとベーレも知っていたのだ。

「さて、それじゃあ行ってくるか」
 拠点を確保したグースは、手回り品を部屋に置くと、さっそく出掛けることにした。
「行ってらっしゃいませ」
 バロウに見送られて仁の屋敷を出たグースは、真っ直ぐに生地を買った店へ向かった。
「ええと、確かここに店を出していたはずだが」
 そこは、露天商が店を出すエリア。
 店を持たない者や、宣伝のために出店を出している者、小遣い稼ぎに短期間だけ店を出す者など様々。
「ああ、いたいた」
 グースは、その驚異的な記憶力により、見覚えのある露天商を見つけ、近付いていった。
「いらっしゃい」
 店番をしているのは、グースと同い年くらいの男。
 そして、置かれた台上には、染めていない生成りの生地が並んでいる。
 その中から、『地底蜘蛛絹(GSS)』を見つけ出したグースは、さっそく質問する。
「済まないが、この生地の入手経路を教えてもらえないだろうか?」
 その問いには当然の答えが返ってきた。
「それはちょっと教えられませんねえ」
 だが、それもグースは予期していた。
「勘違いしないで欲しい。俺は学者だ。君の商売を邪魔する気はない。ただ、この布の素材に興味があって、入手経路を知りたいんだ」
 そう言いながら、銀貨を3枚、男に手渡す。
「なるほど、学者さんか。それならいいかな? ……とりあえず、布の仕入れ先だけは教えてあげよう」
 と言った後、声をひそめ、グースの耳に何ごとか囁いた。
 姿を消してそばに居た『テラル』にも聞こえなかったが、それは問題ではない。この後グースに付いていけばいいのだから。
「わかった。ありがとう」
 更にグースは、銀貨を3枚男に渡すと、身を翻した。
 記憶力のいいグースには、ロイザートの地図は既に頭に入っており、聞かされた場所もすぐに見当が付いたのである。
「……だが……あそこなのか……」
 小さな声で呟いたグース。その顔は、なんとなく嫌そうな雰囲気である。

 それもその筈、グースが向かった先はいわゆる『高級商店街』であった。つまり貴族御用達の商店街、である。
 その片隅に、露天商から聞いた仕入れ先があるのだが……。
 小綺麗な服装とはいえ、庶民丸出しのグースの姿は、周囲を歩く貴族やその付き人、使用人たちに比べたらみすぼらしく映る。
 小走りに進み、教えられた場所に辿り着いたグースは、
「ここの地下……か」
 と呟き、意を決して、地下へと続く階段へ歩を踏み出した。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20151015 修正
(旧)老君が分析し、同じ物を合成してくれていた
(新)老君が分析し、同じ物を合成、調合してくれていた
+注意+
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