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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

26 異民族の国旅行篇

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26-10 図書館

 資料集2の地図に、異民族北部地図をアップしました。
「石鹸か……」
 風呂から上がった仁は、浴衣姿で寛いでいる。
 仁は、置かれていた石鹸に目を付けていた。泡立ちがよく、香りもいい。
 いろいろ作り上げてきた仁であるが、石鹸は作っていない。
 せいぜい、リタの実を石鹸代わりに使うことと、油汚れに重曹を使うことで落ちやすくなることを広めたくらいだ。
 油脂とアルカリでできるらしいことは知っている仁だが、そこまで止まり。施設でもトライしていた子がいたのだが、仁は別のことに気を取られていて手伝わず、従って作り方の詳細を知らないのである。
賢者(マグス)という人は、化学に詳しかったのかな」
 それが仁の感想である。また、ここを発つ前には幾つか手に入れていきたいとも思っていた。
「でも、自転車は?」
 そこへエルザたちも風呂から上がってやって来た。
「お、似合うな」
 皆、浴衣姿である。普段見慣れぬ服装はちょっと新鮮だ。
「くふ、カイナ村の夏祭り以来だね」
「おもしろい服だよね!」
 庭に面した襖を開けると、縁側があり、涼しい風が入ってくる。風呂上がりの火照った身体に心地よい。
 縁側に腰掛けた仁の右隣にサキ、左隣にエルザ。そして膝の上にハンナが座る。
 石鹸のよい香りがして、思わず深呼吸してしまった仁は悪くない。
「おにーちゃん?」
「あ、ああ。……みんな、石鹸のいい匂いだな」
「うん! とっても気持ちよかったよ!」
「ん。……欲しくなった」
「ああ、あとで買っていこうな」
「それがいいね!」
 石鹸に関しては皆、同意見だった。
 ひとしきり縁側で涼んだ仁たちは、話を再開することにした。
「さっきの話だけど、自転車を作れたということは、化学だけじゃないのでは、と思った」
「ああ、エルザの言い分も分かる。でも俺は、あの自転車を整備して気が付いたんだ」
 それを聞いて、怪訝そうな顔をするエルザ。
「細かい部分で再現度が低い、ということを」
「え、ジン、そうなのかい?」
 黙っていられなくなったのか、サキが声を上げた。
「ああ。スポークの取り付けられ方が少しおかしかったし、ブレーキパッドの使い方とか、ブレーキレバーとワイヤーの取り付け方とか」
「そんなことまでわかるものなのかい」
「化学系の人だけど、自転車の整備くらいは自分でやった、そんなレベルのような気がするんだよ」
「ふうん、さすがジン、『魔法工学師マギクラフト・マイスター』だねえ」
 感心するサキであった。
「みんなも石鹸を使ったろう? ああいう物を作れるということは、化学系に強いんじゃないかと思ったのさ。それに加えて解剖学にも通じているんじゃないかと思ってる」
「それは、どうして?」
 今度はエルザからの疑問だ。
「ほら、以前に『アキツ』という自動人形(オートマタ)を修理したろう? あの時に、骨格や筋肉の付き方を見た、その感想さ」
「納得」
「どういうことだい?」
 納得するエルザと、疑問をもつサキ。
「サキ姉、人間の筋肉は、少しだけ斜めに付いている。だから腕や脚を捻ることができるわけ」
 非常に簡潔にした説明だったが、察しのよいサキはそれで理解してくれた。
「なるほどね。納得はいったよ」
 その時仁が、膝の上のハンナが静かなことに気付いた。
「ああ、ハンナ、寝ちゃったみたいだ。そっと布団に寝かせてやろう」
「ん、それがいい」
 ということで、仁たちはそれぞれの部屋に引き上げ、休んだのである。

*   *   *

 北の地へ行ってみたいとは思っている仁であるが、ここミヤコの町にも見るべきものは多い。
 ということで、少なくとも3、4日は滞在し、ミヤコとその周辺を見て回ることにしたのである。
 案内役はもちろんミイ。
 彼女は、歳の割に博学で、町や文化についての質問に、大抵のことに答えてくれた。
「あの建物は町で一番古いのですが、3度ほど改築してますので、当時のまま残っているのは基礎と土台だけなんです」
「中央図書館です。この町で一番の蔵書量を誇ります。閲覧は自由にできますが持ち出しは駄目です」
「国営公園です。植物園が併設されていて、我が国で見られる植物の半分くらいが植栽されています」
「ここは資料館です。使われなくなった道具類が展示されています」
 なかなか見所が多く、4箇所ほど回っただけで1日が終わってしまった。
 サキが一番興味を持ったのは図書館、仁はと言えば資料館であった。エルザは仁と同じく資料館、ハンナは図書館だそうだ。

