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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

27 月の謎と宇宙船竣工篇

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27-14 助言、そして解決

 昨夜、投稿ミスって一瞬だけの更新通知をご覧になった方も多いかと思います。
 お騒がせしました。


「それで、次は?」
「やっぱり、レーダーかな」
 本来のレーダーは、電波を発信し、それが対象物に当たって跳ね返ってくる『反射波』を検知する。
 そういう意味では、『魔力探知機(マギレーダー)』は対象物の魔力を検知するという受動的な原理なので、本来の意味でのレーダーとは異なるのだが。
「魔力波を発信したら?」
「……いや、多分、大抵の物体は透過してしまう」
「そう……」
 先日来、仁が悩んでいたのはこれである。
 魔素通信機(マナカム)に使われている、いわゆる『自由魔力素(エーテル)波』は、対象物を透過してしまうのだ。
 そこへ、礼子が助言をしてきた。
「お父さま、わたくしが気配を察知する方式を使えないでしょうか?」
「礼子が気配を察知する方式か……」
 仁は、改めて考え直してみる。

 1.視覚。周囲を素早く見回し、不審な存在をチェックしている。
 2.聴覚。周囲で生じた音を分析し、怪しい音は更に詳しく確認する方法を取っている。
 3.魔力。魔力を持つ存在は必ず微弱な魔力波(精神波)を出している。それを検知する。
 4.空気の揺らぎ。音として定義することもできないような揺らぎを、風属性魔法『空気の領域(エア・テリトリー)』を使って検知する。
 5.地面の震動。『触覚』を追加したことにより、地面から伝わる振動を解析できるようになった。

「宇宙空間だから、視覚は使えるな……」
 遮るものがない宇宙空間であるから、光学探知は有効であろう。場合によって、可視光に限らず、赤外・紫外線の領域、果ては電磁波領域まで。
自由魔力素(エーテル)の分布や偏りを計測出来たらいいのかもな……難しいが」
『行き詰まったら、いつでも訪れるがいい』、と言ってくれた700672号の言葉を思い出す仁。
「……さすがに、ここは頼ってもいいだろうな」
 独力で出来ることには限界がある。仁はそう判断し、もう一度700672号を訪れることを決めたのである。

「夕食までには帰るから」
 とエルザに告げ、仁は礼子を連れて700672号の拠点、『白い部屋』を再訪した。

「ようこそ、ジン殿。その顔だと、悩んでいるようであるな」
 仁の顔を見るなり、700672号はそう看破した。
「はい。対物レーダーが、どうにも難しくて」
「ふむ。確かにな。空間を把握するということは奥が深い。まして、宇宙を高速で飛行している際の障害物検知となると方法は限られてくる」
 と前置きをし、700672号は説明を開始した。
「吾等……いや、『吾の主人』が使っていた方法を説明しよう」
「お願いします」
「空間そのものを走査するのだよ」
 いきなりとんでもないことを言われる。
「空間を……ですか? どうやって?」
「『精神波』を使う……と言えばわかるかな?」
「……あっ!」
 先程仁が考えていた、自由魔力素(エーテル)の分布や偏りを計測するというアイデアそのものであった。
 仁の顔を見て、700672号は満足そうに頷いた。
「見当はついておるようだな。精神波……つまり高周波の魔力波の一種を使う」
「なるほど……」
 そこまでの説明で、仁にはおぼろげながらも、700672号の言わんとするところを理解し始めた。
「貴殿の作る自動人形(オートマタ)は、全て貴殿と同じ魔力を有するわけだ」
 つまり、やり方次第で、空間に満ちる自由魔力素(エーテル)を検知できるということだ、と説明がなされた。
 物質が存在するなら、自由魔力素(エーテル)の分布は一定にはならないので、そこに物体があることがわかるという。
 魔力のない物体なら空白を、魔力の高い存在なら高密度の魔力素(マナ)を感じるはずだ。
「広大な範囲であるから、生物の脳では把握しきれないだろうが、人工頭脳ならば可能だろう」
 それは、仁にとって解決可能な領域である。
「精神波を、自由魔力素(エーテル)を支配するためにではなく、その存在密度を把握するために使うには一工夫必要だ」
 700672号は、そのために必要な魔法制御の流れ(マギシークエンス)を述べた。
「……と、いうことだ」
「わかりました。ありがとうございます」
 懸念していた問題点が取り除かれた仁は、晴れ晴れとした顔をしていた。

