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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

27 月の謎と宇宙船竣工篇

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27-07 相談事

 翌日仁は、まずエリアス王国へと飛んだ。
 久しぶりにマルシアとロドリゴに会う他、宇宙船建造について意見をもらおうと思ったのである。
「ここも、久しぶり」
 エルザも一緒である。
 転移門(ワープゲート)のある海蝕洞窟から出ると、懐かしい海の色が広がっていた。
「蓬莱島ともちょっと違うんだよな」
 海のただ中にある蓬莱島と、半島南端のポトロックとでは、やはり条件も違うのだろうか、と仁は思う。
「潮の匂いも違う」
 エルザが鼻をひくつかせる。ポトロックにはやはり人々の日々の営みがあるからだろう。
『海鳴亭』を横目で見ながら、ゆっくりと町並みを抜け、マルシアの工房へ。
 今日はもう戻って来ているのは確認済みだ。
「こんにちは」
「あっ、ジンさん、エルザさん!」
 店番をしていたジェレミーが2人に気が付いて立ち上がり……椅子につまずいてこけた。
「あいたぁ……」
 エルザは涙目になっているジェレミーに駆け寄り、
「『癒し(フェルハイレ)』」
 治癒魔法を掛けてやるのだった。
 それだけでジェレミーは感激。
「あ、ありがとうございます!」
 拝まんばかりのテンションに、エルザも若干引き気味である。
「ど、どういたしまして」
 と、答えるのがやっとであった。

「やあ、ジン、エルザ。しばらくぶり」
 その騒ぎを聞きつけて、奥からマルシアが現れた。
「先日は、ラインハルトの誕生日だったようだね、出席できずに申し訳なかったよ」
 と、済まなそうなマルシアを仁は宥めた。
「ああ、ラインハルトはそんなこと気にしていないさ」
「だといいんだけどね……。で、今日はどうしたんだい?」
「うん、マルシアの意見を聞きたいことがあってね」
 そう仁が答えれば、マルシアは顔を輝かせた。
「そうか! 実はあたしも、ジンに相談して見たいことがあったんだよ!」
 そこで、打ち合わせのために、工房の方へと移動した。

「おや、ジン殿、エルザ殿」
 そちらにはマルシアの父、ロドリゴがいて、船の設計をしていた。
「父さん、ちょうど良いから、あの件を相談してみようよ」
「ああ、そうだな」
 工房の奥には設計・検討用のブースがしつらえてある。
 仁、エルザ、マルシア、ロドリゴの4名はテーブルを囲んで座った。
 礼子は仁の傍らに立っている。
「クゥヘをどうぞ」
 ゴーレム、アローが飲み物を運んできた。
「ありがとう。アローも調子はどうだ?」
「はい、お陰様で不具合もまったくありません」
 以前マルシアが遭難した際に、救出劇で無理をしたアローを、蓬莱島準拠の性能に改造したのである。
 通常の使用で問題が生じるわけもなかった。

「さて、それじゃあまず、ジンの話の方から聞かせておくれよ」
「そうだな。どう切り出したものか……」
 マルシアとロドリゴには『知識転写(トランスインフォ)』が使えなかったので、代わって老君が編集した技術書を読んでもらっている。
 その中に、宇宙船の概念くらいは書かれていたはずだな、と思い出した仁は、説明を始めた。
「月へ行けるような宇宙船を開発中なんだけど、『こんな機能があったらいいなあ』という意見があったら出して欲しい」
 だがその言葉に、マルシアとロドリゴは言葉を失ってしまった。
「……つ、月へ……」
 辛うじてそれだけを口にしただけ。
 仁もエルザも、その心境をおもんぱかってしばらく黙っていた。
 そして2杯目のクゥヘが空になる頃、2人はようやく再起動したのである。
「……はあ……ジンが規格外だと言うことは知っていたつもりだったけど、まさか月へ行くなんてねえ」
「『ウォッチャー』というものを打ち上げたと聞いたときでさえ耳を疑ったというのに」
「お父さまですから」
 そして礼子がいいタイミングで合いの手を入れた。

「えーと、意見が聞きたい、んだったね」
 仕切り直した4人。
「外洋に出て、長期間戻らない船になぞらえることができそうだね」
 ロドリゴの考え方は仁に取って斬新であった。
「私なら、マルシアの顔が見たくなるなあ」
「と、父さん!」
 だが仁は、それを『通信装置』という形で受け止めた。
(なるほど、地上……というか、蓬莱島と確実に連絡が取れるような通信装置か。映像付きの『魔素映像通信機(マナ・テレカム)』……場合によっては中継用の……)
 現代日本での知識を生かし、実現できるようなアイデアに昇華していく仁である。
「後はやはり、たまにでいいから、美味い食事が食べたくなるな」
「ああ、確かにそうかも」
 栄養バランス優先の食事だけでは飽きが来る。何日間宇宙にいるか、まだ決まってはいないものの、1日1食くらいはそういった食事メニューにできたらいいな、と考える仁であった。
「あたしとしては、海に出たなら、綺麗な夕焼け、朝焼けを見てみたいねえ」
 マルシアの言葉。仁はそこから、肉眼で宇宙を見ることができる展望室を作ろうと思った。
「あとは……天候が悪いときは退屈するからね……」
 その言葉に、娯楽室の必要性を感じた仁であった。

 必要事項は礼子を通じて老君が把握していてくれるだろうが、仁自身も己の考えを交えたメモをとった。
 それが終わると、いよいよマルシアたちの相談に乗ることにする。
「ありがとう。参考になったよ。それじゃあ、マルシアたちの相談事を聞かせてくれないか?」
「うん、それじゃあさっそく……」
 マルシアはそう答えると、アローに何ごとかを指示する。それを受けたアローはブースを出て、何かを抱えてすぐに戻って来た。
 アローはそれをテーブルの上に置く。
「これを見てほしいんだ」
「これは?」
 仁の目の前に置かれたそれは、円柱形をした『何か』。中心から軸が一方向に伸びている。
「『魔導回転装置』、って呼んでたな」
「『魔導回転装置』?」
 オウム返しに口にする仁であったが、その目は装置に釘付けである。
(モーターか……!)
「スクリューを駆動するのに、『ゴーレム駆動機』だと少々回転数が足りないので、なんとかいう魔法工作士(マギクラフトマン)が考案したものなんだよ」
 名前は忘れ去られているようだ。
「ふうむ……」
 仁は分解することなく、その機能を調べていく。
「ふんふん、中に回転する軸があるが、その軸を風魔法で回しているんだな」
 原理的には、以前仁が作った『魔導タービン』に近い。
「でも、これじゃあトルクが足りないだろう?」
 その欠点を知っている仁が言うと、マルシアとロドリゴは頷いた。
「そうなんだ。少し大きなスクリューになると回らないんだよ」
「ゴーレム駆動機だと回転数が少し足りない。痛し痒しといったところなんですよ」
「うーん……」
 仁は、既に『噴射式推進器(ジェットスラスター)』を実用化している。つまり、外輪船から一足飛びにウォータージェット推進に行ってしまっているため、ある意味空白地帯といえる。
「これじゃいけないな」
 本気で考え始めた仁であった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20151001 修正
(誤)ジェイミー(2箇所)
(正)ジェレミー
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