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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

26 異民族の国旅行篇

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26-38 フニシス山

「うう……頭が痛い……」
 4月23日。二日酔いで痛む頭を抱えるグースを尻目に、自動車はフニシス山を目指した。
 車の揺れがまた、頭に響くようで、エルザは治癒魔法をグースに掛けてやったのであった。
「『治せ(ビハントラン)』」
 初級治療だったが、グースはそれでかなりよくなったようで、エルザに感謝することしきり。
「エルザ殿! おかげで助かったよ!」
 それを横目で見ているサキ。
 ハンナは窓の外の眺めに夢中。
 こうして進むことおよそ5時間。
「あれがフニシス山か……」
 昼過ぎ、眼前にフニシス山の威容が迫って来た。
「すごい山だな……」
 標高は5000メートルくらいはあるだろう。半ばから上は真っ白な雪に覆われている。
「さて、何か手掛かりはあるんだろうか?」
 見たところ、周囲に人工物は何も無いように見える。
「1000年以上前だからなあ……」
 グースもなんとなく気が削がれたような雰囲気を醸し出していた。
 確かに、『ウォッチャー』からの観察によっても、この一帯に人工物は見受けられないということなのである。
「ということは、地下にあるのかもしれないな」
 遺跡の多くが、地下に作られていることを知っている仁としては、その可能性が高いと思った。
「600012号の基地も山の地下だったしな」
 仁はまず礼子に『魔力探知装置(マギディテクター)』で反応を調べてもらうことにした。
「はい、お父さま」
 礼子に内蔵されている魔力探知装置(マギディテクター)は、魔力探知機(マギレーダー)と同じ原理で動作するものの、方向は分かっても距離の精度が悪い。
 その欠点を補うために、礼子は動き回りながら周囲を探っていった。
 そして15分が経過し、礼子が戻ってきた。
「お父さま、あの方角に何かあります」
 礼子が指差した方向を見ると、フニシス山の麓である。
「3点測定をしてみますと、地下5メートルくらいかと思われます」
「そ、そこに何が?」
 勢いづいたグースが質問するが、礼子はあっさりとそれを受け流した。
「それはここからでは分かりません。魔力を放つ何かとしか」
「うーん……」
 どうすべきか、仁は考えてみる。
「もう少し近付いて、拠点のテントを張るか」
 何があるか分からないので、大事をとることにした。
 礼子が『このあたり』と言う地点から200メートル程離れたところに自動車を駐めてテントを張り、エドガーとアアルに障壁(バリア)をいつでも張れるよう待機させる。
 ハンナ、サキ、エルザはテントで待機。仁と礼子が調査に出向いた。身を守る術のないグースは待機組である。
「お父さまもテントで待っていていただきたいのですが」
 仁を心配して礼子が言うが、仁は首を横に振った。
「何か発見できそうなのに自分で行かなくてどうする。ちゃんと守護指輪(ガードリング)も腕輪もしているから」
『腕輪』……『仲間の腕輪』は装着者のみならず、老君からの信号でも障壁(バリア)を張ることができるのだ。
「老君だって、お父さまには危険なことをしてほしくないと言ってますよ」
「それはわかってるけどな……」
 仁としても、自分のことを心配してくれる彼等のことは有り難いと思っている。が、ちょっと過保護に過ぎるのではないかと思うこともしばしばあるのも事実。
 たまには自分が第一発見者になってみたいと仁が思うのも無理はない。
 まして、危険性が比較的低いと思われる、こういう機会であれば尚のこと。
「ここです」
 礼子は足元を指差した。
「ふうん、周りと変わりのない地面だな」
 出入り口があるようには見えない。そこで仁は魔法で探索することにした。
「『地下探索(グランドサーチ)』……ん!?」
「お父さま、ありましたか?」
「……らしいな。地下に空洞がある」
 こんなにすぐ見つかるとは思わなかった仁であるが、それだけ礼子の探査が正確だったということだ。
「『掘削(ディグ)』『掘削(ディグ)』『掘削(ディグ)』……」
 仁は少しずつ穴を掘ってみることにした。
「お……?」
 礼子の言ったとおり、5メートルほど土を取り除くと、そこに石の天井らしき物が見えてきたのである。
「もう少しだな。『掘削(ディグ)』」
 10分ほどで土は取り除かれ、天井の全貌が露わになった。
「元々地下施設だったのかな?」
 天井もしくは屋根と思われる箇所に出入り口らしいものが付いていたのである。その上に土が積もったらしい。
「お父さま、ここから先はわたくしが一人でまいります」
 何があるかわからないから、という理由で、礼子がまず確認する、という。
「……わかった」
 これについては礼子も譲らないだろうから、仁は任せることにした。
「ではお父さま、テントに戻っていて下さい。そちらで守護指輪(ガードリング)を使い……」
「わかったわかった。ちゃんと障壁(バリア)を張って待っているよ」
「そうなさってくださいね? では、行ってまいります」
 仁がテントに到着したのを確認した礼子は、出入り口の取っ手らしき箇所に手を掛け、持ち上げた。
 少々固かったが、礼子の力なら問題なく開く。そこから礼子は内部へと入り込んだ。

*   *   *

 そしておよそ15分。
 何があるのか気になり、仁たちは誰も口を聞かなかった。
「……遅いな、礼子」
 我慢できなくなった仁がぼそりと口にした、その時。
「ジン兄、あれ」
 エルザが指差す方を見ると、礼子が手を振っていた。それを見た全員が駆け出す。
 200メートルの距離をあっという間に詰めた彼等は、礼子の説明を聞こうと立ち止まった。
「お父さま、中は全くの無人で、危険はありません」
 そう告げた礼子の表情が、心なしか暗いように見える。
「……できましたら、ご自分でお確かめ下さい」
「うん? そうか、わかった」
 礼子の意外な言葉に、仁は面食らいつつも興味が勝り、開いている入り口へと向かった。
 そこには階段があって、薄明るく照明が点いている。
 仁が階段に足を踏み入れると、すかさず礼子が後に続いた。
 その後からエルザ、エドガー、ハンナ、サキ、アアル。殿しんがりはグースである。
「皆さん、お静かに願います」
 礼子が一同に念を押した。
 降り立った場所は8畳くらいの部屋。
 壁も天井も石造りだ。薄暗いが魔導ランプが1つ灯っていた。
 他にはがらんとして何も無い。
「お父さま、あれを」
 礼子が小声で仁に囁いた。それは正面の壁。
 その指差した場所には消えかけた文字が。
『アドリアナ*****』
 確かに、アドリアナの文字が読み取れたのである。
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