「それはよかった。ところで、先日から今日までの間に考案した内容を聞かせてもらえないだろうか? 僭越ながら、検証させてもらいたい」
 仁としてもそれは望むところである。
「ええ。そうですね。まず、物理攻撃には……」
 仁は、あれから考案した装備の数々を説明していった。
 700672号は口を挟むことなく、仁の説明に聞き入っている。
「……魔法を使わない非常用装備、以上です」
 700672号は深く頷いた。
「なかなかよく考えられている。見事だ。特に、魔法に頼り切らない、という発想は」
「そうですか?」
「うむ。貴殿はこれから知ることになるだろうが、宇宙空間の自由魔力素(エーテル)分布は一定ではない。だが、吾の知る限りでは、魔導機(マギマシン)が動かなくなるほど濃度が低い場所はなかったな」
 その言葉は大きな安心材料となる。
「それでも、魔法に頼らない装備というものは意義がある、と思うがな」
「俺もそう思いますよ」
「ああ、それから、障害物の排除だがな、単なる破壊で十分かどうかは、事前に検証しておくようにな」
「? ……はい、わかりました」
 そして700672号は、もう1つ、忠告をくれる。
「宇宙空間では遮るものが何もないため、太陽光といえども、生身の肉体にとっては凶器になる。遮光は十分にな」
「ありがとうございます」
 宇宙服に関してはこれからいろいろ試験をすることになるので、こうした助言は有り難かった。

*   *   *

 蓬莱島の研究所に戻った仁は、さっそく自由魔力素(エーテル)分布を把握する魔導機(マギマシン)の製作に取りかかった。
 原理は理解できたので、それほど時間は掛からない。
 とはいえ、時刻も午後6時となり、礼子がそれとなく夕食の時間であることを匂わせたので、その日の作業はそれまでとした仁である。

 エルザが待つ『家』で夕食。
 白米のご飯、揚げ出し豆腐、イトポ(サツマイモ)の煮物、オマソウ(カイナ村付近のエルメ川で採れるヤマメに似た魚)の塩焼き、それにトポポ(ジャガイモ)とマルネギ(タマネギ)の味噌汁。
「この味噌汁、美味いな」
 仁の口にちょうど合う濃さであり、出汁もよく取れている。
「そう、よかった」
 エルザも、700672号のところから帰って来た仁の顔から険しさが取れているのでほっとしている。
「行ってきて良かったよ」
 と、仁自身も、収穫があったことを説明したので、エルザとしても心痛の種が無くなった。
「あとは実験して、何が一番適切か、知ることだな」
 この日のお茶は玄米茶。
 飲み頃に冷めたお茶を飲みながら、仁が予定を口にした。
「宇宙服の試験や、結界の形状、偵察機なんかの実地テストだな」
「10メートル級の試作宇宙船で、でしょ?」
「うん、もちろんさ」
 老君主導で行われるが、仁としてもその過程を逐次追ってみたいと思っている。
「いよいよ、開発も終盤だな」
 そう呟いた仁の顔は、昨日までと異なり、晴れやかだったので、エルザもつられて微笑む。
「明日が、楽しみ」
 と、口に出すエルザ。正直なところ、彼女だって宇宙に興味があるのだ。
 安全が保証されるなら、行ってみたいというのが本音。
「だな。俺としても、可能な限りの安全対策をするからさ」
「ん」
 窓から外を見ると、暗闇の中、月が輝いていた。
「まずは、あそこを探検したいと思っているんだ」
「……レナード王国の人たちのことが、気になるの?」
「……ああ」
 以前、ハンナも一緒に、旧レナード王国の首都跡を訪れた際、現地に遺されたメッセンジャーから聞いた、彼等の運命が気になっていた。
『魔力性消耗熱』を恐れるあまり、謎の転移魔法陣を使い、いずこかへ避難したというのだ。
 その避難先が月である可能性が高く、そうなると旧レナード王国の人々は真空の月面で全滅した可能性が高い。
 そういった疑念にケリを付けたいと、常々思っていた仁なのであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20151008 修正
(旧)さすがに、頼っても仕方ないだろうな
(新)さすがに、ここは頼ってもいいだろうな」

(誤)検討はついておるようだな
(正)見当はついておるようだな

(誤)入ってきて良かったよ
(正)行ってきて良かったよ
+注意+
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