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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

27 月の謎と宇宙船竣工篇

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27-18 疼く研究心

 昨日の夜、うっかり手違いで27-17を更新しています。
 今更だが、サキの誕生会は蓬莱島で行われていたわけで、それが済んだ後、サキたち、すなわちサキ本人と父トア、継母ステアリーナは、ショウロ皇国バンネ外れにある家へと戻ったのである。
 直接、敷地内にある転移門(ワープゲート)へ出るのではなく、ラインハルトの領地であるカルツ村の『蔦の館(ランケンハオス)』にラインハルトと共に移動し、そこから馬車で帰る、と言う手順を踏む。
 時差があるので、蓬莱島午後8時はバンネの午後2時40分。移動に時間が掛かっているので、今は午後3時半だ。
「お帰りなさい」
 3人を待っていたのはグース・ミナカタ。
 グースには、3人はロイザートの仁の屋敷で誕生日を祝ってきたと言ってある。
 そして、飛行船で近く……ラインハルトの領地まで送ってもらって、そこから馬車で帰って来たことにしてあるのだ。
 ラインハルトの領地から戻ってきたことに間違いはないので、特に問題はない。
 そして、こちらでも、ささやかなお祝いが開かれる。
 とはいっても、夕食時に改めてお祝いの言葉をもらうくらいであるが。

「サキ、誕生日おめでとう」
 グースが祝いの言葉を口にする。
「ありがとう、グース」
 グースに祝ってもらって、サキも嬉しそうだ。
「お嬢様、お誕生日おめでとうございます」
 ところで今、エッシェンバッハ家には自動人形(オートマタ)のアアル以外にも人間の使用人がいる。
 住人が増えたので雇ったのである。いや、雇い直したというべきか。
「ありがとう、ローナ」
 以前、エッシェンバッハ家で働いていたローナである。
 うるしにかぶれたサキの顔に驚いて仕事を辞めてしまったのだが、サキたちの暮らしもアアルのおかげで落ち着いてきたので雇い直したのである。
 ローナはエッシェンバッハ家のことをある程度知っているので、仕事を教える必要もなく、その点で助かっている。
「みんな、今日はありがとう」
 時差の影響で少し眠いサキであるが、睡眠不足には慣れており、表面上は笑顔でお祝いの言葉を受けていた。
「サキ、これは俺からだ」
 グースが何やら包みを差し出す。
「あ、ありがとう」
 受け取ったサキは、その包みの手触りが、馴染みのあるものと気が付く。
「うん? ……ああ、これは……」
 そして包みを開くと、そこには。
「本、かい?」
「ああ。俺がこっちへ来てまとめた第一弾だ。俺の知る魔物についてまとめた。この後、動物や植物もまとめていくつもりだ」
「そんな貴重な本を?」
 この時代の本は基本的に手書きである。辛うじて仁が、ゴーレムアームプロッターを作り出したくらい。
 ゆえに本には稀少価値があった。
「なに、同時に3冊書いた。1冊は手元に、1冊は陛下に献上し、もう1冊が……それさ」
「そうなのかい。ありがとう、グース」
 そしてサキは、本を包んでいた布に話題を移した。
「この布だけど……」
「ああ。『風呂敷』っていうんだ。『賢者(マグス)』が伝えた文化らしいぞ?」
 それは、70センチ四方くらいの、綺麗に染められた布。
 だが、サキが気にしたのはそこではなかった。
「へえ、『ふろしき』かい。……いや、ボクが気になったのは、生地なんだよ」
 眠気はどこへやら、いつも通りのサキである。
「ん? 先日、ロイザートで買ったのを、ローナに頼んで縫ってもらったんだが?」
 より正確には、裁断してから縁が綻びないように縫ってもらった、ということになる。
「え、ええええ!? ロ、ローナに!?」
 びっくり仰天したサキはローナの顔をまじまじと見る。見つめられたローナは慌てた。
「あ、あの、何か粗相しましたでしょうか?」
「い、いや、違うんだ。……この生地、何で出来ているか知っているかい?」
「いえ、絹に似て、丈夫な生地としか……」
「そうか……」
 サキは自分の分析結果を言う。
「これって……『地底蜘蛛絹(GSS)』だと思う」