「明日一日は自由行動にしてみないか?」
 夕食後、サキがそんなことを言い出した。図書館の本をいろいろ調べてみたいらしい。
「おにーちゃん、あたしも本読んでみたい!」
 ハンナまでがそんなことをいう。聞くところによると、カイナ村でも二堂城にある本の大半を読んでしまったそうだ。
 もっとも、読んだといっても、数学(連立方程式程度まで)や魔法の本のように、読みはしても意味が理解できていない本が多かったようだが。
 それでも、ハンナの歳で本に触れるのはいいことだと思った仁は、サキの提案を承諾する。
 本と言っても、一冊のページ数は100ページ前後、手書き文字が多いので内容的にはそれほど多くの情報が詰まっているわけではない。
「アアルの能力なら、おそらく一日で100冊程度を記憶できるだろうしな」
 ミイのいないところで仁がそう言うと、サキは驚いた顔をした。
「そ、そうなのかい。便利と言えばいいのか、えげつないと言うべきなのか」
「ジン兄が一言、首長のヒロさんに言えば、堂々と本の内容を記憶させてくれる気がする」
 エルザが口を挟んだ。まったくその通りだろう、と仁も同意した。なら、正式に申し込むべきだろう。
 それとは別に、サキとハンナは翌日は1日図書館に詰めることになった。
「サキ、ハンナを頼む。ハンナ、いい子にしてろよ」
「うん、任せておいてくれ」
「うん、おにーちゃん! あたし、ご本だいすき!」
 アアルも付いているので心配はないだろう。『仲間の腕輪』も付けていることであるし、と仁は考えていた。
「食事は? 夢中になって食べない、というのは駄目だぞ」
 特にサキは夢中になると食事を抜きかねないと、心配性な仁が注意すると、
「ジン兄、お昼は待ち合わせて一緒に摂ればいい」
 と、エルザが提案してきた。
「ジン兄も夢中になるとご飯そっちのけで熱中するんだから」
「……」
 返す言葉のない仁であった。

 ということで4月10日、ハンナとサキは連れ立って中央図書館へ、仁とエルザは資料館へ、となる。
 とは言っても、どちらも公園に隣接しており、距離的には百メートルくらいしか離れていないのだが。
 なので、まずは全員で図書館へ向かった。受付で、ミイが司書に相当するらしい職員に話を付けてくれたので、いろいろ便宜を図ってもらえそうだ。
「ジン、それじゃあ、またお昼にここで」
「おにーちゃん、またあとで!」
「ああ、またお昼にな」
 図書館には隣接して軽食のできる食堂兼喫茶店があるので、そこでお昼を食べることにしたのである。
 サキたちと分かれたジン、エルザは、ミイに案内されて資料館へ。
 前日はざっとしか見られなかったので、今日はゆっくりと見て回る予定である。
 ミイはこうした展示物に詳しいので好都合だ。

「まずは1階、乗り物コーナーですね」
 馬車、自転車、人力車、駕籠、輿こしが置かれ、乗用の家畜としては馬の人形が置かれている。
「やっぱり馬も使われていたんだな」
 それにしては、馬を目にすることが少ない。
「はい。過去にはかなり普及していたようですが、600年ほど前に馬の病気が流行ったそうなんです」
 ミイが説明してくれる。
 現代地球でも、馬パラチフス、馬インフルエンザや日本脳炎など、馬が罹患りかんする伝染病は多い。
 その一つにかかり、こちらの馬は激減したということらしい。
「それから町中では人力車が、町間では自転車が増えたということです」
「おや?」
 ここに展示された自転車にはゴムタイヤが取り付けられていたのだ。
 それを指摘すると、
「はい、鉄製の車輪を持つ自転車は旧型で、新型はゴム製なのです。でも、ゴムタイヤの替えが無くなったため、新型は走れなくなってしまいました」
 との説明が返ってきた。
 それを聞いて、仁は気になっていたことを聞くチャンスだと判断した。
「一つ質問があるんだけど」
「はい、何でしょう?」
「自転車や人力車はそもそもどこで作られたんだろう?」
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 お知らせ:8月5日、日中、所用で不在となるため、レスが遅れると思います。御了承ください。

 20151805 修正
(誤)馬車、自転車、人力車、籠、輿こし
(正)馬車、自転車、人力車、駕籠、輿こし
+注意+
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