「地底蜘蛛……ってなんですか?」
 ローナは知らないようだ。だが。
「何だって? それは……地底蜘蛛が出した糸で織った布ということか?」
 だが、グースはさすがに地底蜘蛛は知っていたようだ。
「うん、そういうことだね。でも……」
 ローナが切ったり縫ったり出来たということは、強度が違うのだろうか? と、サキは推測した。
「グース、この生地はまだ残っているかい?」
「ああ、残ってるぞ」
「それなら、その生地を……」
 と、ここで父トアから声が掛けられた。
「サキ、グース君、そのくらいにしなさい。まだ夕食の途中だよ」
「あ、ごめんなさい」
「済みません」
 サキとグースは慌てて席に着いた。
「さて、それじゃあ、サキの誕生会を始めようか」

*   *   *

 既に仁たちと誕生会を済ませているサキはもちろん、新たな知識への鍵になるかもしれないということでグースもまた、手早く食事を切り上げた。
 トアとステアリーナは彼等を見て苦笑している。

「……で、生地は?」
「これと、これだ」
 巾90センチほどの生地から作ったのであろう、15センチほどの端布はぎれが出ていた。
「ああ、こっちの端布でいいよ。……ふむ、やっぱり手触りは地底蜘蛛絹(GSS)によく似ているね」
「よくわかるな?」
「うん、使ったことがあるからね」
 そんなサキの返答に、グースは少し驚いたようだが、口を噤み、何も言わなかった。
「でも、強度が段違いだ。ボクの知る地底蜘蛛絹(GSS)だったら、普通のハサミじゃ切れないはずだからね」
「そうなのか?」
「うん。何が違うんだろう?」
 サキは、今すぐにでも蓬莱島へ戻って、この地底蜘蛛絹(GSS)もどきを調べてみたかった。
 だが、今はグースが一緒だ。ファミリーの一員ではない彼を連れて行くことはできない。
「うーん、どうやって分析するかな……あっ、そうか、アアル!」
 こういう時のため、アアルにも簡単な分析魔法が使えることを思い出したサキ。
「ジンに感謝だね」
「はい、サキ様」
「アアル、この布を分析してみてくれないかい?」
「わかりました。……『分析(アナライズ)』……地底蜘蛛の糸でできているようですね」
「やっぱり、そうなんだね」
 そこで、今まで黙って見ていたグースが口を開いた。
「ふうむ、そうやって調べられるのか。工学魔法というのは面白いな」
「そうなんだよ、グース。ジンだったらもっと使えるんだけどね」
「……それはともかく、どうして強度がこんなに違うんだろう?」
「うーん、わからないね」
 頭を捻るグースとサキ。
「とにかく、成分が何か違うんだろうな」
 グースが自分の考えを述べた。サキもそれには同意する。
「うん……それしかないかな。と、すると、どこで採れたのか、追跡調査の必要があるね」
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20151011 修正
(誤)そこから馬車で帰留
(正)そこから馬車で帰る

(旧)地底蜘蛛が吐いた糸で織った布ということか?
(新)地底蜘蛛が出した糸で織った布ということか?
 蜘蛛は糸を吐くと言うより尻から出しますね……。

 20151012 修正
(旧)何だって? 地底蜘蛛絹(GSS)? ということは、地底蜘蛛が出した糸で織った布ということか?
(新)何だって? それは……地底蜘蛛が出した糸で織った布ということか?
(旧)だが、グースはさすがに知っていたようだ。
(新)だが、グースはさすがに地底蜘蛛は知っていたようだ。
『GSS』という略称をグースがいきなり使うのは不自然ですので。
+注意+
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